ヒビノコト

「アメノイエの住人」雨野紡が日々の暮らしを綴る日記です。
家の中での過ごし方や産地での出会いをこちらでご紹介します。

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水の流れを思わせる曲線美
ナカマイリ

水の流れを思わせる曲線美

はじまりは、ひとつのガラス  まるで水が流れる、その瞬間を閉じ込めたかのよう。 やわらかな曲線や溶け合う色彩は、今にも流れ出しそうな躍動感を宿しながら、不思議と凛とした静けさも感じさせます。 光を受けるたびに表情を変え、ふと視線を向けるたび、その美しさに思わず手を止め、見入ってしまう存在です。 出会いは約三年前。ふらりと立ち寄ったインテリアショップで見つけた、無骨でいてどこかやわらかなガラスの塊。その佇まいに心を奪われ、直感のままわが家へ迎えました。 本当の美しさに気づいたのは、自宅の窓辺で強い西日をたっぷりと受けたとき。光をまとったガラスは息をのむほど美しく、その瞬間からLANさんのガラスの虜になったことを今でもはっきりと覚えています。   その後、ご縁があってLANさんご本人とお会いする機会に恵まれました。お話ししてみると、お互い自然が大好きだということが分かり、すっかり意気投合。今では一緒に山へ出かける間柄になりました。 先日も、新緑が美しい八ヶ岳へ。ゆっくりと山道を歩きながら、ガラスづくりのことや作品に込める思い、これまで歩んできた道のりなど、いろいろなお話を聞かせていただきました。   歩幅を合わせながら聞いた、はじまりのこと   LANさんがガラスの制作を始められてから、今年で約7年。 最初は前職のかたわら、バーナーを使って小さなアクセサリーを作るところからスタートし、その後吹きガラス(ブローワーク)を教わったことで、お香立てや一輪挿しといった、暮らしの中で使われる道具へと表現が広がっていったといいます。   「前職で培った色づくりや色の組み合わせの感覚は、現在の作品づくりにも活かされていると感じています」 そう語るLANさんの作品は、スモークグレーやダークブラウンなどが静かに混ざり合う、とてもシックで奥深い色合いが魅力です。 色彩がゆったりと溶け合い、たゆたうようなグラデーション。透き通るガラスの中に閉じ込められた小さな気泡すらも、光を受けて小さな粒のように輝いていて、眺めるたびに新しい表情に気づかされます。   偶然の揺らぎをそのまま愛おしむ  熱く溶けたガラスは、温度や時間、ほんの少しの手の力加減によって仕上がりが大きく変わる、とても繊細な素材です。 制作を始めた頃は、自分が思い描いた形を正確に表現することを意識していたというLANさん。けれど、日々ガラスと向き合うなかで、その姿勢は少しずつ変わっていったのだそうです。 「思い通りにならないことも多いですが、その難しさがあるからこそ新しい発見や学びがあり、制作を続ける面白さにつながっています。」 今では、ガラスが自然につくり出す揺らぎや、その時々に生まれる偶然の表情も、一つの個性として大切にしながら制作されているそうです。だからこそ、LANさんの作品には、どこか自然の流れをそのまま映したような、飾りすぎない美しさが宿っているのかもしれません。   アートのような佇まいと、日常の機能  「ご覧になる方それぞれが、自由に何かを感じたり、風景や記憶を重ね合わせたりしながら楽しんでいただけたら。」 作品をつくるうえで大切にされているのは、アートとしての表現と、暮らしの中で使う道具としての心地よさ。そのどちらかではなく、両方が自然に寄り添うことなのだそうです。 山道をゆっくり歩きながら、ものづくりのお話を聞き、その考え方に触れるほど、私はますますLANさんのガラスに惹かれていきました。 また新しい作品を迎えたいとお伝えすると、「もちろんです。」と笑顔で応えてくださったLANさん。それから数か月後、わが家へ届いたのは、私をイメージした色合いで仕上げてくださったお香立てと花器でした。初めてLANさんの作品に出会った三年前、心を奪われた静かな美しさはそのままに、今回の作品は、より有機的な曲線を描き、色彩もさらに豊かに重なり合っています。  ...

