ヒビノコト

「アメノイエの住人」雨野紡が日々の暮らしを綴る日記です。
家の中での過ごし方や産地での出会いをこちらでご紹介します。

ヒビノコト

新しく迎えたものと、秋のはじまり
イマ ナカマイリ

新しく迎えたものと、秋のはじまり

秋の訪れと、あらたに迎えた水屋箪笥 今年の夏は、ずいぶん短かったように感じます。 朝晩の風に秋の気配を感じるようになると、衣替えをするように、家の中も少しだけ気分転換をしたくなります。家具の配置を変えてみたり、小物を入れ替えてみたり。 今年の秋は、そんなふうに家を整えることが、いつも以上に楽しみでした。 実は春頃、それまで愛用していた水屋箪笥を次の方へお譲りすることになりました。そこで、いつもお世話になっている「Wormhole Furniture」の牛丸さんに新しい水屋箪笥を探していただくことに。 そして先日、待っていた水屋箪笥がわが家に届きました。 以前のものより背が高く、収納力も増えたので、お気に入りのうつわたちもゆったりと収められます。「水屋」というのは、もともと台所や茶の湯の準備をする場所のこと。そこでうつわや道具を収めるために使われてきた家具が、水屋箪笥と呼ばれてきたそうです。   今回迎えた水屋箪笥は、もとの木肌を深い黒に塗り直していただきました。背が高くなったこともあり、部屋に置いたときの凛とした存在感は以前とはまた違った趣があります。 なかでも一番惹かれているのが、扉にはめ込まれた古いガラスです。新しいガラスに替えることもできたそうですが、もとからそこにあったものを、そのまま残していただきました。 近づいて見ると、表面には縦に細かな筋が入っています。これはひびや傷ではなく、古いガラスならではのもの。今のガラスのように均一ではないからこそ、光の入り方や見る角度によって、少しずつ違った表情を見せてくれます。 そんなガラス越しに眺めるうつわも、いつもとは少し違って見えるのがおもしろいところ。今のガラスではなかなか味わえない、この古いガラスの表情がとても気に入っています。   はじめてのクリップランプ、その使い心地 もうひとつ、わが家の暮らしに新たに加わったのがクリップランプです。 いま使っているデスクは少し小ぶりなため、普通のデスクランプを置くとどうしてもデスクの上が手狭に感じてしまうのが悩みでした。そんなとき、牛丸さんから提案していただいたのがこのランプです。 実はこれまでクリップ式の照明にはあまり馴染みがなく、お話を伺ったときも、正直なところピンときていませんでした。けれど、実際に迎えてみると、これが驚くほど使い勝手がいいのです。 天板の縁に直接挟んで固定できるため、ベースを置くスペースがいらず、小さなデスクの上でもすっきりと収まります。 デンマークの照明メーカー「RIJO」のもので、1950年代頃につくられたヴィンテージ。細くすっと伸びた支柱が印象的で、全体の佇まいがとても軽やかです。関節部分のアルミニウムパーツがさりげないアクセントになっており、細い線で構成された姿には無駄のない美しさがあります。 古い照明というと、重厚で存在感のあるものを思い浮かべますが、こちらは主張しすぎず、デスクまわりにすっと馴染んでくれます。見た目の美しさだけでなく、限られたスペースを上手に使えるところも、実際に使ってみて気づいた魅力でした。   それぞれ違う場所で、誰かの暮らしや仕事を支えてきた家具と灯り。長い時間を重ねたあと、巡り巡って今はわが家にあります。小さな傷や色褪せも、それらが過ごしてきた時間の一部。そんな跡も含めて、これから一緒に時間を重ねていけたらと思っています。 日が落ちるのが、ずいぶんと早くなりました。夕暮れ時にランプを灯すと、その光の向こうに水屋箪笥が浮かび上がります。 灯りの中で見る水屋箪笥は、昼間とはまた少し違って見えるもの。古いガラス越しに並ぶお気に入りのうつわを眺めていると、日々の風景が少しだけ深みを増したように感じます。 これから季節が変われば、並べるうつわも少しずつ変わっていくはず。そのときどきのうつわを選びながら、季節の移ろいも楽しんでいきたいです。  

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ふたつの手仕事が生んだ、若狭塗の一椀
チャノマ ツナガリ ナカマイリ

