ヒビノコト

「アメノイエの住人」雨野紡が日々の暮らしを綴る日記です。
家の中での過ごし方や産地での出会いをこちらでご紹介します。

ヒビノコト

「植物で洗う」という心地よさ
オフロ ナカマイリ

「植物で洗う」という心地よさ

春の光と、肌のゆらぎ 春は、光や風がやわらかくて、一番好きな季節。 窓を開けて新しい空気を吸い込むだけで、気持ちまでふっと軽くなるのを感じます。 けれどその一方で、私の肌は少しゆらぎ気味。 ふと頬に触れるといつもよりカサついていたり、昨日まで普通に使っていた洗顔料がピリついたり。  「肌が疲れているんだな」 そんな体からのサインを受け止めて、日々のスキンケアを一度見直してみることにしました。   食べるものを選ぶように いろいろと探しているなかで出会ったのが、「石鹸屋りーふ」さんの和漢植物石鹸。「食べるものを選ぶように、石鹸も選びたい」という想いから始まった、実直なものづくりに心惹かれました。 その想いの根底にあるのは、鈴木さんご自身が経験した、ある切実な日々。 当たり前に使っていた市販品が、ある時期を境に突然、からだに合わなくなってしまい、手のひらが真っ赤に腫れたり、お風呂上がりなのに痒みが引かなかったり…。そんななかで、「自分のからだが安心できるものを」と自ら石鹸を手作りしてみたことが、きっかけだったそうです。 実は私も同じような経験があります。 気づかないうちに体調によって、添加物にからだが反応してしまうのでしょうか。そんな鈴木さんがかつて感じた違和感に、自分を強く重ねてしまいました。 毎日直接肌に触れるものだからこそ、その時々のからだの声を聞きながら、食べ物と同じ感覚で選びたい。そんな当たり前でいて何より大切な原点に、私を立ち返らせてくれた気がします。   時間をかけて引き出す、植物の力  りーふさんの石鹸は、熱を加えない「コールドプロセス製法」で作られています。あえて熱を加えず、一ヶ月以上もの時間をかけてじっくりと熟成させることで、天然油や和漢植物が持つ保湿成分を壊さず、そのまま閉じ込めることができるのだとか。 防腐剤や合成香料といった余計なものは一切使わず、品質や安全性にどこまでも真面目に向き合う。そんなご自身の経験に裏打ちされた真っ直ぐな姿勢があるからこそ、揺らぎがちな敏感肌も、赤ちゃんの柔らかな肌も、安心して託すことができるのだと感じています。   「植物で洗うと、ずっと、いい。」 このキャッチコピーも、スッと心に入ってきました。 もともとアロマやハーブティーが好きで、植物の力を信じている私にとって、これはもう暮らしに取り入れない手はありません。   大人の肌に、濃紫 まず手に取ったのは、「濃紫(むらさき)」。紫草の根である「紫根(シコン)」の力を宿した、高貴で深い色合いの石鹸です。肌の生まれ変わりを健やかに整えてくれるという紫根は、大人の肌のエイジングケアにも心強い味方。 「エキゾチックな香り」って、一体どんな感じだろう。 期待を込めて泡立てると、立ち上ってきたのは、どこか懐かしくも凛とした匂い。 ベルガモットのすっきりとした爽やかさの奥に、フランキンセンスの静けさや、パチョリの深い土の気配がそっと重なっている。 アロマ好きにはたまらない、思わず深呼吸したくなるような奥深さです。...

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育つ時間に、そっと寄り添う贈り物。
オクリモノ ナカマイリ