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窯を開けるまで、わからない景色。
ナカマイリ

窯を開けるまで、わからない景色。

あらたなうつわとの出会い 土のうつわなのに、まるで石のよう。 初めて小原創太さんのうつわを目にしたとき、そんな感覚を覚えました。 きっかけは、知人が見せてくれた一枚のプレート。一枚一枚じっくり見比べると、青みの現れ方や炭の跡、貫入の表情は少しずつ異なり、それぞれが違う空気をまとっています。 ぜひわが家にも迎え入れたいと思ったのと同時に、「どのようにして、こんな奥行きのある表情が生まれるのだろう」という思いが募りました。作品そのものに惹かれたのはもちろんですが、それ以上に、その背景にあるものづくりを知りたくなったのです。 そんな思いから小原さんに連絡をし、先日、埼玉県所沢市にある工房を訪ねさせていただくことになりました。   静かな工房で 少し汗ばむ陽気の中、車を走らせて小原さんの工房へ向かいました。住宅街の一角に建つ、ご自宅兼工房。扉を開けると、まず目に飛び込んできたのは、棚に整然と並んだうつわたちです。 知人に見せてもらったあのプレートや、印象的な丸いカップ、凛とした佇まいの花器など。あの日、一目惚れした表情の作品たちがずらりと並んでいて、思わず心が躍ります。   温かく迎えてくださった小原さんは、とても穏やかで、言葉のひとつひとつから誠実な人柄が伝わってくる方でした。 棚のうつわを眺めていると、小原さんは愛おしそうに手に取りながら、それぞれの表情が生まれる背景を聞かせてくださいました。 土の色、釉薬の掛かり方、そして炭化の工程。さまざまな要素が重なり合うことで、奥行きのある表情が生まれるのだそうです。 同じ材料と工程でつくられたうつわであっても、並べて見比べると、ひとつとして同じ表情のものはありません。 工房へ来る前に感じていた「どうしてこんなに奥行きのある表情が生まれるのだろう」という疑問が、小原さんの言葉によって、少しずつほどけていくようでした。   土と向き合う時間 この日は、「たたら」という技法による制作工程の一部を見せていただけることになりました。 ろくろが回転する土から形をつくるのに対し、たたらは板状に伸ばした土を型に沿わせて成形していく技法。平らなうつわは一見するとつくりやすそうにも思えますが、実は焼成すると歪みが出やすく、思うような平らさに仕上げるのがとても難しいのだそうです。 まずは、「菊練り」と呼ばれる土を練る工程から。土の中の空気を抜きながら、硬さを均一に整えていきます。土の塊に体重をのせ、リズミカルに形を変えていく無駄のない動きに、思わず見入ってしまいます。   菊練りを終えて、ロケットのような形に整えられた土の塊。それを手で少しずつ押し潰すようにして、きれいな平たい円柱状へと伸ばしていきます。小原さんはその円柱状の土の左右に、細長い木製のプレートを何枚か重ねて置きました。そして、ピンと張った細い針金を並行に滑らせるように引き、均一な厚みに一枚ずつきれいにスライスしていきます。 本来なら、このスライスした土を仕立てるには、だれないように少し乾燥させる時間が必要なのだそうですが、この日は、あらかじめちょうどいい硬さになるまで乾燥させておいたものを別に用意してくださっていました。   ほどよく乾燥した土を、丸みを帯びた型の上にそっとのせます。回転する台の上で、手のひらを使って優しく、型に沿わせるように成形していく。   その手仕事によって、平らだった土の板が、みるみるうちにうつわの形へと整っていきます。流れるようにスムーズに見える工程ですが、焼き上がりまでには細やかな調整が欠かせません。歪みや割れを防ぐため、乾燥のタイミングを見極めながら、慎重に管理していくのだそうです。   特に大きな板皿は、三回目の「炭化焼成」のタイミングで割れてしまうことが多いといいます。...

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二年分の「好き」を、一枚のハンカチに
ナカマイリ

二年分の「好き」を、一枚のハンカチに

節目に残したかったもの 神楽坂に引っ越してきて、あっという間に二年が経ちました。季節が巡るたび、各地の作り手を訪ね、そこで出会った道具たちを暮らしに迎えてきました。そんなご縁を重ねながら、暮らしが少しずつ豊かになっていったように思います。  食卓を彩るうつわ。毎日のように手に取る木の道具。部屋の片隅に置いているかご。 どれも、その道具を迎えた日の景色や、交わした言葉まで思い出させてくれる大切な存在です。 二周年という節目に、その時間を何かひとつ形に残したいと思い、ハンカチをつくることにしました。描いたのは、この二年間の暮らしの中で出会い、特に心に残っている道具たち。何度も手に取り、ともに時間を重ねてきたものだからこそ、それぞれにかけがえのない思い出が宿っています。 そんな二年分の「好き」を、一枚の布にぎゅっと詰め込みました。   ケンタくんが描いてくれた世界 イラストをお願いしたのは、以前、贈り物のための包装紙を描いてくれたケンタくんです。包装紙が出来上がったとき、「またいつか一緒に何かをつくれたら」と思っていたので、今回こうしてお願いできたことをとても嬉しく思っています。 描いてもらったのは、私たちが特に愛着を持って使い続けてきた暮らしの道具たち。「あのうつわも入れたい」「この家具も描いてほしい」と、一つひとつ選びながら、一緒に形にしていきました。  完成したイラストを見たとき、毎日のように使ってきた道具たちが一枚の絵になって並んでいることが、なんだか感慨深く、思わず見入ってしまいました。 ケンタくんらしい軽やかなタッチのなかに、ガラスのやわらかな透明感や、かごの繊細な編み目、それぞれの道具が持つ表情まで丁寧に描かれていて、「道具らしさ」がちゃんと伝わってきます。 見慣れた道具なのに、絵になるとまた違った魅力があって、広げるたびに嬉しい気持ちになる一枚です。   毎日使うものだから せっかくつくるなら、毎日気持ちよく使えるものにしたい。そんな思いから、製作はハンカチ専門店・OLD-FASHIONEDさんにお願いしました。 ハンカチは毎日持ち歩き、何気なく手に取る、とても身近な道具です。だからこそ、生地の風合いや縫製にもきちんとこだわりたいと思いました。たくさんの生地を見せていただく中で、一目見た瞬間、「これだ」と感じたのが、ほんのりと透け感のある上品な生地でした。軽やかでやわらかな風合いは、ケンタくんのイラストともよく馴染み、この一枚にぴったりでした。 縁には、「メロー巻き」を施しています。細い糸で丁寧に仕上げられた縁取りが、イラストをやさしく引き立て、このハンカチらしい軽やかな表情を添えてくれています。 暮らしの中で育つ一枚 新品のぱりっとした風合いも素敵ですが、何度も洗ううちに少しずつやわらかくなり、自分だけの一枚へと育っていく。その変化は、お気に入りのうつわや木の道具が、暮らしの時間とともに手に馴染んでいく感覚と、どこか似ているように思います。 バッグから取り出して手を拭いたり、お弁当を包んだり。ときには、かごにふわりとかけて目隠し代わりに使ってみたり。 小さな布ですが、暮らしの中では思っている以上に出番の多い道具です。気づけば何枚も集めてしまうのも、ハンカチの魅力のひとつ。 旅先で迎えた一枚や、大切な人から贈られた一枚は、引き出しを開けるたび、その頃の空気まで一緒によみがえらせてくれます。 このハンカチもまた、そんなふうに暮らしの時間を重ねながら、その人だけの一枚へと育っていってくれたら嬉しいです。 これから増えていく「好き」 二周年はひとつの節目ですが、新しい始まりでもあります。 この先も、新しい作り手とのご縁があり、心惹かれる道具と巡り合いながら、暮らしも少しずつ形を変えていくのでしょう。 これまでいただいたご縁を大切にしながら、この場所でまた新しい「好き」を重ね、これからも日々を紡いでいけたらと思っています。