ふたつの手仕事が生んだ、若狭塗の一椀

一年ぶりの再会を漆のお椀でおもてなし 先日、わが家に嬉しいお客さまがいらっしゃいました。福井県・鯖江から足を運んでくださったのは、土直漆器の土田さん。お会いするのは、およそ一年ぶりです。作り手の方と直接お話しできる時間は、私にとって楽しみのひとつ。久しぶりにお会いした土田さんは相変わらず穏やかで、顔を合わせた瞬間から自然と会話が弾みました。 せっかく遠くから来てくださったので、ささやかなおもてなしを。以前、土直漆器さんに作っていただいた「雑煮椀」に、抹茶ゼリーや白玉、あんこを盛り付けてお出ししました。普段はお雑煮や汁ものを盛ることの多いお椀ですが、この日は少し趣を変えて、甘いものを。 漆器って、もっと自由でいい 漆のお椀に甘味を盛っても大丈夫かな、と出す直前まで少し気になっていたのですが、テーブルに並べると、土田さんはとても喜んでくださって。 「福井には、漆器にパフェを盛って出しているカフェもあるんですよ。だから、こういう使い方も全然OKです!」 そう言って笑顔で召し上がる姿に、私もすっかり安心しました。 漆器というと、どうしても「特別な日に使うもの」と少し構えてしまうところがあります。でも、こんなふうに甘いものを盛ってみたり、普段の食卓に取り入れてみたり。作り手の方から「もっと自由に使っていい」と聞くと、漆器との距離が少し近くなったような気がします。 そんな話をしながら、和やかにお茶の時間を過ごしていると、いつの間にか話題は「漆」のことへ。「最近、自分で金継ぎに挑戦してみたんですよ」と、先日のコラムで紹介した「辻田の金継ぎ」の話をしたときのことでした。 「あ、辻田さん!知り合いですよ」 思いがけないひと言に、びっくり。聞けば、辻田さんと土田さんは、同じ福井で漆に携わる作り手同士。以前からつながりがあったそうです。心惹かれたものの背景に、こんなふうに作り手同士のつながりがあると知ると、なんだか嬉しくなります。ひとつのうつわをきっかけに、また新しいご縁を知ることができたような気がしました。   はじめて出会った若狭塗 そんな話に花を咲かせていると、土田さんが大事そうに包みを開いて、ひとつのお椀を見せてくれました。 それが、若狭塗の「合鹿椀(ごうろくわん)」です。 包みを開いた瞬間、まず目に入ったのは、深い漆の艶と、外側に浮かぶ細かな模様。見る角度によって光の表情が変わり、ひと目見た瞬間に心を奪われました。 若狭塗は、卵の殻や青貝、松葉などを使って模様をつくり、その上から漆を幾重にも塗り重ね、最後に表面を研いで模様を浮かび上がらせる技法。なかでも、最後の「研ぎ出し」が若狭塗の大切な工程なのだそうです。 どこを、どのくらい研ぐのか。塗り重ねられた漆の下にある模様を見極めながら、少しずつ表情を引き出していく。その工程には、職人の経験と技術が詰まっています。 この見事な若狭塗を手がけたのは、福井県小浜市で100年以上続く「加福漆器店」の4代目、加福宗徳さん。小浜市に3人しかいない若狭塗伝統工芸士のお一人です。 ふたつの工房がつないだ一椀  さらに心を惹きつけられたのは、このお椀がふたつの工房の手仕事のリレーから生まれているということでした。 木地づくりから内側と底の漆塗りまでを手がける土直漆器さんと、外側の若狭塗を手がける加福漆器店さん。 内側には、欅(けやき)の木地に漆を塗り重ねる「木地呂塗(きじろぬり)」が施され、漆の艶の奥から美しい木目が浮かび上がります。外側の青貝や松葉が散りばめられた華やかな若狭塗とはまた違う、木そのものの温もりを感じる趣です。 それぞれの工房で受け継がれてきた技術が、ひとつのお椀のなかで見事に重なり合う。内と外で異なる表情を持つからこそ、手に取るたびにじっくりと眺めたくなる。なんとも贅沢な手仕事を見せていただいた気持ちになりました。   最後のひとつをわが家へ このお椀が完成するまでには、なんと2年もの歳月がかかったそうです。そして、つくられたのはわずか10個。 そんな貴重なお椀ですが、今回、土田さんの手元に残っていた最後のひとつを、特別にお譲りいただけることになりました。 土田さんとの久しぶりの再会から、思いがけず若狭塗のお椀に出会い、最後のひとつをわが家に迎えることになるとは。いくつものご縁が重なって手元に迎えることができたことを嬉しく思います。 これほど美しいお椀を、すぐに料理に使うのは少しもったいない気もして。しばらくは、光の加減で変わる青貝のきらめきや、漆の艶、内側に広がる欅の木目を、じっくり眺めていたい。...

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割れたうつわに、新しい景色を
チャノマ ナカマイリ

割れたうつわに、新しい景色を

うつわと刻む、あらたな時間 とても大切にしているうつわでも、ふとした拍子に割れてしまうことがあります。 私も以前、お気に入りのうつわをうっかり落として割ってしまったのですが、それでもどうしても手放す気になれず、「いつか金継ぎして直そう」とそのまま戸棚にしまい込んで、ずいぶんと時間が経っていました。 金継ぎにはずっと興味があったものの、漆の扱い方や道具を揃えるハードルが高く、なかなか一歩を踏み出せずにいたのです。そんなときに出会ったのが、福井県にある辻田漆店の金継ぎセット「辻田の金継ぎ」でした。 聞けば、辻田さんご自身がかつて市販のキットでうまくできなかった経験をもとに、監修を務める金継ぎ職人の八木茂樹さんとともに「動画がそのまま仕様書になるように」と作られたものだそうです。自分で用意するのは小麦粉やサラダ油など家にあるものでできるという手軽さにも惹かれ、「これなら私にもできるかもしれない」と、眠っていたうつわを直してみることにしました。   職人の気配りが詰まった道具たち 箱を開けると、金継ぎに必要な道具がすっきりと収まっていました。 辻田さんにお話を伺うなかで、このセットには、初めて金継ぎをする人でも作業しやすいよう、いくつもの工夫があると教えていただきました。 たとえば、作業台には手入れのしやすいガラス板を使っていること。そして、初心者が失敗しやすい「厚塗り」を防ぐために、塗った厚みを確認しやすい白漆を使っていることも、そのひとつです。 早速、道具を机に並べ、まずは作業の流れをイメージするために動画を開いてみます。 冒頭で金継ぎの魅力をやさしく語る八木さんの言葉に触れ、一気にその温かな世界観へ引き込まれていきました。   DAY 1|まずは、割れたうつわをつなぐ 今回金継ぎするのは、割れてしまったうつわたち。そして、縁が欠けてしまったマグカップやボウルも試してみることにしました。 まずは、付属のダイヤモンドペーパーで面取りしていきます。断面を合わせたときに、1ミリほどの溝ができるように少しずつ削っていきました。この溝にあとから漆が入り込むことで、しっかりとうつわをつないでくれるのだそうです。   次は、割れたうつわをつなぐための「麦漆」づくりです。ガラス板の上で小麦粉と水を練り、少しずつ生漆を加えながらヘラでさらに練り合わせていきます。動画と見比べながら、「これくらいの粘り気で合っているかな」と慎重に硬さを確認し、持ち上げても切れない状態に仕上げていきました。   できあがった麦漆を断面に塗り、いよいよ破片を合わせます。これが思っていた以上に難しく、少しずつ位置をずらしながら、段差や凹凸ができないように調整していきます。苦戦しながらも、久々にあのうつわたちが元の形を取り戻した瞬間は、なんとも言えない嬉しい気持ちになりました。   ずれないようテープで固定したら、「漆風呂」と呼ばれる湿度を保った箱へ。ここで1週間かけて、麦漆をゆっくり乾かします。   DAY 2|麦漆を削り、錆漆で埋める 1週間後。麦漆はしっかり固まり、割れていた部分も無事につながっていました。 接着時にはみ出した麦漆はカッターで削り落としていきます。 うつわの表面を傷つけないよう、刃を寝かせて慎重に。  ...

