一息の時間をつくる道具たち
私は、飲みものが好きです。
白湯、紅茶、緑茶、ほうじ茶、中国茶、コーヒー、水、ビール、ワイン、日本酒…。
思いつくままに並べていたら、止まらなくなってしまいました。
喉ごしのいい冷たい飲みものも、ほっと落ち着くあたたかい飲みものも、
そのときの気分や時間に合わせて、自然と手が伸びています。
食べることも好きだけれど、どちらかというと「飲むこと」のほうに、気持ちが向いている気がします。
だからでしょうか。いつの間にか、飲みものまわりの道具にも、ちょっとしたこだわりが出てきました。
気づけばもう8月。
近くの中学校が静かになったなあ、と思ったら、夏休みに入ったようです。
先日行った長野の空気が、なんだかもう遠い記憶になっていて、あの涼しさが恋しくなります。
東京の暑さは日を追うごとに強くなって、外に出るのが少しおっくうに。
朝から空気がもわっとしていて、部屋の中にも熱気がこもります。
こんな季節は、ひとときでも「涼しさ」を感じられる時間が、なによりありがたく感じます。
見た目からも涼を届ける「日ノ出化学製作所のガラスポット」
最近よく使っているのが、日ノ出化学製作所のガラスポット。
冷たいハーブティーや麦茶を、氷と一緒に入れるだけで、見た目からも涼やか。
透明なガラスの中で、茶葉や氷がゆらゆらと揺れるのをぼんやり眺めていると、少しだけ暑さが和らぐ気がします。
冷蔵庫から取り出して、テーブルに置くだけで、空気がふっと軽くなるような気がするのも、不思議。
ゆっくりと色づいていくお茶の様子をガラス越しに眺める時間が、いつの間にか小さな楽しみになっていました。
朝食のとき、昼のひと息、夜のくつろぎ時間…。
どの時間に使っても、その時の空気に空気に合わせてそっと寄り添ってくれている気がします。
ありがたいことに、神楽坂の街には八百屋さんがたくさんあって、
ふらっと立ち寄るだけで、季節の果物や香りのいいハーブが手に入ります。
最近は、レモンやミント、ローズマリーなどを少しだけ買って帰って、冷たいお茶に浮かべるのがちょっとした楽しみになっています。
茶葉と向き合う時間「人水の急須」
夜になって、ほんの少し風が通るようになると、温かいお茶を淹れたくなります。
そんなときに頼りにしているのが、人水の急須。
最初は「急須=緑茶」というイメージがありましたが、いまでは紅茶や中国茶など、いろいろなお茶を淹れるようになりました。
使い方に決まりはなくて、好きな茶葉を、好きなように、自由に。
そうやって手を動かしているうちに、自然と呼吸が深くなっているのに気づきます。
手にしっくりと馴染むかたちも、注ぐときの感触も好きで、なんとなく手に取る回数が増えていきました。
湯気の向こうで茶葉がゆっくりと開いていくのを眺めていると、季節の輪郭がふわっと浮かび上がってくるような気がします。
最近のお気に入りは、中国茶の白茶。
茶葉を選んでいたとき、店員さんに「今の時期にぴったりですよ」と教えてもらい、早速試してみることに。
白茶には熱を取る効果があるそうで、夏バテ気味の私にはぴったりのお茶です。
紫外線のダメージにもよいらしく、日焼け止めを塗るだけでなく、内側からもケアできている気がして、なんだか安心します。
「何もしないより、ちょっとはマシかも」なんて思いながら、ゆっくり味わっています。
香りで始まる朝、コーヒーの時間
朝はコーヒーを淹れることが多いです。
まだ頭がぼんやりしている時間に、豆を挽いて、お湯を注ぐ。
ふわりと立ちのぼる香りに包まれていると、体と気持ちが少しずつ目覚めていくのを感じます。
暑い日はアイスで、気温が落ち着いている朝はホットで。
そのときの空気や気分に合わせて、無理なく選べるのがコーヒーのいいところかもしれません。
最近は、豆の種類や挽き方、湯温を少しずつ変えてみるのが、ささやかな実験のようで面白く感じています。
お気に入りのマグカップを温めておくと、口当たりまでやわらかくなるような気がして、朝の静かな時間に聞こえてくるポコポコというドリップの音も、どこか心を整えてくれる気がします。
コーヒーの香りとともに始まる一日は、どこか流れがゆるやかで、心地いい。
せかせかしたくない朝ほど、丁寧に淹れてみようと思えるのです。
「飲むこと」が整えてくれるもの
コーヒーを淹れる時間も、お茶を淹れる時間も、ただ飲みものをつくっているだけなのに、
それがいつの間にか、自分を整えるための大切なひとときになっていました。
飲むことは、生きることの中で、きっととてもやさしい営みのひとつ。
そしてお気に入りの道具といっしょなら、そのやさしさに、もう少しだけ深く触れられる気がしています。
道具はただの「もの」ではなく、時間や空気にそっと寄り添ってくれる、静かな相棒のような存在。
この夏もまた、そんな相棒たちに助けられながら、季節を越えていこうと思います。