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お昼が待ち遠しくなる曲げわっぱ弁当
ダイドコロ ナカマイリ

お昼が待ち遠しくなる曲げわっぱ弁当

日課から、楽しみへ   寝ぼけ眼で台所に立ち、卵焼きを焼く。夕飯の残りを少しずつ詰めて、ご飯をよそう。そんな毎朝のお弁当づくりは、私にとって淡々とこなす日課のひとつでした。  けれど、この一週間は少し違います。 理由は、新しく台所に迎えた曲げわっぱのお弁当箱。 以前から「いつか使ってみたい」と思っていた、憧れの道具です。 いつもの見慣れたおかずも、杉の白木に詰めるだけで、急によそ行きな顔になる。 詰めていくたびに華やかなわっぱ弁当になっていくその様子が楽しくて、気づけば朝の眠気もどこかへいってしまいます。SNSや雑誌で見かけるたび、「どうしてこんなにおいしそうなんだろう」と気になっていた秘密は、どうやらこのお弁当箱にあるようです。 お昼休みにこの蓋を開けるのが待ち遠しくて、仕事へ向かう足取りまで少し軽くなったような気がしています。   最初は、「無塗装」のつもりで  普段から木の道具が好きで、木肌の風合いを感じられるものを選んでいます。使うほどに艶が増し、小さな傷さえもその家だけの景色になっていく。そんな経年変化に惹かれるので、曲げわっぱも、迷わず無塗装のものを選ぼうと思っていました。 今回お願いしたのは、秋田県大館市で曲げわっぱをつくり続けている、りょうび庵です。昔ながらの技法を大切に受け継ぎながらも、今の暮らしに寄り添うものづくりをされていて、その考え方に自然と惹かれました。毎日使う道具だからこそ、美しさだけでなく、使いやすさまできちんと考えられていること。その姿勢に共感し、「この方がつくる曲げわっぱを使ってみたい」と思ったのです。 そんな思いで、無塗装のものをお願いしたいとりょうび庵の石倉さんへお伝えしたところ、返ってきたのは少し意外なお返事でした。 「お弁当箱でしたら、私は塗装のものをおすすめしています。」 木の道具をつくる方なら、素材そのものの風合いを何より大切にされているのではないか。そんなイメージを勝手に抱いていたので、思わず理由を伺うと、気づけば30分ほど、お弁当箱についてのお話を聞いていました。 石倉さんがおっしゃっていたのは、無塗装の曲げわっぱは経年変化を楽しめる一方で、シミや黒ずみ、匂い移りが起こりやすく、扱いが難しいと感じて使わなくなってしまう方も少なくないということでした。 「せっかく選んでいただいたお弁当箱が、使われなくなってしまうのは本当にもったいないんです。」 その言葉が、とても印象に残っています。 もちろん無塗装を否定しているわけではなく、その魅力もよく分かっている。それでも、お弁当箱は毎日のように使う道具だからこそ、気兼ねなく洗えて、また翌朝も自然と手が伸びることを大切にしたい。 だから、塗装のものをおすすめしているのだと教えてくださいました。 そのお話を聞いているうちに、私の中で「無塗装のほうが良いもの」という思い込みが、少しずつほどけていくのを感じました。素材そのものを味わうことも素敵ですが、「長く使い続けてもらうこと」を一番に考えたものづくりもまた、とても誠実なのだと気づかせてもらったのです。   一週間のお弁当 石倉さんのお話を聞いて迎えた、曲げわっぱのお弁当箱。 さっそく一週間、毎日お昼ご飯を詰めてみました。   月曜日: パズルのように彩りを  週の始まりは、インゲンの肉巻きがメイン。 ぎゅっと詰まったインゲンの緑色や、茹で玉子やトウモロコシの黄色、ミニトマトの赤。杉のやさしい木肌が、それぞれの色を引き立ててくれて、いつものおかずもよりおいしそうに見え、ます。...

