ヒビノコト

「アメノイエの住人」雨野紡が日々の暮らしを綴る日記です。
家の中での過ごし方や産地での出会いをこちらでご紹介します。

ヒビノコト

うつわに描かれた物語をひらく
キセツ チャノマ

うつわに描かれた物語をひらく

食器棚の模様替え 関東もいよいよ梅雨入り。 しばらくは雨模様かと思いきや、天気予報を見ると向こう数日は貴重な晴れ間が続くみたいです。窓を大きく開けて風を通しながら、このお天気のいいタイミングで食器棚の模様替えをすることにしました。 冬のあいだ、あたたかみを与えてくれていたぽってりとした土もののうつわを奥へ。 代わりに、涼やかな磁器を手前へと並べ替えていきます。 雨の日が続くこの季節は、洗ったうつわがなかなか乾かず、少し気を遣う時期。その点、白磁のうつわは水切れがよく、布巾でサッと拭けばすぐに乾いてくれます。このじめじめとした季節、白磁はとても心強い味方なのです。  一番手の届きやすい特等席に並べたのは、渓山窯のそば猪口。渓山窯さんのそば猪口は絵柄のバリエーションがものすごく豊富で、その数はなんと100を超えるのだとか。モダンなものから、思わずくすっと笑ってしまうような遊び心のあるものまであるから、つい目移りしてしまいます。そのなかから、少しずつ集めたわが家のお気に入りたち。  ずらりと並んだ柄を眺めながら、さて、今日はどれを使おうか。 その日の気分でうつわを選ぶこの時間も、小さな楽しみのひとつです。   水面を覗き込むような「網目と赤い魚」  模様替えで少し動いたせいか、なんだか冷たいものが食べたくなって。 今日のお昼は、さっぱりとしたざる蕎麦の出番です。 これからの季節の昼食は、ざる蕎麦、そうめん、冷やし中華と、冷たい麺がローテーションで登場します。  選んだそば猪口は、染付の揺らいだ網目に、赤い魚たちが描かれた絵柄。 まるで今にも泳ぎ出しそうな上絵付の魚たちと、ぷかぷかと浮かぶ水草がなんとも愛らしいのです。 網目には「福をすくい取る」という意味があるともいわれ、たくさんの魚が描かれたこの絵柄からは、どこか豊かな実りの景色も感じられます。  冷たいめんつゆを注ぐと、白磁の余白が水面のように広がり、魚たちがその中を泳いでいるかのよう。涼やかな水辺をそっと覗き込んでいる気分になります。 つるりとした口当たりと、目にも涼しい絵柄は、じめじめとした梅雨の時季にもぴったりです。   いつもの甘味が特別になる「七宝柄」 おやつの時間。 冷蔵庫にあったフルーツと寒天を合わせて、簡単なみつまめに。 盛り付けは、円が連なる「七宝(しっぽう)」柄のそば猪口を選びました。七宝柄には、円が四方にどこまでも繋がっていくことから、「円満」や「豊かなご縁」が続くようにという願いが込められているのだとか。 渓山窯さんはもともと宮内省にうつわを納めていた窯元さんだけあって、こうした古典的な柄の美しさは、やはりすばらしいなと惚れ惚れしてしまいます。 そば猪口というと、そばつゆのうつわという印象がありますが、わが家ではこうしてデザートカップとして使うことも。規則正しい幾何学模様と白磁の凛とした雰囲気が品を添えてくれ、いつもの甘味も、どこか晴れやかな気持ちで味わいたくなります。   湯気の向こうに咲く「椿となずな 」 雨の日は、夕方になると少し肌寒さを感じることも。...