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料理を好きにしてくれた7つの道具
ダイドコロ

料理を好きにしてくれた7つの道具

好きな道具と料理の時間 「料理が好きになったのは、いつからだろう」 ふとそんなことを考えてみると、最初に思い浮かぶのは、料理そのものよりも台所に並んでいる道具たちでした。 もともとうつわが好きで、気になる作り手がいれば産地を訪ねたり、旅先で出会ったものを少しずつ暮らしに迎えたり。そうして各地を訪ね、ものづくりに触れるうちに、うつわだけでなく永く使いたいと思える道具にも少しずつ惹かれるようになりました。 気に入った道具をひとつ、またひとつと使うようになると、料理をする時間も少しずつ変わっていきました。 食材を切る。焼く。蒸す。煮る。 それまで料理を完成させるための工程だったことが、いつの間にか、そのひとつひとつを楽しむ時間になっていたのです。 振り返ってみると、料理が好きだったから道具を選んだというより、好きな道具に出会ったことで、料理をすることも好きになっていったのかもしれません。 今回は、そんなわが家の台所で日々使っている、お気に入りの道具たちをご紹介します。   癶 -HATSU- 三徳 ウォルナット 八角 包丁は、sharpening fourを愛用しています。 この三徳包丁は、とにかく切れ味がよいのです。熟したトマトも形を崩さずきれいにスライスできて、食材に刃がすっと入っていく感覚が気持ちいい。両刃で扱いやすく、ウォルナットの柄も手に馴染むので、日々の料理で使いやすい包丁です。 この包丁を使うようになってからは、すっかりこの切れ味の虜で、いろいろなものを刻みたくなるほどです。野菜を切ったときのシャキッとした食感やみずみずしさも心地よく、切る道具ひとつでこんなにも違うのかと感じています。   woodpecker いちょうの木のまな板 そんな切れ味抜群の包丁と一緒に使っているのが、woodpeckerのいちょうのまな板です。 いちょうの木は柔らかく弾力があるので、包丁の刃を傷めにくいのが特徴。刃がまな板に当たる「トントン」という音もやわらかく、包丁を使っているときの感触がとても気持ちいいのです。 水はけがよく、乾きが早いのも魅力のひとつ。使ったあとにさっと洗って乾かせるので、毎日の料理でも気兼ねなく使えます。 使い勝手はもちろん、形の可愛らしさもお気に入りのひとつ。家に遊びに来てくれる友人から「このまな板、形が可愛いね」と褒めてもらうこともあります。道具としての使いやすさだけでなく、キッチンに置いておきたくなるような佇まいも、このまな板の好きなところです。   野鍛冶やまご ちょっと深めのフライパン フライパンは永く使えるものをと、いろいろ探していました。最初から鉄のものを選んでいたわけではなく、テフロンのフライパンなども使ってみて、辿り着いたのが野鍛冶やまごの「ちょっと深めのフライパン」です。...