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「植物で洗う」という心地よさ
オフロ ナカマイリ

「植物で洗う」という心地よさ

春の光と、肌のゆらぎ 春は、光や風がやわらかくて、一番好きな季節。 窓を開けて新しい空気を吸い込むだけで、気持ちまでふっと軽くなるのを感じます。 けれどその一方で、私の肌は少しゆらぎ気味。 ふと頬に触れるといつもよりカサついていたり、昨日まで普通に使っていた洗顔料がピリついたり。  「肌が疲れているんだな」 そんな体からのサインを受け止めて、日々のスキンケアを一度見直してみることにしました。   食べるものを選ぶように いろいろと探しているなかで出会ったのが、「石鹸屋りーふ」さんの和漢植物石鹸。「食べるものを選ぶように、石鹸も選びたい」という想いから始まった、実直なものづくりに心惹かれました。 その想いの根底にあるのは、鈴木さんご自身が経験した、ある切実な日々。 当たり前に使っていた市販品が、ある時期を境に突然、からだに合わなくなってしまい、手のひらが真っ赤に腫れたり、お風呂上がりなのに痒みが引かなかったり…。そんななかで、「自分のからだが安心できるものを」と自ら石鹸を手作りしてみたことが、きっかけだったそうです。 実は私も同じような経験があります。 気づかないうちに体調によって、添加物にからだが反応してしまうのでしょうか。そんな鈴木さんがかつて感じた違和感に、自分を強く重ねてしまいました。 毎日直接肌に触れるものだからこそ、その時々のからだの声を聞きながら、食べ物と同じ感覚で選びたい。そんな当たり前でいて何より大切な原点に、私を立ち返らせてくれた気がします。   時間をかけて引き出す、植物の力  りーふさんの石鹸は、熱を加えない「コールドプロセス製法」で作られています。あえて熱を加えず、一ヶ月以上もの時間をかけてじっくりと熟成させることで、天然油や和漢植物が持つ保湿成分を壊さず、そのまま閉じ込めることができるのだとか。 防腐剤や合成香料といった余計なものは一切使わず、品質や安全性にどこまでも真面目に向き合う。そんなご自身の経験に裏打ちされた真っ直ぐな姿勢があるからこそ、揺らぎがちな敏感肌も、赤ちゃんの柔らかな肌も、安心して託すことができるのだと感じています。   「植物で洗うと、ずっと、いい。」 このキャッチコピーも、スッと心に入ってきました。 もともとアロマやハーブティーが好きで、植物の力を信じている私にとって、これはもう暮らしに取り入れない手はありません。   大人の肌に、濃紫 まず手に取ったのは、「濃紫(むらさき)」。紫草の根である「紫根(シコン)」の力を宿した、高貴で深い色合いの石鹸です。肌の生まれ変わりを健やかに整えてくれるという紫根は、大人の肌のエイジングケアにも心強い味方。 「エキゾチックな香り」って、一体どんな感じだろう。 期待を込めて泡立てると、立ち上ってきたのは、どこか懐かしくも凛とした匂い。 ベルガモットのすっきりとした爽やかさの奥に、フランキンセンスの静けさや、パチョリの深い土の気配がそっと重なっている。 アロマ好きにはたまらない、思わず深呼吸したくなるような奥深さです。...

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育つ時間に、そっと寄り添う贈り物。
オクリモノ ナカマイリ

育つ時間に、そっと寄り添う贈り物。

小さなお友だちとの再会 お湯を沸かす音を聞きながら、何度も時計を何度も確認してしまう、そんなある日の昼下がり。2歳になったばかりの小さなお友だち「りっくん」が、わが家に遊びに来てくれました。 最後に会ったのは、半年前だったでしょうか。 大人にとっての半年はあっという間でも、小さな子どもにとっては、きっと世界がひっくり返るほど長い時間。 「覚えていてくれるかな」「泣かれちゃったらどうしよう」 そんな小さな不安を抱えながら待っていると、インターホンが鳴りました。 ドアを開けると、そこに立っていたのは、見違えるほど凛々しくなった「お兄ちゃん」の姿。 以前はおぼつかなかった足取りも、しっかりと自分の足で地面を踏みしめて歩いています。少し見ない間に、こんなにも大きくなって。その成長ぶりに、再会の喜びと同時にじんと胸が熱くなりました。   2歳のお誕生日おめでとう 初めてのわが家に少し緊張ぎみだったりっくん。 友人のそばをぴたりと離れませんでしたが、お菓子を食べたりお茶を飲んだりするうちに、ようやくこの場の空気に慣れてくれた様子。 その頃合いを見計らって、用意していたお誕生日プレゼントを渡しました。 小さな子への贈りものとなると、いつものプレゼント選びよりも難しく、苦戦しました。 真っ先に浮かぶのはおもちゃですが、自我がしっかりしてきた男の子となると、今の好みを正確に把握するのは至難の業。それなら、毎日気兼ねなく使ってもらえるものを。 そう思って手に取ったのが、tiny mame (タイニーマメ) のベストとバスタオルのセットでした。 2歳という時期は、きっとよく動き回りますよね。 お風呂上がりだって、じっとしてはいられないし、布団に入っても、きっと寝相も豪快なはず。 だから、大切なお腹を冷やさないように。湯冷めをしてしまわないように。 おもちゃのような華やかさはないけれど、りっくんの毎日にそっと寄り添ってほしい。 そんな想いを込めて選びました。   5歳まで着れるベスト 早速包みを開けてみると、彼は興味津々といった様子で熱い視線を送っています。 「ちょっと、着てみる?」 ベストを取り出して声をかけると、嫌がることもなく、自ら小さな腕を袖に通してくれました。 うん、サイズ感もばっちり。...