育つ時間に、そっと寄り添う贈り物。

小さなお友だちとの再会 お湯を沸かす音を聞きながら、何度も時計を何度も確認してしまう、そんなある日の昼下がり。2歳になったばかりの小さなお友だち「りっくん」が、わが家に遊びに来てくれました。 最後に会ったのは、半年前だったでしょうか。 大人にとっての半年はあっという間でも、小さな子どもにとっては、きっと世界がひっくり返るほど長い時間。 「覚えていてくれるかな」「泣かれちゃったらどうしよう」 そんな小さな不安を抱えながら待っていると、インターホンが鳴りました。 ドアを開けると、そこに立っていたのは、見違えるほど凛々しくなった「お兄ちゃん」の姿。 以前はおぼつかなかった足取りも、しっかりと自分の足で地面を踏みしめて歩いています。少し見ない間に、こんなにも大きくなって。その成長ぶりに、再会の喜びと同時にじんと胸が熱くなりました。   2歳のお誕生日おめでとう 初めてのわが家に少し緊張ぎみだったりっくん。 友人のそばをぴたりと離れませんでしたが、お菓子を食べたりお茶を飲んだりするうちに、ようやくこの場の空気に慣れてくれた様子。 その頃合いを見計らって、用意していたお誕生日プレゼントを渡しました。 小さな子への贈りものとなると、いつものプレゼント選びよりも難しく、苦戦しました。 真っ先に浮かぶのはおもちゃですが、自我がしっかりしてきた男の子となると、今の好みを正確に把握するのは至難の業。それなら、毎日気兼ねなく使ってもらえるものを。 そう思って手に取ったのが、tiny mame (タイニーマメ) のベストとバスタオルのセットでした。 2歳という時期は、きっとよく動き回りますよね。 お風呂上がりだって、じっとしてはいられないし、布団に入っても、きっと寝相も豪快なはず。 だから、大切なお腹を冷やさないように。湯冷めをしてしまわないように。 おもちゃのような華やかさはないけれど、りっくんの毎日にそっと寄り添ってほしい。 そんな想いを込めて選びました。   5歳まで着れるベスト 早速包みを開けてみると、彼は興味津々といった様子で熱い視線を送っています。 「ちょっと、着てみる?」 ベストを取り出して声をかけると、嫌がることもなく、自ら小さな腕を袖に通してくれました。 うん、サイズ感もばっちり。...

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「私らしく」いられるインナー
ナカマイリ

「私らしく」いられるインナー

素肌に触れるものにはこだわりたい 年齢を重ねるにつれて、服選びの基準が少しずつ変わってきた気がします。 デザインやシルエットももちろん大切ですが、それ以上に「着心地がよいかどうか」。特に、素肌に直接触れるインナーは、一日中身につけるものだからこそ、妥協したくないのです。 寒い時期はもちろん、季節の変わり目の寒暖差や、冷房の効いた室内でも快適に過ごせるものはないだろうか。そんなふうに着心地のよいインナーを探し続けていましたが、ようやく「これだ」と思えるものに出会えました。   呼吸する繊維「メリノウール」 それは、me.のメリノウールロングスリーブ。 “スーパーエクストラファインメリノ” と呼ばれる、とても細い糸を使ったウールインナー。奈良の職人さんが古い編み機で、ゆっくりと時間をかけて編み上げているそうで、チクチクしにくく、肌あたりがとてもやさしいのです。 もちろん、メリノならではの調温機能も素晴らしく、たとえば、厚着をして満員電車に乗ったときや、暖房が効きすぎた部屋に入ったとき、いつもなら蒸れて不快になるところが、このインナーだとサラサラしたまま。 ただ暖かいだけでなく、余分な熱を逃がしてくれるので、一日中快適で、最近はついこればかり手に取ってしまいます。   透けるほど薄いのに、頼もしい さらに驚いたのは、その「薄さ」でした。最初は、冬は少し心許ないかなと心配になりましたが、そんな心配はご無用でした。むしろ、今ではこの透け感のある薄さが、いちばん使い勝手よく感じられます。着膨れすることもなく、動きも軽やか。出張や旅先にもかさばらず、さっと持っていけるのが助かります。   ひと目惚れした、メロウ 袖口と首元の「メロウ」も、このインナーの魅力のひとつ。控えめな可愛らしさで、大人の装いにも自然に馴染みます。 カーディガンやワンピースの下から、ほんの少しだけのぞかせると、いつもの服の表情が変わり、気分も少し上がります。   水色やイエローといった明るい色も、インナーなら取り入れやすく、差し色として加えてみると、思いのほかしっくりくるのが不思議です。 鏡の前で「今日はどの色にしよう」と悩む時間も、また楽しいひとときになっています。   私の定番として このインナーはワンサイズですが、やわらかくよく伸びるので、着た瞬間から体に馴染みます。 少し食べ過ぎてしまった日でも、お腹まわりが窮屈に感じることはなく、ストレスのない着心地。 これから年齢を重ねて体型が少しずつ変わっても、その変化ごと包み込んでくれる安心感があります。 「服が私に合わせてくれる。」そんなふうに感じさせてくれるインナーです。ブランド名の「me.」に込められた「私らしく」という想いも、すっと腑に落ちました。 贈りものとしてはもちろん、これから長く付き合う自分の定番としても、手放せない存在になりそうです。