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無水鍋で焼く、スパイス香るキャロットケーキ
ダイドコロ

無水鍋で焼く、スパイス香るキャロットケーキ

いつもの鍋ではじめてのケーキ 先日、ふとキャロットケーキが食べたくなりました。 スパイスの効いたケーキに、クリームチーズのフロスティングをたっぷりのせて。紅茶と一緒にゆっくり味わう時間を思い浮かべているうちに、だんだんと自分で作ってみたくなりました。 ただ、わが家にはオーブンがありません。家にある道具でどうにか作れないものかと考えて、思い出したのが、日々の台所ですっかり定番となっているHAL無水鍋です。わが家で愛用しているのは、4合までのお米が炊ける20cmのサイズ。ご飯を炊くのはもちろん、煮込み料理や炒め物、蒸し料理など、毎日のように使っています。 「天火」としても使えると聞いたことはありましたが、これまで試したことはなく、今回初めてケーキを焼いてみることにしました。   香りに包まれる、生地づくりの時間 さっそく、生地作りから始めます。 ボウルに卵ときび砂糖を入れてよく混ぜ、米油を少しずつ加えていきます。そこへ薄力粉やアーモンドプードル、スパイス類を加えて、さらに混ぜ合わせます。 参考にしたレシピはスパイス控えめでしたが、今回は自分好みにたっぷりと。ナツメグの代わりにカルダモンを加え、シナモンと合わせて、香りをしっかり効かせました。   粉っぽさが少し残る程度に混ぜたら、フードプロセッサーで細かく刻んだにんじんをたっぷりと入れます。全体をさっくりと混ぜ合わせれば、あっという間に生地のできあがりです。   鍋の大きさに合わせて切ったクッキングシートを敷き、生地を流し込んで表面を平らに整えます。 あとは無水鍋におまかせです。 「天火」でじっくりと 生地を流し込んだら蓋をして、ごく弱火にかけます。加熱時間は20分にしてみることに。 20分ほど経ち、そっと蓋を開けてみると、そこにはふっくらと膨らんだキャロットケーキが。オーブンで焼いたケーキとは少し違い、表面はどこか蒸しパンのようなしっとりとした仕上がりです。心配していた厚みは、5cmほどまでしっかりと膨らんでいました。 「本当に鍋でケーキが焼けた!」 蓋を開けた瞬間に見えたその姿に、思わずうれしくなります。 ただ、鍋から取り出してみると、底の方には少し焦げ目が。25分加熱するレシピを参考に20分にしてみたものの、それでも少し長かったようです。次に作るときは18分ほどにして、あとは余熱で火を通してもよさそうです。   レモン香るフロスティングでおめかし 焼き上がったケーキは、鍋から取り出して網の上でしっかりと冷まします。 そのあいだに、上にのせるクリームチーズフロスティングを作ることにしました。クリームチーズに柔らかくした無塩バターと粉糖を合わせ、仕上げにフレッシュなレモン汁を少し。クリームチーズのまろやかさに、レモンの爽やかな酸味が加わることで、スパイスの香りがより引き立ちます。 ケーキが完全に冷めたら、フロスティングをたっぷりと塗り広げて、仕上げにローストしたくるみをのせれば、キャロットケーキの完成です。   いつもの道具で、いつもと少し違う時間を さっそく切り分けて、温かい紅茶と一緒にいただきました。 しっとりとした生地にスパイスの香りが広がり、クリームチーズのまろやかさとレモンの爽やかさがよく合います。くるみの香ばしさも加わって、思っていた以上に好みの味に仕上がりました。...

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料理に合わせて表情を変える、うつわの楽しみ方
チャノマ

料理に合わせて表情を変える、うつわの楽しみ方

夏の余韻といつもの朝ごはん 夏も、そろそろ後半。 みなさんは、どんな日々を過ごされていますか。 私は先週夏休みをいただき、街を離れて自然のなかで数日間を過ごしました。 時間に追われることなく、ただ目の前にある景色を眺めたり風の気持ちよさにふと立ち止まったり。 緑のなかで深呼吸するうちに、心もじんわりと穏やかに満たされていくのを感じました。 そうして存分に夏を楽しんで、いつもの暮らしへ。 不思議なことに、日常に戻ってからも、なんだか少しおおらかな気分が続いています。 そんなある日のこと。 ゆったりと朝ごはんの準備をしていました。 こんがり焼いたホットサンドに、サラダ。 グラノーラとフルーツを添えたヨーグルトもたっぷりと。 あれこれと支度をしながら、自然と手に取っていたのが「clay」です。   決めつけない、自由な使い方 clayを迎えたのは、去年の冬のこと。 最初の頃は、Sサイズは小鉢に、Mサイズは副菜に…と、なんとなく自分のなかでそれぞれの役割を決めていました。そんな私のなかの小さな固定観念を解きほぐしてくれたのが、昨年、料理家の冷水希三子さんが見せてくださった、たくさんの素敵なアレンジです。 「このうつわにはこれ」といった決まりのない、自由で柔軟な使い方の数々。あの日から、私のなかでもうつわの使い方が少しずつ広がっていきました。   これまでは小鉢や取り皿として使うことが多かったSサイズに、朝食のヨーグルトを盛ったり、ミネストローネをたっぷり入れてみたり。   Mサイズには副菜だけでなく、ふと思い立ってぶっかけとろろ月見そばを盛ってみました。 見た目以上にしっかりと受け止めてくれるclayは、Mサイズでも十分な容量があり、これがなかなかしっくりくるのです。 その日の料理や気分に合わせて、使い方を決めていく。そんな楽しみ方をするようになり、clayの出番がより増えた気がしています。   Lサイズで楽しむ余白 当初は使い方に悩んでいたLサイズも、今ではかなりの頻度で登場しています。 以前は、二人暮らしの普段の食卓には少し大きいかな、と、なんとなく手に取る機会が少なくなっていましたが、冷水さんに教わった自由なタイリングが、ここでもヒントになりました。 うつわにたっぷりと盛ったり、あえて余白を残したり。料理とうつわに合わせた盛り方のバランスが大切なのだと学び、その頃から少しずつ、Lサイズが身近に感じられるようになったのです。 先日、よく冷えた白ワインを開けた日のこと。食卓には、フムスや焼きとうもろこし、ズッキーニのソテー。それに、ポテトとバゲットを少しずつ。...