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「私らしく」いられるインナー
ナカマイリ

「私らしく」いられるインナー

素肌に触れるものにはこだわりたい 年齢を重ねるにつれて、服選びの基準が少しずつ変わってきた気がします。 デザインやシルエットももちろん大切ですが、それ以上に「着心地がよいかどうか」。特に、素肌に直接触れるインナーは、一日中身につけるものだからこそ、妥協したくないのです。 寒い時期はもちろん、季節の変わり目の寒暖差や、冷房の効いた室内でも快適に過ごせるものはないだろうか。そんなふうに着心地のよいインナーを探し続けていましたが、ようやく「これだ」と思えるものに出会えました。   呼吸する繊維「メリノウール」 それは、me.のメリノウールロングスリーブ。 “スーパーエクストラファインメリノ” と呼ばれる、とても細い糸を使ったウールインナー。奈良の職人さんが古い編み機で、ゆっくりと時間をかけて編み上げているそうで、チクチクしにくく、肌あたりがとてもやさしいのです。 もちろん、メリノならではの調温機能も素晴らしく、たとえば、厚着をして満員電車に乗ったときや、暖房が効きすぎた部屋に入ったとき、いつもなら蒸れて不快になるところが、このインナーだとサラサラしたまま。 ただ暖かいだけでなく、余分な熱を逃がしてくれるので、一日中快適で、最近はついこればかり手に取ってしまいます。   透けるほど薄いのに、頼もしい さらに驚いたのは、その「薄さ」でした。最初は、冬は少し心許ないかなと心配になりましたが、そんな心配はご無用でした。むしろ、今ではこの透け感のある薄さが、いちばん使い勝手よく感じられます。着膨れすることもなく、動きも軽やか。出張や旅先にもかさばらず、さっと持っていけるのが助かります。   ひと目惚れした、メロウ 袖口と首元の「メロウ」も、このインナーの魅力のひとつ。控えめな可愛らしさで、大人の装いにも自然に馴染みます。 カーディガンやワンピースの下から、ほんの少しだけのぞかせると、いつもの服の表情が変わり、気分も少し上がります。   水色やイエローといった明るい色も、インナーなら取り入れやすく、差し色として加えてみると、思いのほかしっくりくるのが不思議です。 鏡の前で「今日はどの色にしよう」と悩む時間も、また楽しいひとときになっています。   私の定番として このインナーはワンサイズですが、やわらかくよく伸びるので、着た瞬間から体に馴染みます。 少し食べ過ぎてしまった日でも、お腹まわりが窮屈に感じることはなく、ストレスのない着心地。 これから年齢を重ねて体型が少しずつ変わっても、その変化ごと包み込んでくれる安心感があります。 「服が私に合わせてくれる。」そんなふうに感じさせてくれるインナーです。ブランド名の「me.」に込められた「私らしく」という想いも、すっと腑に落ちました。 贈りものとしてはもちろん、これから長く付き合う自分の定番としても、手放せない存在になりそうです。

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土直漆器×アメノイエ「漆のお椀と重箱」
ナカマイリ 旅日記

土直漆器×アメノイエ「漆のお椀と重箱」

はじまりはひとつの光景から 福井県・鯖江の山あいに工房を構える土直漆器さん。ショールームには、お椀やお重をはじめ、数えきれないほどの漆器が所狭しと並んでいます。   ひとつとして同じ柄のない蒔絵のお椀がが連なり、漆の艶がほのかにきらめくその眺めは、今も鮮明に心に残っています。ただ美しいだけではなく、積み重ねられてきた歳月までも映し出すような深さがありました。 その圧巻の光景に触れたとき、土直さんの工芸の力に改めて心を打たれ、「この豊かさをたくさんの人に伝えたい」と強く思ったのです。 そうして、土直さんとともに漆器をつくらせていただくこととなりました。   ”変わらない形”がもつ強さと美しさ お椀には、布袋(ほてい)や羽反(はそり)など、昔から受け継がれてきた伝統の形があります。何百年ものあいだ姿を変えずに残ってきたその形には、先人たちが積み重ねてきた知恵が息づいているのだと思います。   そのなかで、特に惹かれたのが「羽反椀」でした。ふっくらとした丸みに、外側へわずかに広がる口元。持ったときの軽さ、手に沿うやわらかな曲線、そして口に運んだときの飲みやすさまでも想像できる佇まいです。   ふと視線を上げると、そのすぐそばに重箱が並んでいました。羽反椀のやわらかな曲線とは対照的に、まっすぐな線と面が端正な印象を醸し出し、無駄をそぎ落とすことで漆そのものの美しさを際立たせています。 こうした“普遍の美しさ”には、世代を問わず心を動かす力があると感じます。だからこそ、この伝統の形で、永く暮らしに寄り添えるうつわをつくりたいと思いました。   アメノイエの4つの漆器 今回、土直漆器さんに特別に制作いただいたのは4種類。  汁椀、雑煮椀、蓋付き椀、重箱。  お椀は、昔から親しまれてきた羽反りを、重箱は、漆の美しさが引き立つシンプルな形を選んでいます。塗りの表情には特にこだわり、新年の食卓にも日々の暮らしにもなじむよう、土直さんに何度も相談しながら仕立ててもらいました。   汁椀 毎朝の味噌汁に使いたい、汁椀。漆の軽やかな手触りと熱のやさしい伝わり方は、慌ただしい日の朝でも気持ちがやわらぐようです。日常の一杯こそ、いちばん丁寧に味わいたい。そんな思いにそっと寄り添ってくれるお椀です。 ナカマイリ / New 土直漆器×アメノイエ 汁椀 黒 くわしくはこちら →...