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土直漆器×アメノイエ「漆のお椀と重箱」
ナカマイリ 旅日記

土直漆器×アメノイエ「漆のお椀と重箱」

はじまりはひとつの光景から 福井県・鯖江の山あいに工房を構える土直漆器さん。ショールームには、お椀やお重をはじめ、数えきれないほどの漆器が所狭しと並んでいます。   ひとつとして同じ柄のない蒔絵のお椀がが連なり、漆の艶がほのかにきらめくその眺めは、今も鮮明に心に残っています。ただ美しいだけではなく、積み重ねられてきた歳月までも映し出すような深さがありました。 その圧巻の光景に触れたとき、土直さんの工芸の力に改めて心を打たれ、「この豊かさをたくさんの人に伝えたい」と強く思ったのです。 そうして、土直さんとともに漆器をつくらせていただくこととなりました。   ”変わらない形”がもつ強さと美しさ お椀には、布袋(ほてい)や羽反(はそり)など、昔から受け継がれてきた伝統の形があります。何百年ものあいだ姿を変えずに残ってきたその形には、先人たちが積み重ねてきた知恵が息づいているのだと思います。   そのなかで、特に惹かれたのが「羽反椀」でした。ふっくらとした丸みに、外側へわずかに広がる口元。持ったときの軽さ、手に沿うやわらかな曲線、そして口に運んだときの飲みやすさまでも想像できる佇まいです。   ふと視線を上げると、そのすぐそばに重箱が並んでいました。羽反椀のやわらかな曲線とは対照的に、まっすぐな線と面が端正な印象を醸し出し、無駄をそぎ落とすことで漆そのものの美しさを際立たせています。 こうした“普遍の美しさ”には、世代を問わず心を動かす力があると感じます。だからこそ、この伝統の形で、永く暮らしに寄り添えるうつわをつくりたいと思いました。   アメノイエの4つの漆器 今回、土直漆器さんに特別に制作いただいたのは4種類。  汁椀、雑煮椀、蓋付き椀、重箱。  お椀は、昔から親しまれてきた羽反りを、重箱は、漆の美しさが引き立つシンプルな形を選んでいます。塗りの表情には特にこだわり、新年の食卓にも日々の暮らしにもなじむよう、土直さんに何度も相談しながら仕立ててもらいました。   汁椀 毎朝の味噌汁に使いたい、汁椀。漆の軽やかな手触りと熱のやさしい伝わり方は、慌ただしい日の朝でも気持ちがやわらぐようです。日常の一杯こそ、いちばん丁寧に味わいたい。そんな思いにそっと寄り添ってくれるお椀です。 ナカマイリ / New 土直漆器×アメノイエ 汁椀 黒 くわしくはこちら →...

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菊地大護 「クリスマスからお正月へ、年末を彩るうつわ」
キセツ ナカマイリ 旅日記