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自家製味噌と夏の献立
キセツ ダイドコロ チャノマ

自家製味噌と夏の献立

半年越しの楽しみ 今年の一月、一年で最も寒さが厳しい時期に仕込んだ味噌。手間ひまかけて大豆を潰したあの日から半年が経ちました。キッチンの奥にしまった容器を見るたび、「どんな味になっているだろう」と気になりながらも、蓋を開けるのはもう少し先に、と待ち続けた半年間。 いよいよ待ちに待った開封の日を迎えます。   そっと蓋を開けると、まず目に入ったのは表面を覆うように広がったカビでした。味噌づくりでは珍しくないことだと聞いていたものの、想像していたよりも多く、思わず手が止まります。 もしかしたら、失敗してしまったのかもしれない。 そう思い、慌てて味噌づくりに詳しい友人へ連絡を入れました。 「そのくらいなら大丈夫。まずは表面を削いでみて。」 返ってきた言葉に安心しながら、スプーンでカビの層をそっと取り除いていきます。すると、下から現れたのはつやのある飴色の味噌。ふわりと立ち上るのは、大豆と麹がゆっくり馴染んだやさしい発酵の香りでした。 半年という時間を重ねて、味噌はしっかりと育ってくれていたようです。   粗潰しの食感 無事に仕上がっていることがわかったところで、まずはそのまま味わってみることにしました。 夏の暑い日に恋しくなるのは、やっぱりきゅうりとの組み合わせ。できあがった味噌を少し乗せて、ひと口いただきます。 ほどよい塩味の奥に広がる、麹のやさしい甘み。そして、口に含むと感じる、大豆のほどよい粒感。 前回はフードプロセッサーを使いなめらかに仕上げましたが、今回はすり鉢を使いあえて粗めに潰してみました。少し粒を残したことで、大豆の風味がより感じられ、口の中でほろりとほどけるような食感に。 同じ材料でも、使う道具や手の加え方によって、できあがりの表情は変わる。そんな違いを楽しめるのも、手づくりならではのおもしろさなのかもしれません。   味噌が主役になる、夏の献立 せっかくなら、できたての味噌をいろいろな料理で楽しみたい。 そう思い、その日は味噌を使った料理をいくつか並べることにしました。 まず作ったのは、焼きおにぎり。 自家製味噌に、みりん、酒、ごま油、おろしにんにくを少し加えて、にんにく味噌を作り、おにぎりに塗って焼いていくと、焼けた味噌の香りににんにくの風味が重なり、台所いっぱいに香ばしい香りが広がりました。 シンプルな料理だからこそ、味噌そのもののおいしさをまっすぐ味わえる一品です。   そのほかにも、じっくり焼いた茄子や冷奴には肉味噌をたっぷりと。きゅうりやエシャロットには、味噌をそのまま添えて。 特別な料理を用意したわけではないけれど、自家製味噌がひとつ加わるだけで、いつもの食卓が少し豊かになる。時間をかけて作った味噌だからこそ、そのおいしさをより深く感じられた気がします。   味噌から広がる、次の一皿 手間をかけて仕込んだ味噌があることで、次はどんな料理に合わせようかと、食卓を考える楽しみも増えました。...

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その季節、その人だけの香り
キセツ

その季節、その人だけの香り

季節とともに変わる、心惹かれる香り 先日、アメノイエで香りのブランド「lunef(リュネ)」の安藤明日生さんをお迎えし、自分だけの香りづくりのワークショップを開催しました。 神楽坂の坂道を歩くだけでも汗ばむような夏の日。暑いなかお越しくださったみなさま、本当にありがとうございました。   テーブルいっぱいに並んだ、たくさんの精油の瓶。 ふたを開けるたび、柑橘のみずみずしい香りやミントやセージの清々しい香りがやさしく広がっていきます。この日多くの方が選ばれていたのは、レモンやベルガモット、オレンジなどの柑橘やすっと風が通り抜けるようなミントやセージ。夏の暑さのなかでは、自然とそんな軽やかな香りに手が伸びるのかもしれません。少しずつ異なる香りが重なり合うたび、アメノイエの空間にも夏らしい涼やかな空気が満ちていきました。 前回このワークショップを開催したのは昨年の冬。あの時は、木々や樹脂を思わせるあたたかく包み込まれるような香りを選ばれる方が多かったことを思い出します。 冬には冬の、夏には夏の。季節が巡るたび自然と心惹かれる香りも少しずつ移り変わっていく。そんなことをこの日あらためて感じました。   名前を知らずに選ぶということ このワークショップのおもしろさのひとつは、最初に精油の名前を伏せたまま香りを選ぶことです。効能やイメージにとらわれず、まずは「心地いい」と感じる香りを自分の感覚だけを頼りに選んでいきます。 たくさんの精油のなかから、それぞれが自然と手に取った一本。あとから名前や特徴を知ることで、今の自分が心惹かれた理由に気づかされます。 香りを選んだあとは、明日生さんが一つひとつの精油についてその特徴や背景を丁寧に教えてくださいます。たとえば、ゼラニウムは気持ちを整え、集中したい時に寄り添ってくれる香り。安眠を意識するならオレンジを少し加えてみるのもおすすめなのだそうです。 こうして精油の知識が深まっていくことで、最初の直感的な印象に新しい発見が重なっていきます。明日生さんのお話を聞いてからは、「これも合わせてみたいです。」という声があちらこちらから聞こえてきました。 先入観を持たずに選ぶからこそ、自分でも気づかなかった心地よさに出会える。そんな驚きもこのワークショップならではの楽しさなのだと思います。     迷いながら、自分だけの香りへ 精油は一滴加えるだけで印象が驚くほど変わります。爽やかだった香りに少し深みが生まれたり、強く感じていた香りがやわらかな表情になったり。 「もう少し軽やかにしたい。」「あと一滴加えたら、どう変わるだろう。」 瓶を手に取り、何度も香りを確かめながら少しずつ組み合わせを重ねていくみなさん。その姿を見ていると、香りをつくっているというより自分の感覚と静かに向き合っているようにも映りました。 なかには十種類ほどの精油を組み合わせる方も。夢中になって試しているうちに、「最初に思い描いていた香りから、ずいぶん変わりました。」と笑い合う場面もありました。 けれど、その迷いもまた香りづくりの楽しさなのでしょう。 明日生さんは、一人ひとりの「こんな香りにしたい」という想いに耳を傾けながら、 「こちらを少し加えてみましょうか。」「この香りとも相性がいいですよ。」 と、そっと寄り添ってくださいます。 そうして少しずつ形になっていく香り。迷いながら重ねた一滴一滴がその人らしい香りをつくり上げていました。   世界にひとつだけの香り 最後に自分だけの香りに名前をつける時間があります。...