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涼を呼ぶガラスのうつわたち
キセツ チャノマ

涼を呼ぶガラスのうつわたち

初夏の光をガラスとともに  5月も終わりに近づき、日ごとに夏めいてきました。陽射しが強くなるこの季節、手に取りたくなるのがガラスのうつわたちです。 光を受けてきらりと揺れる姿や、冷たい飲み物を注いだときの涼やかな表情。ガラスのうつわには、暑さを心地よさへと変えてくれるような魅力があります。 最近は、食卓を見渡すとガラスのものが増えてきたように思います。わが家にも、一足早く夏が訪れているようです。   朝の光が似合う小さなボウル   ヨーグルトにグラノーラをかけたり、サラダをさっと盛り付けたり。 そんなごく簡単なメニューでも、木村硝子店さんの「サンサボウル」に盛るだけで、いつもの食卓の空気がすっと涼やかに整うのです。 落ち着いたスモークグレーのうつわを朝の光にかざしてみると、ガラスの中に浮かぶ無数の小さな気泡が光を宿して、きらきらと瞬きます。 澄み切った透明なガラスとは少し違う、やわらかな風合い。そんな独特の質感と、この丸みのあるぽってりとした形のおかげでしょうか。ガラスなのにどこか温かみがあって、かしこまらずに普段使いできるところが気に入っています。   夕暮れのワインと「キソ」 18時を過ぎても外はまだ明るい。 こんな明るいうちに飲む、冷えたワインは格別です。 一日の長さは同じはずなのに、なんだかいつもより長く満喫できているような感覚になるのは私だけでしょうか。 そんな穏やかな夕暮れ時に寄り添ってくれるのが、木村硝子店さんの「キソ」。 本格的なハンドメイドのワイングラスでありながら、気取りすぎていないところがお気に入りです。 ステムが長すぎず安定感があるので、気負わずに使えるのが嬉しいところ。 それでいて、極限まで薄く作られたガラスは華奢で凛としていて、夕方の光に透ける姿まで美しい。  張りきって料理をした日だけでなく、簡単な夕飯のときも、このグラスがあるだけで十分満たされた気分になれるのです。 極薄の口当たりはとても心地よく、贅沢な余韻を残してくれます。   光を通して表情を変える「tatesuji」 菊地大護さんの「tatesuji」は、うつわとしてはもちろん、オブジェのような佇まいもまた素敵です。細い縦筋に沿って光が揺れて、テーブルの上に美しい影を落とします。 このうつわをわが家に迎えたのは、まだ空気の冷たい冬のころでした。冬の澄んだ光の中では、静かで凛とした印象があったのですが、初夏になった今見ると、また少し違って見えます。強くなった陽射しを受けて、ガラスがきらきらと光を通している姿。同じうつわなのに、季節によってこんなにも表情が変わるんだな、と最近また手に取ることが増えたように思います。   以前、菊地さんの工房で制作の様子を見せていただいたときのこと。 オレンジ色に熔けた熱いガラスが、型の中で息を吹き込まれることで、あの美しい縦筋の模様が写し取られていく。その光景は、今も心に焼き付いています。 菊地さんの息遣いや工房の熱気を肌で知ってから、このうつわがより愛おしく思えるようになりました。 涼しげなガラスの奥に、どこかじんわりとした温度を感じる理由は、きっとあの場所の空気を知っているからなのだと思います。 ...

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あり合わせでごちそうを
ダイドコロ チャノマ

あり合わせでごちそうを

冷蔵庫と相談 休日の午前中。 残っていた仕事を家で片付けてパソコンを閉じると、時刻はもうお昼を回ろうとしています。 ここ最近の慌ただしさからふっと解放されて、今日はどこへも出かけず、このまま家でゆっくりと過ごしたい気分。家にあるもので何か美味しいものは作れないかと、冷蔵庫と相談です。  そろそろ使ってしまいたい玉ねぎや人参、それに使いかけの鶏肉が残っていました。戸棚の奥で目が合ったのは、いつか買ったトマト缶。  「よし、野菜たっぷりのトマトカレーを作ろう」  からだが求めているのは、こういう栄養満点の一皿かもしれません。 そうと決めたら、無水鍋を取り出します。  私が愛用しているのは、HALムスイの20cm。二人暮らしにちょうどいいサイズです。 我が家に迎えて1年が経ちましたが、「炊く・蒸す・煮る・茹でる・焼く・炒める・揚げる・天火」なんでもこなす万能選手で、すっかり頼れる相棒になりました。   野菜の栄養を閉じ込める この鍋の良さは、やっぱりその名の通り「無水調理」ができること。 厚みのあるアルミ鋳物が熱をしっかりと閉じ込め、強火で煮立てずとも、やさしい熱で食材全体を均一に煮ることができ、素材を壊さず、本来の栄養を引き出せるのです。 まずは中火弱でじっくり予熱を。 食材をくっつきにくくするための、大切なひと手間です。 指先につけた水滴を落とし、丸い水玉になって転がるのを確認したら、準備万端のサイン。 オリーブオイルににんにくを入れて香りを立たせ、あり合わせの鶏肉と野菜を炒めたら、そこへトマト缶を余さず入れます。水は一滴も足しません。 材料をすべて入れたら、ずっしりとした蓋を閉めます。 隙間なく吸い付くように合わさる感覚に、職人技の精緻さを感じる瞬間です。 この「蒸気密封」こそが、栄養素を逃さないための鍵。 水に溶け出しやすいビタミンやミネラルを外に逃がさず、素材同士の旨みとともに鍋の中で調和していきます。  蓋が小さな音を立て始めたら沸騰の合図。あとは火を弱めて、30分ほど鍋におまかせです。   炊き置きごはんと、私の習慣  カレーを煮込んでいる間に、ご飯の準備に取り掛かります。 実は白米も、昨日この無水鍋で炊いたもの。数日分をまとめて炊いてストックしておくのが、我が家のリズムです。 もともとお米を炊くために開発されたというだけあって、その実力は折り紙付き。浸水させてから火にかけて10分、そのまま10分蒸らすだけで、あっという間にふっくらと炊きあがります。 土鍋ご飯も好きなのですが、仕事の日など日常使いには、この無水鍋が活躍することが多いです。  ...