菊地大護 「クリスマスからお正月へ、年末を彩るうつわ」

冬の気配とともに始まる、特別な時間 冬の澄んだ空気が少しずつ街を包みはじめ、好きな季節がやってきたことを感じる12月。街にはイルミネーションが輝き、クリスマスや年末のイベントの準備で、どこかそわそわと賑やかな気配が広がります。この季節ならではのワクワクとした空気に触れると、心が自然と弾みますね。 こうした冬の始まりに、アメノイエではガラス作家・菊地大護さんの作品をお迎えし、季節の移ろいを感じるひとときをご用意しました。クリスマスやお正月の準備で、うつわの出番がいつもにも増して多くなるこの季節。晴れの日の食卓に、美しい菊地さんのガラスをしつらえていただきたい。そんな思いを込めて今回制作をお願いしました。 きらめくガラスのうつわや酒器が、冬の光と静けさを映し込み、日々の食卓にそっと華やぎを添えてくれる時間を感じていただければ嬉しく思います。 稲刈りの季節に訪れた、新しいアトリエ 10月中旬に、完成したばかりの菊地さんのアトリエを訪れました。秋が深まりきる前、稲刈りが進む田園の中に佇むその空間は、澄み渡る空気に包まれ、どこか未来への静かな期待を感じさせる場所でした。 もともとお米の農家さんが使っていた蔵を、菊地さんがアトリエとして整えたという建物。広々とした空間に高い天井、秋のやわらかな風が抜け、室内に差し込む陽の光が作品の輪郭をやさしく照らしていました。 この日は嬉しいことに、制作風景も見せていただけることに。ガラスづくりは、吹く人と形を整える人のふたりで行うイメージがありましたが、菊地さんはおひとりで、驚くほど軽やかにこなしていきます。窯から出したばかりのガラスに向き合い、道具を使って形を定めていく姿は美しく、とても印象的でした。 ガラスがまだ熱を帯びているうちに光を透かして輝く瞬間や、金属の道具が触れたときの“カツッ”という澄んだ音、息づかいに合わせてゆらめく色のグラデーション。その光と音、そして手元の細かな動きに引き込まれ、気づけば呼吸まで自然と菊地さんのリズムに合わせるように見入っていました。 菊地さんのガラスといえば、上品でやわらかなピンク色が特徴です。この色は、ガラスを琥珀色に仕上げる“アンバー”という原料を使い、薄く吹き上げることでふわりとピンクに見えるのだとか。まさかアンバーからピンクが生まれるとは思いもよらず、ガラスの奥深さに驚かされました。 気さくでお話し上手な菊地さんは、私のリクエストにも快く応じてくださり、見たい作品を次々とその場で形にしてくださいます。 手仕事の丁寧さ 日々愛用している片口。その切れのよさは、注ぐときのストレスがなく、料理やお酒を楽しむ時間をより心地よいものにしてくれます。 仕上げの要となる口の部分は、道具を使って一気に形づくられ、その一瞬の研ぎ澄まされた集中に思わず見入ってしまいました。 口元を仕上げたあと、底につけられたガラスを外し、作品は窯の中でゆっくりと時間をかけて冷まされていきます。成形後のガラスを丁寧に冷やすことで、急激な温度変化による割れを防ぐのだそうです。 流れるように続く菊地さんの動きと、ひとつひとつの工程を確かめるように進める丁寧な手仕事。その調和の美しさに見入っていると、いつの間にか時間が経つのを忘れてしまいます。躍動感のある制作の光景に触れながら、終始心が弾むようなひとときを過ごしました。 どの作品をお迎えするか、アトリエのテーブルをお借りしてゆっくり見比べてみることにしました。どれも素敵で迷っていると、菊地さんが庭に咲く白い百合をさっと摘み、細いガラス瓶に生けてくださいました。白百合が添えられたことで、テーブルの上のガラスが陽の光を受けていっそう澄んだ輪郭を見せ、静かな輝きがふわりと広がります。 その透明な重なりを眺めながら、じっくりと作品を選ぶ時間を楽しみました。 そんな居心地のよいアトリエは、差し込む光ややわらかな秋風に包まれ、つい長居してしまうほどでした。菊地さん、素敵なアトリエを見学させていただき、ありがとうございました。 ガラスが映す、冬の光と季節のしつらえ クリスマスの温かい団欒から、年末のご馳走、新年の凛とした食卓まで、冬のさまざまな場面を彩るガラスの作品たち。 普段は涼やかな季節に使うことが多いガラスですが、抜け感のあるうつわは冬の光を受けることで表情を変え、軽やかで美しく、どこか洗練された雰囲気を運んでくれます。 年越しには酒器をしつらえて。お酒をいただく時間が、いつもより少し特別に感じられそうです。どの作品にも、菊地さんのガラスが持つやわらかな存在感と、手仕事のやさしさが宿っています。 アメノイエで、その透明な世界をぜひお楽しみください。皆さまのお越しを心よりお待ちしております。 オープンデイのご予約はこちら