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水の流れを思わせる曲線美
ナカマイリ

水の流れを思わせる曲線美

はじまりは、ひとつのガラス  まるで水が流れる、その瞬間を閉じ込めたかのよう。 やわらかな曲線や溶け合う色彩は、今にも流れ出しそうな躍動感を宿しながら、不思議と凛とした静けさも感じさせます。 光を受けるたびに表情を変え、ふと視線を向けるたび、その美しさに思わず手を止め、見入ってしまう存在です。 出会いは約三年前。ふらりと立ち寄ったインテリアショップで見つけた、無骨でいてどこかやわらかなガラスの塊。その佇まいに心を奪われ、直感のままわが家へ迎えました。 本当の美しさに気づいたのは、自宅の窓辺で強い西日をたっぷりと受けたとき。光をまとったガラスは息をのむほど美しく、その瞬間からLANさんのガラスの虜になったことを今でもはっきりと覚えています。   その後、ご縁があってLANさんご本人とお会いする機会に恵まれました。お話ししてみると、お互い自然が大好きだということが分かり、すっかり意気投合。今では一緒に山へ出かける間柄になりました。 先日も、新緑が美しい八ヶ岳へ。ゆっくりと山道を歩きながら、ガラスづくりのことや作品に込める思い、これまで歩んできた道のりなど、いろいろなお話を聞かせていただきました。   歩幅を合わせながら聞いた、はじまりのこと   LANさんがガラスの制作を始められてから、今年で約7年。 最初は前職のかたわら、バーナーを使って小さなアクセサリーを作るところからスタートし、その後吹きガラス(ブローワーク)を教わったことで、お香立てや一輪挿しといった、暮らしの中で使われる道具へと表現が広がっていったといいます。   「前職で培った色づくりや色の組み合わせの感覚は、現在の作品づくりにも活かされていると感じています」 そう語るLANさんの作品は、スモークグレーやダークブラウンなどが静かに混ざり合う、とてもシックで奥深い色合いが魅力です。 色彩がゆったりと溶け合い、たゆたうようなグラデーション。透き通るガラスの中に閉じ込められた小さな気泡すらも、光を受けて小さな粒のように輝いていて、眺めるたびに新しい表情に気づかされます。   偶然の揺らぎをそのまま愛おしむ  熱く溶けたガラスは、温度や時間、ほんの少しの手の力加減によって仕上がりが大きく変わる、とても繊細な素材です。 制作を始めた頃は、自分が思い描いた形を正確に表現することを意識していたというLANさん。けれど、日々ガラスと向き合うなかで、その姿勢は少しずつ変わっていったのだそうです。 「思い通りにならないことも多いですが、その難しさがあるからこそ新しい発見や学びがあり、制作を続ける面白さにつながっています。」 今では、ガラスが自然につくり出す揺らぎや、その時々に生まれる偶然の表情も、一つの個性として大切にしながら制作されているそうです。だからこそ、LANさんの作品には、どこか自然の流れをそのまま映したような、飾りすぎない美しさが宿っているのかもしれません。   アートのような佇まいと、日常の機能  「ご覧になる方それぞれが、自由に何かを感じたり、風景や記憶を重ね合わせたりしながら楽しんでいただけたら。」 作品をつくるうえで大切にされているのは、アートとしての表現と、暮らしの中で使う道具としての心地よさ。そのどちらかではなく、両方が自然に寄り添うことなのだそうです。 山道をゆっくり歩きながら、ものづくりのお話を聞き、その考え方に触れるほど、私はますますLANさんのガラスに惹かれていきました。 また新しい作品を迎えたいとお伝えすると、「もちろんです。」と笑顔で応えてくださったLANさん。それから数か月後、わが家へ届いたのは、私をイメージした色合いで仕上げてくださったお香立てと花器でした。初めてLANさんの作品に出会った三年前、心を奪われた静かな美しさはそのままに、今回の作品は、より有機的な曲線を描き、色彩もさらに豊かに重なり合っています。  ...