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菊地大護 「クリスマスからお正月へ、年末を彩るうつわ」
キセツ ナカマイリ 旅日記

菊地大護 「クリスマスからお正月へ、年末を彩るうつわ」

冬の気配とともに始まる、特別な時間 冬の澄んだ空気が少しずつ街を包みはじめ、好きな季節がやってきたことを感じる12月。街にはイルミネーションが輝き、クリスマスや年末のイベントの準備で、どこかそわそわと賑やかな気配が広がります。この季節ならではのワクワクとした空気に触れると、心が自然と弾みますね。 こうした冬の始まりに、アメノイエではガラス作家・菊地大護さんの作品をお迎えし、季節の移ろいを感じるひとときをご用意しました。クリスマスやお正月の準備で、うつわの出番がいつもにも増して多くなるこの季節。晴れの日の食卓に、美しい菊地さんのガラスをしつらえていただきたい。そんな思いを込めて今回制作をお願いしました。 きらめくガラスのうつわや酒器が、冬の光と静けさを映し込み、日々の食卓にそっと華やぎを添えてくれる時間を感じていただければ嬉しく思います。 稲刈りの季節に訪れた、新しいアトリエ 10月中旬に、完成したばかりの菊地さんのアトリエを訪れました。秋が深まりきる前、稲刈りが進む田園の中に佇むその空間は、澄み渡る空気に包まれ、どこか未来への静かな期待を感じさせる場所でした。 もともとお米の農家さんが使っていた蔵を、菊地さんがアトリエとして整えたという建物。広々とした空間に高い天井、秋のやわらかな風が抜け、室内に差し込む陽の光が作品の輪郭をやさしく照らしていました。 この日は嬉しいことに、制作風景も見せていただけることに。ガラスづくりは、吹く人と形を整える人のふたりで行うイメージがありましたが、菊地さんはおひとりで、驚くほど軽やかにこなしていきます。窯から出したばかりのガラスに向き合い、道具を使って形を定めていく姿は美しく、とても印象的でした。 ガラスがまだ熱を帯びているうちに光を透かして輝く瞬間や、金属の道具が触れたときの“カツッ”という澄んだ音、息づかいに合わせてゆらめく色のグラデーション。その光と音、そして手元の細かな動きに引き込まれ、気づけば呼吸まで自然と菊地さんのリズムに合わせるように見入っていました。 菊地さんのガラスといえば、上品でやわらかなピンク色が特徴です。この色は、ガラスを琥珀色に仕上げる“アンバー”という原料を使い、薄く吹き上げることでふわりとピンクに見えるのだとか。まさかアンバーからピンクが生まれるとは思いもよらず、ガラスの奥深さに驚かされました。 気さくでお話し上手な菊地さんは、私のリクエストにも快く応じてくださり、見たい作品を次々とその場で形にしてくださいます。 手仕事の丁寧さ 日々愛用している片口。その切れのよさは、注ぐときのストレスがなく、料理やお酒を楽しむ時間をより心地よいものにしてくれます。 仕上げの要となる口の部分は、道具を使って一気に形づくられ、その一瞬の研ぎ澄まされた集中に思わず見入ってしまいました。 口元を仕上げたあと、底につけられたガラスを外し、作品は窯の中でゆっくりと時間をかけて冷まされていきます。成形後のガラスを丁寧に冷やすことで、急激な温度変化による割れを防ぐのだそうです。 流れるように続く菊地さんの動きと、ひとつひとつの工程を確かめるように進める丁寧な手仕事。その調和の美しさに見入っていると、いつの間にか時間が経つのを忘れてしまいます。躍動感のある制作の光景に触れながら、終始心が弾むようなひとときを過ごしました。 どの作品をお迎えするか、アトリエのテーブルをお借りしてゆっくり見比べてみることにしました。どれも素敵で迷っていると、菊地さんが庭に咲く白い百合をさっと摘み、細いガラス瓶に生けてくださいました。白百合が添えられたことで、テーブルの上のガラスが陽の光を受けていっそう澄んだ輪郭を見せ、静かな輝きがふわりと広がります。 その透明な重なりを眺めながら、じっくりと作品を選ぶ時間を楽しみました。 そんな居心地のよいアトリエは、差し込む光ややわらかな秋風に包まれ、つい長居してしまうほどでした。菊地さん、素敵なアトリエを見学させていただき、ありがとうございました。 ガラスが映す、冬の光と季節のしつらえ クリスマスの温かい団欒から、年末のご馳走、新年の凛とした食卓まで、冬のさまざまな場面を彩るガラスの作品たち。 普段は涼やかな季節に使うことが多いガラスですが、抜け感のあるうつわは冬の光を受けることで表情を変え、軽やかで美しく、どこか洗練された雰囲気を運んでくれます。 年越しには酒器をしつらえて。お酒をいただく時間が、いつもより少し特別に感じられそうです。どの作品にも、菊地さんのガラスが持つやわらかな存在感と、手仕事のやさしさが宿っています。 アメノイエで、その透明な世界をぜひお楽しみください。皆さまのお越しを心よりお待ちしております。 オープンデイのご予約はこちら