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Lunef × アメノイエ -オリジナルフレグランス-
ナカマイリ 旅日記

Lunef × アメノイエ -オリジナルフレグランス-

香りづくりのはじまり 今日は、待ちに待った “自分だけのフレグランス” をつくる日。香りのブランド Lunef(リュネ)の調香師、安藤明日生(あすみ)さんが、わが家に来てくれました。友人の紹介でLunefと出逢い、その静かな世界観に惹かれて、はや半年。「いつか一緒に香りをつくりたい」という思いを明日生さんに伝えてみると、迷いなく応えてくださり、こうして今日を迎えることに。 白がよく似合う方で、この日も白いワンピースが柔らかな存在感を放っています。その凛とした佇まいに見惚れているやいなや、明日生さんは手際よく準備をはじめます。何種類もの白い布をつなぎ合わせた素敵なパッチワークのクロスをふわりと広げ、その上に小さな精油瓶をひとつ、またひとつと並べていく。さらに、細長い試香紙に精油を一滴ずつ落としていき、黒いプレートの上に円を描くように配置していく。その一連の流れは、SNSで見てきたあの光景そのままで、なんだか胸が高鳴りました。 やがて準備が整い、紙とペンが手渡されます。テーブルに並ぶのは、番号だけが記された白い紙。 「まずは、好きな香りと出会ってくださいね」と明日生さんが言います。 普段なら、精油の名前や効能に意識が向いてしまいがちですが、あえて情報を伏せることで、先入観ではなく純粋な好みと向き合ってほしいという明日生さんの意図が伝わり、私の意識も香りそのものへと向いていきました。   香りと向き合うひととき さて、21枚の芳香紙を順番に香っていきます。8番目あたりまで試していくと、気になるものがいくつも出てきて、少し迷ってしまいます。すると明日生さんが、「いくつ選んでも大丈夫ですよ」と声をかけてくれました。そのやわらかな笑顔に安心して、また次の香りへと手を伸ばします。 ただ香りだけに集中する時間が、黙々と過ぎていきます。鼻先に届く瞬間の印象、奥に残る静かな余韻。そのひとつひとつを確かめていると、全神経が嗅覚へ集まっていくようで、普段では味わえない感覚に包まれました。 すべて試し終えると、明日生さんがひと言。「紡さんは、ウッディなものがお好きなのですね。」 私が選んだ多くが、森を思わせる精油だったようです。自然が好きだからなのか、都会の暮らしの中で、知らないうちに森のような静けさを求めているからなのか。 ふっと内側を見透かされたようで、少し照れくさくなりました。   ついにかたちになるとき 選んだ精油を一滴ずつ重ね合わせていくと、単体では見えなかった陰影が浮かび上がってきます。 すっと通るような森の空気。土の渋み。奥に潜む甘さ。精油を重ねるごとに変化していく様子は、まるで目の前でひとつの物語がひらいていくようでとてもおもしろい。 けれど、「好き」を重ねただけでは、どこか惜しいのです。そんな私の中の小さな違和感を、明日生さんは言葉にしなくても察し、数滴の調整でさっと整えてしまいます。すると、すっかりその違和感は消え、複雑でありながらひとつにまとまった香りになりました。 こうして、ベースが完成です。ここからは鎌倉のアトリエで仕上げてもらうことになり、この日の作業はいったん終了。 あとは、完成の知らせを待つばかりです。   鎌倉を訪ねる 仕上がったと連絡をいただいたのは、それから数日後のことでした。 郵送で受け取ることもできましたが、明日生さんがどんな環境でアロマと向き合っているのかを自分の目で見てみたくなり、鎌倉へ向かうことにしました。 待ち合わせは、明日生さんのお気に入りのお散歩コースでもある、自然に包まれた場所。この日はよく晴れていて、まさに絶好のお散歩日和です。鎌倉駅周辺は観光客で賑わっていましたが、待ち合わせ場所へ向かう小道へ入ると景色がふっと変わります。ひと気のないその一角には、ひんやりと澄んだ空気が満ちていて、鳥たちがさえずりながら迎えてくれました。風が通ると、落ち葉がさらさらと降ってきます。見上げると、その量に思わず息をのみました。きっと、紅葉の時期ならではの光景なのでしょう。まるで“葉っぱの雨”のように降りそそぐその瞬間は、なんとも幻想的。そして、木漏れ日が差し込むたびに、景色はそっと表情を変えていきます。 その移ろいがあまりにも美しくて、気づけば夢中でシャッターを切っていました。  ...

