手しごとが紡ぐ、初夏のやさしい時間
先日、街を歩いていて、涼やかなかごバッグを手にした人に目を奪われました。
その姿がなんとも素敵で、家に帰ってから「どこのかごなんだろう」と調べていたときに出会ったのが、「宮本工芸」でした。
天然の蔓を使い、昔ながらの製法で編み上げられたかご。
それはただのバッグではなく、使う人の暮らしに静かに寄り添う、やさしい道具のようでした。
宮本工芸の魅力は、かごバッグだけにとどまりません。
リビングやキッチン、玄関まわりなど、家のあちこちでそっと役立つ小さなかごたち。
お気に入りのクロスを丸めて入れたり、収納用のカゴとして使ったり、
インテリアとして暮らしに取り入れる楽しさが詰まっています。
初夏の光がまぶしくなり、涼を感じたくなるこの季節。
自然素材のかごは、見た目の涼やかさだけでなく、手に取ったときの軽やかさや、編み目の間からこぼれる影までもが心地よく感じられます。
青森県弘前「宮本工芸」の手仕事
宮本工芸は、青森県弘前市にある1949年創業の伝統工芸の工房です。
そこで扱うあけび蔓は、しなやかでいて丈夫な素材。
最初は明るめの茶色ですが、使ううちに手の油や空気に触れ、深みのある飴色へと変化していくといいます。
型崩れしにくく水にも強く、経年変化が楽しめる素材はまさに「育てていく道具」。
また、宮本工芸では、材料の仕分けから編み上げまで、ひとりの職人が一貫して担当しています。
大量生産では決して生まれない、手仕事ならではの表情と強さがあります。
同じ編み方でも、一本一本の蔓の個性や、編み手の手加減によって、すべてが一点もの。
使えば使うほど、その違いが自分だけの味わいとして感じられるのです。
素材の確かさと育てる愉しみ、そして一貫した「ひとり仕事」が生む完成度と温もりに、特別感と深い愛着を感じました。
土瓶敷き
今回わたしがお迎えしたのは、日々の生活に寄り添ってくれるいくつかのアイテム。
実際に使ってみて、その実用性と美しさの両立に驚かされました。
編み目の美しさはもちろんのこと、構造的にも優れていて、編み目の間に空気の層ができることで熱がこもりにくく、鍋の熱をしっかり逃がしてくれます。
テーブルへのダメージも防ぎつつ、毎日の食事時間に心地よさをもたらしてくれますね。
サイズは4寸・5寸・6寸・7寸の4種類。
ガラスポットには5寸を、鉄フライパンや土鍋には7寸と、器に合わせて選べるのもうれしいところ。
キッチンで吊るしておいても絵になる佇まいで、季節が過ぎても出しっぱなしにしておきたくなるほど。
長く使い込むうちに色艶が少しずつ深まり、暮らしに馴染んでいく様子もまた、楽しみのひとつです。
ゴミ箱
ゴミ箱というと、つい隠しておくもののように感じてしまいますが、
アケビのゴミ箱は、思わず「見せておきたくなる」ような美しさをまとっています。
プラスチック製では出せない温かみと、自然素材ならではのやさしい雰囲気。
土瓶敷きと同様に、編み目があることで通気性にも優れ湿気がこもらず、臭いやカビの発生も抑えられるという実用的な一面も。
中に市販のゴミ袋をさりげなくセットすれば、機能性も保ちつつ見た目の美しさも損なわず、
お部屋の雰囲気を整える小さな名脇役として活躍してくれます。
毎日何気なく使うものこそ、こうした丁寧なものを選びたいですね。
丸両手付
両側にしっかりと手がついた、ころんとした丸みのあるかたち。
この「丸両手付かご」は、使い方次第で暮らしの中でさまざまな役割を担ってくれる頼もしい存在です。
サイズは3種類。
ブランケットやひざ掛けを入れるなら中サイズ、スリッパをまとめたいときは小ぶりなものを、
そして一番大きなサイズは、ペット用のお布団や季節の寝具を収納するのにもぴったりです。。
しなやかなアケビ蔓で編まれたかごは、見た目以上に軽やかで丈夫。
持ち運びやすく、掃除のたびにさっと動かせるのも嬉しいポイントです。
自然素材のかごは、収納としてだけでなく、日々の景色を少しだけやわらかくしてくれるもの。
暮らしにそっと寄り添いながら、目にも心にも心地よい道具となってくれるはずです。
かごのある風景と、暮らしの余白
初夏の陽ざしが強くなり、自然と目が向くのは、手仕事のかごたち。
蔓の隙間から落ちる影や、素朴な手触りが、忙しい日々にほっとした余白をくれます。
見せるために飾るのではなく、使いながら自然に馴染んでいく佇まい。
そこにあるだけで空間に静けさが宿り、なんでもない日常に、少しの「ととのい」を感じさせてくれる、そんな空気感が私はとても好きです。
ひとつ迎えたら、またひとつ。
用途が決まっていなくても「このかご、なんだか良いな」と思うだけで十分。
暮らしのなかで自然と役割が生まれ、気づけばいつも手が伸びている、そんな存在になっていきます。
きっと、長く使えば使うほど、かごは持ち主の暮らしを覚えてくれるのでしょう。
季節が巡るたび、少しずつ艶をまといながら、静かにその人らしさを映していく。
初夏の光のなかで、そんな「暮らしの余白」を受けとめてくれる手しごとを、
これからも、ひとつずつ、大切に選んでいけたらと思います。