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Lunef × アメノイエ -オリジナルフレグランス-
ナカマイリ 旅日記

Lunef × アメノイエ -オリジナルフレグランス-

香りづくりのはじまり 今日は、待ちに待った “自分だけのフレグランス” をつくる日。香りのブランド Lunef(リュネ)の調香師、安藤明日生(あすみ)さんが、わが家に来てくれました。友人の紹介でLunefと出逢い、その静かな世界観に惹かれて、はや半年。「いつか一緒に香りをつくりたい」という思いを明日生さんに伝えてみると、迷いなく応えてくださり、こうして今日を迎えることに。 白がよく似合う方で、この日も白いワンピースが柔らかな存在感を放っています。その凛とした佇まいに見惚れているやいなや、明日生さんは手際よく準備をはじめます。何種類もの白い布をつなぎ合わせた素敵なパッチワークのクロスをふわりと広げ、その上に小さな精油瓶をひとつ、またひとつと並べていく。さらに、細長い試香紙に精油を一滴ずつ落としていき、黒いプレートの上に円を描くように配置していく。その一連の流れは、SNSで見てきたあの光景そのままで、なんだか胸が高鳴りました。 やがて準備が整い、紙とペンが手渡されます。テーブルに並ぶのは、番号だけが記された白い紙。 「まずは、好きな香りと出会ってくださいね」と明日生さんが言います。 普段なら、精油の名前や効能に意識が向いてしまいがちですが、あえて情報を伏せることで、先入観ではなく純粋な好みと向き合ってほしいという明日生さんの意図が伝わり、私の意識も香りそのものへと向いていきました。   香りと向き合うひととき さて、21枚の芳香紙を順番に香っていきます。8番目あたりまで試していくと、気になるものがいくつも出てきて、少し迷ってしまいます。すると明日生さんが、「いくつ選んでも大丈夫ですよ」と声をかけてくれました。そのやわらかな笑顔に安心して、また次の香りへと手を伸ばします。 ただ香りだけに集中する時間が、黙々と過ぎていきます。鼻先に届く瞬間の印象、奥に残る静かな余韻。そのひとつひとつを確かめていると、全神経が嗅覚へ集まっていくようで、普段では味わえない感覚に包まれました。 すべて試し終えると、明日生さんがひと言。「紡さんは、ウッディなものがお好きなのですね。」 私が選んだ多くが、森を思わせる精油だったようです。自然が好きだからなのか、都会の暮らしの中で、知らないうちに森のような静けさを求めているからなのか。 ふっと内側を見透かされたようで、少し照れくさくなりました。   ついにかたちになるとき 選んだ精油を一滴ずつ重ね合わせていくと、単体では見えなかった陰影が浮かび上がってきます。 すっと通るような森の空気。土の渋み。奥に潜む甘さ。精油を重ねるごとに変化していく様子は、まるで目の前でひとつの物語がひらいていくようでとてもおもしろい。 けれど、「好き」を重ねただけでは、どこか惜しいのです。そんな私の中の小さな違和感を、明日生さんは言葉にしなくても察し、数滴の調整でさっと整えてしまいます。すると、すっかりその違和感は消え、複雑でありながらひとつにまとまった香りになりました。 こうして、ベースが完成です。ここからは鎌倉のアトリエで仕上げてもらうことになり、この日の作業はいったん終了。 あとは、完成の知らせを待つばかりです。   鎌倉を訪ねる 仕上がったと連絡をいただいたのは、それから数日後のことでした。 郵送で受け取ることもできましたが、明日生さんがどんな環境でアロマと向き合っているのかを自分の目で見てみたくなり、鎌倉へ向かうことにしました。 待ち合わせは、明日生さんのお気に入りのお散歩コースでもある、自然に包まれた場所。この日はよく晴れていて、まさに絶好のお散歩日和です。鎌倉駅周辺は観光客で賑わっていましたが、待ち合わせ場所へ向かう小道へ入ると景色がふっと変わります。ひと気のないその一角には、ひんやりと澄んだ空気が満ちていて、鳥たちがさえずりながら迎えてくれました。風が通ると、落ち葉がさらさらと降ってきます。見上げると、その量に思わず息をのみました。きっと、紅葉の時期ならではの光景なのでしょう。まるで“葉っぱの雨”のように降りそそぐその瞬間は、なんとも幻想的。そして、木漏れ日が差し込むたびに、景色はそっと表情を変えていきます。 その移ろいがあまりにも美しくて、気づけば夢中でシャッターを切っていました。  ...