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宮島のしゃもじを訪ねて
ナカマイリ 旅日記

宮島のしゃもじを訪ねて

木のしゃもじとの出会い 先日友人の家で見た木のしゃもじが、ずっと心に残っていました。使い込まれた木肌はほんのりと艶を帯び、手に取ると驚くほどすっと馴染む。軽くて扱いやすいプラスチックのものも増えてきたけれど、やっぱり私は木のぬくもりに触れていたいと思うのです。 どこのものか尋ねると、「宮島工芸製作所のしゃもじ」だと教えてくれました。広島出身の彼女は 「杓文字といえば広島でしょ」と得意げに話します。 広島では、しゃもじが昔から縁起物として親しまれています。「福をすくう」といわれる宮島杓子をつくり続ける宮島工芸製作所は、地元では誰もがよく知る工房で、丁寧な手仕事で長く使える道具をつくり続けています。 彼女のおばあちゃんもお母さんも、ずっと宮島工芸製作所のしゃもじを使ってきたのだとか。だから彼女にとって、この工房のしゃもじを選ぶのはごく自然なことなのです。そんな話を聞くと、使い心地のよさもきっと確かなものなのだろうと思いました。   宮島工芸製作所 ちょうど広島を訪れる予定があったので、「宮島工芸製作所」の工房を訪ねてみることにしました。島に渡る船が着くと、穏やかな海と心地よい潮風が迎えてくれます。 世界遺産・厳島神社の鳥居を望むその地に、工房はひっそりと佇んでいました。入り口には大きなしゃもじが飾られ、その姿からも長い歴史の深さを感じます。扉を開けると、木のやさしい香りがふわりと漂い、古い機械の音とともに、職人の手仕事が生み出すリズムが奥の作業場で途切れることなく続いていました。   工房に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、壁一面に並んだしゃもじやヘラたち。形も大きさも用途もさまざまで、ひとつとして同じものがありません。「闘志」「必勝」と記されたものや、記念品としてつくられたものも並び、この工房が歩んできた年月と、人々がそこに込めてきた思いが伝わってきました。 しゃもじは「メシを取る」ことから「召し取る」に通じ、戦の場では勝利祈願の道具としても扱われたといいます。その背景を知ると、壁に掛けられた一つひとつが、願いや祈りをすくってきた証のようにも見えてきました。   棚には数えきれないほどの木型が整然と並んでいます。「すしベラ」「お玉」「バターナイフ」。手書きされた文字は、油性ペンのインクが少しかすれていて、そこにもまた歴史を感じます。用途に合わせて工夫を重ねてきた職人たちの思考と経験が、ひとつひとつの型に息づいているのが伝わってきました。   使っている木は、広島県北部の山々に自生するヤマザクラ。 宮島の近くで育つ木だからこそ、良質な素材を安定して手に入れられるのだといいます。堅くて弾力があり、長く使っても歪みにくいのがこの木のよさで、使い込むほどに赤みと深みが増していきます。その変化はまるで、自分だけの道具へと育っていくようで、ますます魅力的に感じられました。   一本の木から生まれるかたち 静かな空間には、木地を切る音や削る音が心地よく響き、淡い木の粉がふわりと舞っています。 工房の片隅では、職人さんが一枚の板を机に置き、鉛筆でしゃもじやヘラを型取りはじめていました。木目を読みながら、どの部分が持ち手になり、どの部分がすくう面になるのか、迷いのない動きで描いていく姿は、まるで木と対話しているよう。一枚の板にパズルのようにびっしりと型が描かれていく様子は、“木を余すことなく使いきる”という、この工房の流儀そのものだと感じました。   描いた線に沿って板を切り進めると、木の中からしゃもじやヘラのかたちが現れてきます。切り抜かれた木地は、まだ角ばったまま。   そこから職人さんが型を当てて厚みを調整し、丸みを削り出していくと、だんだん私たちの見慣れた道具の姿へと近づいてきました。木地と向き合うその背中には、積み重ねてきた年月と、ものづくりへの情熱がにじんでいます。 削りの工程が終わると、木地は研磨の職人さんのもとへ渡ります。ここからは、道具としての表情を整えるために、ひたすら木地と向き合う時間のはじまりです。   研磨前の木地に触れると、木そのものの息づかいがまだ残っているような、少し荒々しい手触りがあります。まず、粗い番手の紙やすりで形を整え、次第に細かな番手へと移りながら、ざらりとした面を丁寧に落としていく。「ここまでやるのか」と思うほど、何度も、何度も。そうしてようやく、手のひらにすっと吸い付く、あのなめらかさが生まれてくるのです。  ...

