涼やかなうつわとともに、夏を迎える
梅雨が明けると同時に、夏の陽射しがいよいよ本気を出してきました。
冷房に頼りきるのではなく、涼しげなうつわを通して季節の移ろいを感じたくなります。
この夏、私の食卓に新たに仲間入りしたのは、長崎と佐賀、それぞれの地で作られたうつわたち。
まったく異なる表情を持ちながら、どこか共通して涼しさを感じさせてくれる不思議な存在感があります。
どちらも、佐賀県唐津市を拠点に活躍する陶芸家・岡晋吾さん監修の作品。
とろりとした釉薬の質感、機能的で使いやすいフォルム、そして古陶を思わせるやわらかな風合いが、食卓にすっと馴染みます。
また、同じ土、同じ釉薬を使っていても、焼きの温度や窯ごとの個性、作り手の絵付けの癖によって、器の表情はがらりと変わります。
その違いを楽しめるのも、手仕事ならではの面白さですね。
長崎県三川内焼・嘉泉窯
「嘉泉窯」は、長崎県佐世保市・三川内町にある400年以上の歴史を持つ三川内焼の名窯。
手に取った瞬間に驚いたのは、まるで空気をすくっているかのようなその軽やかさ。
白磁にふんわりと浮かぶ藍の絵付けは、水面に影が揺れるような、眺めているだけで涼風を運んできてくれるような趣がありますね。
豆皿は、シーンを選ばず使い勝手がよく、何枚あっても重宝する万能なうつわです。
食欲の落ちる夏は、ちょっとしたおつまみを盛って、キンキンに冷やしたビールとともに。友人を招いた際には、取り皿としても活躍してくれます。
一方のパスタ皿は、透明感のある白磁がひときわ涼しげ。
すだちを添えた冷製そうめんを盛り付ければ、ぐっと季節感が高まります。
縁にあしらわれた絵付けが料理を一層引き立て、上品でありながらもどこか愛らしい雰囲気を添えてくれます。
佐賀県吉田焼・224porcelain
お茶所として、また日本でも有数の温泉地としても有名な佐賀県嬉野市で作られる陶磁器・肥前吉田焼。その小さな産地から生まれたブランドが「224porcelain」です。
様式という枠にとらわれず、自由な発想から生まれるうつわには、伝統の技術とモダンな感性が見事に融合しています。
今回迎えたのは、白瓷と薄瑠璃の釉薬をまとったうつわ。
こちらもやわらかな色合いが涼しげです。
あえて残された「たれ後」が釉薬の濃淡を生み出し、作り手の息づかいが感じられるような、同じものがふたつとない風合いを愉しめます。
和菓子をそっとのせると、うつわと調和するようにしっくりと馴染み、使うたびに自然と気持ちが整っていくようです。気負わず、でも丁寧に使いたくなるうつわです。
涼を感じる、美しい暮らしへ
暑い季節こそ、目で、手で、心で涼しさを味わいたい。
冷たい料理はもちろん、うつわの質感や色、絵付け、佇む姿そのものが、涼を運んでくれる存在になります。
ガラスのうつわも良いけれど、磁器の持つ爽やかさや涼やかさもまた格別です。
うつわが変わるだけで、日々の食卓がほんの少し洗練され、いつもの食卓が夏らしい空気に早変わり。
今年の夏は、涼を感じるうつわとともに、暑さを忘れて、お家でゆったりとした時間を愉しみましょう。