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宮島のしゃもじを訪ねて
ナカマイリ 旅日記

宮島のしゃもじを訪ねて

木のしゃもじとの出会い 先日友人の家で見た木のしゃもじが、ずっと心に残っていました。使い込まれた木肌はほんのりと艶を帯び、手に取ると驚くほどすっと馴染む。軽くて扱いやすいプラスチックのものも増えてきたけれど、やっぱり私は木のぬくもりに触れていたいと思うのです。 どこのものか尋ねると、「宮島工芸製作所のしゃもじ」だと教えてくれました。広島出身の彼女は 「杓文字といえば広島でしょ」と得意げに話します。 広島では、しゃもじが昔から縁起物として親しまれています。「福をすくう」といわれる宮島杓子をつくり続ける宮島工芸製作所は、地元では誰もがよく知る工房で、丁寧な手仕事で長く使える道具をつくり続けています。 彼女のおばあちゃんもお母さんも、ずっと宮島工芸製作所のしゃもじを使ってきたのだとか。だから彼女にとって、この工房のしゃもじを選ぶのはごく自然なことなのです。そんな話を聞くと、使い心地のよさもきっと確かなものなのだろうと思いました。   宮島工芸製作所 ちょうど広島を訪れる予定があったので、「宮島工芸製作所」の工房を訪ねてみることにしました。島に渡る船が着くと、穏やかな海と心地よい潮風が迎えてくれます。 世界遺産・厳島神社の鳥居を望むその地に、工房はひっそりと佇んでいました。入り口には大きなしゃもじが飾られ、その姿からも長い歴史の深さを感じます。扉を開けると、木のやさしい香りがふわりと漂い、古い機械の音とともに、職人の手仕事が生み出すリズムが奥の作業場で途切れることなく続いていました。   工房に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、壁一面に並んだしゃもじやヘラたち。形も大きさも用途もさまざまで、ひとつとして同じものがありません。「闘志」「必勝」と記されたものや、記念品としてつくられたものも並び、この工房が歩んできた年月と、人々がそこに込めてきた思いが伝わってきました。 しゃもじは「メシを取る」ことから「召し取る」に通じ、戦の場では勝利祈願の道具としても扱われたといいます。その背景を知ると、壁に掛けられた一つひとつが、願いや祈りをすくってきた証のようにも見えてきました。   棚には数えきれないほどの木型が整然と並んでいます。「すしベラ」「お玉」「バターナイフ」。手書きされた文字は、油性ペンのインクが少しかすれていて、そこにもまた歴史を感じます。用途に合わせて工夫を重ねてきた職人たちの思考と経験が、ひとつひとつの型に息づいているのが伝わってきました。   使っている木は、広島県北部の山々に自生するヤマザクラ。 宮島の近くで育つ木だからこそ、良質な素材を安定して手に入れられるのだといいます。堅くて弾力があり、長く使っても歪みにくいのがこの木のよさで、使い込むほどに赤みと深みが増していきます。その変化はまるで、自分だけの道具へと育っていくようで、ますます魅力的に感じられました。   一本の木から生まれるかたち 静かな空間には、木地を切る音や削る音が心地よく響き、淡い木の粉がふわりと舞っています。 工房の片隅では、職人さんが一枚の板を机に置き、鉛筆でしゃもじやヘラを型取りはじめていました。木目を読みながら、どの部分が持ち手になり、どの部分がすくう面になるのか、迷いのない動きで描いていく姿は、まるで木と対話しているよう。一枚の板にパズルのようにびっしりと型が描かれていく様子は、“木を余すことなく使いきる”という、この工房の流儀そのものだと感じました。   描いた線に沿って板を切り進めると、木の中からしゃもじやヘラのかたちが現れてきます。切り抜かれた木地は、まだ角ばったまま。   そこから職人さんが型を当てて厚みを調整し、丸みを削り出していくと、だんだん私たちの見慣れた道具の姿へと近づいてきました。木地と向き合うその背中には、積み重ねてきた年月と、ものづくりへの情熱がにじんでいます。 削りの工程が終わると、木地は研磨の職人さんのもとへ渡ります。ここからは、道具としての表情を整えるために、ひたすら木地と向き合う時間のはじまりです。   研磨前の木地に触れると、木そのものの息づかいがまだ残っているような、少し荒々しい手触りがあります。まず、粗い番手の紙やすりで形を整え、次第に細かな番手へと移りながら、ざらりとした面を丁寧に落としていく。「ここまでやるのか」と思うほど、何度も、何度も。そうしてようやく、手のひらにすっと吸い付く、あのなめらかさが生まれてくるのです。  ...

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ぬくもりをまとう私の冬支度
イマ ナカマイリ

ぬくもりをまとう私の冬支度

冷たい風を感じる季節。気づけば、ソファの上はブランケットの定位置に。朝の目覚めの時間も、夜の読書の時間も、そのやわらかなぬくもりに包まれています。長く愛用しているコットンウールと、新しく迎えた軽やかな三重ガーゼ。そんな私の冬支度のお話です。

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