夏のごはん、うつわとともに
毎日のように気温は30度を超え、外に出るだけで汗ばむような暑さが続いています。
湿度も高く、体力を消耗しがちなこの季節。何を食べようか考えるのも、少しおっくうになる日もありますね。
そんなときに自然と手が伸びるのが、やっぱり麺料理。
火を使う時間はなるべく短く、のど越しがよくて、するりと食べやすいもの。
そうめん、冷やし中華、フォー、うどん……涼しさを求めて、つるりと心地よいごはんが食卓に並びます。
そしてもうひとつ、この時季に欠かせないのが「盛るうつわ」。
どんなうつわに盛るかで、料理の表情も、食卓の空気も大きく変わってくるものです。
今回はそんな“夏の麺ごはん”に寄り添ってくれる、渓山窯さんのうつわをあらためてご紹介したいと思います。
少し深さのある鉢、丼、取り皿。
それぞれのかたちが持つ魅力とともに、涼を感じる食卓をお届けいたします。
7寸中鉢
夏の定番といえば、やっぱり冷やし中華。
錦糸卵やきゅうり、ハムにトマトと、色とりどりの食材が楽しいこの一皿は、見た目にも華やかで食卓をパッと明るくしてくれます。
そんな彩り豊かな料理には、「7寸中鉢」を合わせてみました。
一見、どちらも彩りが強く、ぶつかり合いそうに思えるかもしれませんが、不思議なほどしっくりと調和します。
白磁の広々とした余白と、控えめで洗練された絵付けのバランスが絶妙で、まるで料理の鮮やかさを引き立てるキャンバスのように機能してくれました。
このうつわが生み出す、自由な「見立て空間」。
そこでは料理が主役となり、うつわは舞台装置のように美しく演出してくれます。
4.7寸段入丼
和食にはもちろん、エスニック料理にもよく合います。
こちらの「4.7寸段入丼」は、透き通るような白い磁肌と、深く落ち着いた青色が重なり合い、どこか清らかな雰囲気を纏い、フォーをより爽やかな一杯に仕上げてくれます。
呉須の青は、色が一様ではなく、筆の濃淡によって微妙に変化するため、絵柄に表情と奥行きをもたらします。
さらに、呉須は透明釉をかけて高温で焼成されることで、ガラスのような光沢感をまとい、色が釉薬の下からほのかに透けて見えるようになるそうです。
この「透け感」によって、にじみやぼかしのようなまろやかさが生まれ、うつわ全体にやわらかな印象を添えてくれますね。
なます皿
せっかくなので、渓山窯のうつわを使っていろいろ作ってみることにしました。
有田焼といえば、「なます皿」も汎用性が高く、とても便利なかたちのうつわです。
浅めの中鉢で、煮物や和え物、小ぶりなメイン皿や取り皿としても使えます。
やや反った縁の形状が料理をしっかり受け止めるため、盛るものを選びません。
今回は、きゅうりと冷しゃぶのしょうがソースをなます皿に盛り、そば猪口で茶碗蒸しを。
普段作るおつまみは単色になりがちですが、盛り付けにあまりこだわらなくても見栄えが良くなるので、既に重宝しています。
ぱぱっと作った料理でも、まるでお店で出てくるような上品さがあり、料理との相性も抜群。
自然とお酒もついすすんでしまうような雰囲気になりますね。
うつわが整えてくれる、夏の食卓
気がつけば、どのうつわにも共通しているのは「まっすぐすぎない美しさ」でした。
手描きの線、ゆるやかなフォルム、わずかなゆらぎ。
それらが、ぴしっと揃いすぎないことで、どこかやさしく料理を受け止めてくれるのです。
気温が高くなると、どうしても食欲が落ちたり、料理にかける時間が短くなりがちですが、そんな時こそうつわの力を借りたくなります。
盛るだけで整い、目にも涼やかな食卓に。それだけで、なんだか気持ちも少し軽くなるから不思議です。
季節の食材や、気分に合わせて、うつわも衣替えするように。
渓山窯さんのうつわたちは、夏のごはんにもそっと寄り添ってくれる、頼もしい存在なのだと、あらためて感じました。
涼やかなうつわとともに、夏を心地よく楽しめますように。