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ぬくもりをまとう私の冬支度
イマ ナカマイリ

ぬくもりをまとう私の冬支度

冷たい風を感じる季節。気づけば、ソファの上はブランケットの定位置に。朝の目覚めの時間も、夜の読書の時間も、そのやわらかなぬくもりに包まれています。長く愛用しているコットンウールと、新しく迎えた軽やかな三重ガーゼ。そんな私の冬支度のお話です。

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からだを想う、私の新しい温活。
イマ ナカマイリ

からだを想う、私の新しい温活。

この数日で、ぐっと寒さが増してきました。つい先週までは日中に汗ばむこともあったのに、今はもう冬の気配。曇り空にひんやりとした風が混じる午後、友人とお茶をしていたときのこと。「冷えは大敵だから、私は一年中腹巻をしているの」と話す彼女の言葉がきっかけで、私も“身につける温活”をはじめることにしました。

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一目惚れからはじまる、私の一碗
チャノマ ナカマイリ

一目惚れからはじまる、私の一碗

はじめて手にした「かいらぎ」のうつわに、心を奪われたあの日。釉薬のちぢれが生む景色は、光や角度によってゆらぎ、ひとつとして同じ姿はありません。その印象は時を経ても消えることなく、暮らしの中で折にふれてよみがえります。もう一度その景色に会いたくて、兵山窯を訪ね、アメノイエのためにお茶碗とどんぶりを作っていただきました。かいらぎと錆巻き、ふたつの表情が、これからの食卓を静かに彩ってくれることでしょう。

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透明ではない美しさに惹かれて
チャノマ ナカマイリ

透明ではない美しさに惹かれて

朝の陽がきらきらとリビングに差し込む日。こんな朝には、木村硝子店のサンサボウルの出番です。朝食の支度をしながらも、つい手に取って光にかざしてみたくなる。ガラスの中に浮かぶ無数の小さな気泡が、光を受けて星屑のように瞬きます。ほんのり青みを帯びたグレーの色合いは、透明なガラスにはない静けさをまとい、慌ただしい朝にひと呼吸をもたらしてくれるのです。ガラスのうつわといえば、澄みきった透明さを思い浮かべる方も多いでしょう。けれど、このサンサボウルを手にすると、そこには透明とはまた異なる、美しさのかたちが見えてきます。

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暮らしの中で、“道具”を楽しむ
ダイドコロ ナカマイリ

暮らしの中で、“道具”を楽しむ

先日、長野県の安曇野へ旅に出かけました。山あいの空気は少しひんやりとしていて、深く息を吸うたびに、体の奥がゆるやかにほどけていくような感覚。 立ち寄った道の駅では、地元の野菜や果物にまじって、美しく並んだ乾麺のそばが目にとまりました。石臼で挽いたような香りがしそうな、素朴で誠実なパッケージ。迷うことなく手に取り、お土産に。 帰ってきた週末、そのおそばを茹でて、お昼に「とろろそば」に。すり鉢を取り出し、長芋を擦る時間も、旅の余韻のように静かで穏やか。音、香り、手の感触。ひとつひとつが心地よくて、「こういう時間こそが、生活の真ん中にあってほしいものだな」と、ふと思いました。

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