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窯を開けるまで、わからない景色。
ナカマイリ

窯を開けるまで、わからない景色。

あらたなうつわとの出会い 土のうつわなのに、まるで石のよう。 初めて小原創太さんのうつわを目にしたとき、そんな感覚を覚えました。 きっかけは、知人が見せてくれた一枚のプレート。一枚一枚じっくり見比べると、青みの現れ方や炭の跡、貫入の表情は少しずつ異なり、それぞれが違う空気をまとっています。 ぜひわが家にも迎え入れたいと思ったのと同時に、「どのようにして、こんな奥行きのある表情が生まれるのだろう」という思いが募りました。作品そのものに惹かれたのはもちろんですが、それ以上に、その背景にあるものづくりを知りたくなったのです。 そんな思いから小原さんに連絡をし、先日、埼玉県所沢市にある工房を訪ねさせていただくことになりました。   静かな工房で 少し汗ばむ陽気の中、車を走らせて小原さんの工房へ向かいました。住宅街の一角に建つ、ご自宅兼工房。扉を開けると、まず目に飛び込んできたのは、棚に整然と並んだうつわたちです。 知人に見せてもらったあのプレートや、印象的な丸いカップ、凛とした佇まいの花器など。あの日、一目惚れした表情の作品たちがずらりと並んでいて、思わず心が躍ります。   温かく迎えてくださった小原さんは、とても穏やかで、言葉のひとつひとつから誠実な人柄が伝わってくる方でした。 棚のうつわを眺めていると、小原さんは愛おしそうに手に取りながら、それぞれの表情が生まれる背景を聞かせてくださいました。 土の色、釉薬の掛かり方、そして炭化の工程。さまざまな要素が重なり合うことで、奥行きのある表情が生まれるのだそうです。 同じ材料と工程でつくられたうつわであっても、並べて見比べると、ひとつとして同じ表情のものはありません。 工房へ来る前に感じていた「どうしてこんなに奥行きのある表情が生まれるのだろう」という疑問が、小原さんの言葉によって、少しずつほどけていくようでした。   土と向き合う時間 この日は、「たたら」という技法による制作工程の一部を見せていただけることになりました。 ろくろが回転する土から形をつくるのに対し、たたらは板状に伸ばした土を型に沿わせて成形していく技法。平らなうつわは一見するとつくりやすそうにも思えますが、実は焼成すると歪みが出やすく、思うような平らさに仕上げるのがとても難しいのだそうです。 まずは、「菊練り」と呼ばれる土を練る工程から。土の中の空気を抜きながら、硬さを均一に整えていきます。土の塊に体重をのせ、リズミカルに形を変えていく無駄のない動きに、思わず見入ってしまいます。   菊練りを終えて、ロケットのような形に整えられた土の塊。それを手で少しずつ押し潰すようにして、きれいな平たい円柱状へと伸ばしていきます。小原さんはその円柱状の土の左右に、細長い木製のプレートを何枚か重ねて置きました。そして、ピンと張った細い針金を並行に滑らせるように引き、均一な厚みに一枚ずつきれいにスライスしていきます。 本来なら、このスライスした土を仕立てるには、だれないように少し乾燥させる時間が必要なのだそうですが、この日は、あらかじめちょうどいい硬さになるまで乾燥させておいたものを別に用意してくださっていました。   ほどよく乾燥した土を、丸みを帯びた型の上にそっとのせます。回転する台の上で、手のひらを使って優しく、型に沿わせるように成形していく。   その手仕事によって、平らだった土の板が、みるみるうちにうつわの形へと整っていきます。流れるようにスムーズに見える工程ですが、焼き上がりまでには細やかな調整が欠かせません。歪みや割れを防ぐため、乾燥のタイミングを見極めながら、慎重に管理していくのだそうです。   特に大きな板皿は、三回目の「炭化焼成」のタイミングで割れてしまうことが多いといいます。...

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二年分の「好き」を、一枚のハンカチに
ナカマイリ

二年分の「好き」を、一枚のハンカチに

節目に残したかったもの 神楽坂に引っ越してきて、あっという間に二年が経ちました。季節が巡るたび、各地の作り手を訪ね、そこで出会った道具たちを暮らしに迎えてきました。そんなご縁を重ねながら、暮らしが少しずつ豊かになっていったように思います。  食卓を彩るうつわ。毎日のように手に取る木の道具。部屋の片隅に置いているかご。 どれも、その道具を迎えた日の景色や、交わした言葉まで思い出させてくれる大切な存在です。 二周年という節目に、その時間を何かひとつ形に残したいと思い、ハンカチをつくることにしました。描いたのは、この二年間の暮らしの中で出会い、特に心に残っている道具たち。何度も手に取り、ともに時間を重ねてきたものだからこそ、それぞれにかけがえのない思い出が宿っています。 そんな二年分の「好き」を、一枚の布にぎゅっと詰め込みました。   ケンタくんが描いてくれた世界 イラストをお願いしたのは、以前、贈り物のための包装紙を描いてくれたケンタくんです。包装紙が出来上がったとき、「またいつか一緒に何かをつくれたら」と思っていたので、今回こうしてお願いできたことをとても嬉しく思っています。 描いてもらったのは、私たちが特に愛着を持って使い続けてきた暮らしの道具たち。「あのうつわも入れたい」「この家具も描いてほしい」と、一つひとつ選びながら、一緒に形にしていきました。  完成したイラストを見たとき、毎日のように使ってきた道具たちが一枚の絵になって並んでいることが、なんだか感慨深く、思わず見入ってしまいました。 ケンタくんらしい軽やかなタッチのなかに、ガラスのやわらかな透明感や、かごの繊細な編み目、それぞれの道具が持つ表情まで丁寧に描かれていて、「道具らしさ」がちゃんと伝わってきます。 見慣れた道具なのに、絵になるとまた違った魅力があって、広げるたびに嬉しい気持ちになる一枚です。   毎日使うものだから せっかくつくるなら、毎日気持ちよく使えるものにしたい。そんな思いから、製作はハンカチ専門店・OLD-FASHIONEDさんにお願いしました。 ハンカチは毎日持ち歩き、何気なく手に取る、とても身近な道具です。だからこそ、生地の風合いや縫製にもきちんとこだわりたいと思いました。たくさんの生地を見せていただく中で、一目見た瞬間、「これだ」と感じたのが、ほんのりと透け感のある上品な生地でした。軽やかでやわらかな風合いは、ケンタくんのイラストともよく馴染み、この一枚にぴったりでした。 縁には、「メロー巻き」を施しています。細い糸で丁寧に仕上げられた縁取りが、イラストをやさしく引き立て、このハンカチらしい軽やかな表情を添えてくれています。 暮らしの中で育つ一枚 新品のぱりっとした風合いも素敵ですが、何度も洗ううちに少しずつやわらかくなり、自分だけの一枚へと育っていく。その変化は、お気に入りのうつわや木の道具が、暮らしの時間とともに手に馴染んでいく感覚と、どこか似ているように思います。 バッグから取り出して手を拭いたり、お弁当を包んだり。ときには、かごにふわりとかけて目隠し代わりに使ってみたり。 小さな布ですが、暮らしの中では思っている以上に出番の多い道具です。気づけば何枚も集めてしまうのも、ハンカチの魅力のひとつ。 旅先で迎えた一枚や、大切な人から贈られた一枚は、引き出しを開けるたび、その頃の空気まで一緒によみがえらせてくれます。 このハンカチもまた、そんなふうに暮らしの時間を重ねながら、その人だけの一枚へと育っていってくれたら嬉しいです。 これから増えていく「好き」 二周年はひとつの節目ですが、新しい始まりでもあります。 この先も、新しい作り手とのご縁があり、心惹かれる道具と巡り合いながら、暮らしも少しずつ形を変えていくのでしょう。 これまでいただいたご縁を大切にしながら、この場所でまた新しい「好き」を重ね、これからも日々を紡いでいけたらと思っています。

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お昼が待ち遠しくなる曲げわっぱ弁当
ダイドコロ ナカマイリ

お昼が待ち遠しくなる曲げわっぱ弁当

日課から、楽しみへ   寝ぼけ眼で台所に立ち、卵焼きを焼く。夕飯の残りを少しずつ詰めて、ご飯をよそう。そんな毎朝のお弁当づくりは、私にとって淡々とこなす日課のひとつでした。  けれど、この一週間は少し違います。 理由は、新しく台所に迎えた曲げわっぱのお弁当箱。 以前から「いつか使ってみたい」と思っていた、憧れの道具です。 いつもの見慣れたおかずも、杉の白木に詰めるだけで、急によそ行きな顔になる。 詰めていくたびに華やかなわっぱ弁当になっていくその様子が楽しくて、気づけば朝の眠気もどこかへいってしまいます。SNSや雑誌で見かけるたび、「どうしてこんなにおいしそうなんだろう」と気になっていた秘密は、どうやらこのお弁当箱にあるようです。 お昼休みにこの蓋を開けるのが待ち遠しくて、仕事へ向かう足取りまで少し軽くなったような気がしています。   最初は、「無塗装」のつもりで  普段から木の道具が好きで、木肌の風合いを感じられるものを選んでいます。使うほどに艶が増し、小さな傷さえもその家だけの景色になっていく。そんな経年変化に惹かれるので、曲げわっぱも、迷わず無塗装のものを選ぼうと思っていました。 今回お願いしたのは、秋田県大館市で曲げわっぱをつくり続けている、りょうび庵です。昔ながらの技法を大切に受け継ぎながらも、今の暮らしに寄り添うものづくりをされていて、その考え方に自然と惹かれました。毎日使う道具だからこそ、美しさだけでなく、使いやすさまできちんと考えられていること。その姿勢に共感し、「この方がつくる曲げわっぱを使ってみたい」と思ったのです。 そんな思いで、無塗装のものをお願いしたいとりょうび庵の石倉さんへお伝えしたところ、返ってきたのは少し意外なお返事でした。 「お弁当箱でしたら、私は塗装のものをおすすめしています。」 木の道具をつくる方なら、素材そのものの風合いを何より大切にされているのではないか。そんなイメージを勝手に抱いていたので、思わず理由を伺うと、気づけば30分ほど、お弁当箱についてのお話を聞いていました。 石倉さんがおっしゃっていたのは、無塗装の曲げわっぱは経年変化を楽しめる一方で、シミや黒ずみ、匂い移りが起こりやすく、扱いが難しいと感じて使わなくなってしまう方も少なくないということでした。 「せっかく選んでいただいたお弁当箱が、使われなくなってしまうのは本当にもったいないんです。」 その言葉が、とても印象に残っています。 もちろん無塗装を否定しているわけではなく、その魅力もよく分かっている。それでも、お弁当箱は毎日のように使う道具だからこそ、気兼ねなく洗えて、また翌朝も自然と手が伸びることを大切にしたい。 だから、塗装のものをおすすめしているのだと教えてくださいました。 そのお話を聞いているうちに、私の中で「無塗装のほうが良いもの」という思い込みが、少しずつほどけていくのを感じました。素材そのものを味わうことも素敵ですが、「長く使い続けてもらうこと」を一番に考えたものづくりもまた、とても誠実なのだと気づかせてもらったのです。   一週間のお弁当 石倉さんのお話を聞いて迎えた、曲げわっぱのお弁当箱。 さっそく一週間、毎日お昼ご飯を詰めてみました。   月曜日: パズルのように彩りを  週の始まりは、インゲンの肉巻きがメイン。 ぎゅっと詰まったインゲンの緑色や、茹で玉子やトウモロコシの黄色、ミニトマトの赤。杉のやさしい木肌が、それぞれの色を引き立ててくれて、いつものおかずもよりおいしそうに見え、ます。...

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