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つい手に取ってしまう、小皿のはなし。
チャノマ

つい手に取ってしまう、小皿のはなし。

つい集めてしまう理由 食器棚を開けると、いつの間にか増えている小皿たち。窯元さんに制作いただいたものや、旅先で出会ったもの。重なり合ううつわを眺めていると、それぞれを迎え入れた日のことを思い出します。 そんな私の「小皿好き」の根っこには、実家の食卓の記憶があるのかもしれません。 子どもの頃、実家の食器棚には家族の人数分揃った取り皿がいくつも並んでいました。夕飯の時間になると、母がそれらを取り出して、おかずを一つひとつ丁寧によそってくれる。うつわ好きだった母が選ぶ一枚一枚で、食卓の景色が少しずつ変わっていくのを眺めるのが、子ども心に楽しみでした。 そんな記憶が染み付いているからか、私自身もすっかりうつわが好きで、特に小皿にはつい手が伸びてしまいます。 大きな皿は、収納場所や使い道を考えてつい慎重になりますが、小さな皿なら「いいな」と思えるものに出会うたびに、つい気軽に迎え入れてしまいます。重ねてしまえば場所も取らず、副菜からお菓子まで何にでも合う。 そんな自由さが、つい集めてしまう理由なのだと思います。   食卓にリズムを、もてなしの小皿 ワンプレートで手軽に済ませる日もありますが、いくつかの小皿が並ぶ食卓は、それだけで視覚的なリズムが生まれて、景色が華やぎます。 友人たちを招くことがよくありますが、大皿の料理をそれぞれが自分の小皿へ移し、お喋りしながら自分のペースで味わう時間は、もてなす側の私にとっても気負いがなくて心地いいものです。 5寸前後のサイズは、取り皿としても副菜用としても一番使い勝手がよく、いくつあっても困りません。お気に入りが少しずつ増えるたびに、次のおもてなしではどんな組み合わせで並べようかと、そんなささやかな計画を立てるのも、私の密かな楽しみになっています。    おやつの時間を心地よく 私が日常でよく手に取るのが、「fog プレート 15cm WHITE」です。 ほんのりとグレーを帯びた、霧がかったようなやわらかな白。シンプルでありながら食卓に静かな落ち着きを添えてくれます。 艶やかなブルーベリータルトをのせてみると、うつわの白が果実の深い色を引き立てて、それだけで自然とテーブルの上が整った印象になります。 一人の時間に、淹れたての珈琲と一緒に自分だけのために使うのにも、ちょうどいい一枚です。   磁器で愉しむ、多彩な表情 磁器の小皿は、なめらかな質感と端正なフォルムが、のせたものを品よく見せてくれます。 柏餅をのせてお茶を淹れる午後。涼やかな白磁が柏葉の緑を引き立て、慌ただしい日常のなかに静かな時間が流れるのを感じます。   夜になれば、そのまま晩ごはんの食卓へ。菊割や四稜など、形の異なる小皿を並べるのも楽しみのひとつです。和え物やお刺身はもちろん、洋の食材を合わせてもすんなり馴染むのは、磁器ならではの懐の深さ。  汚れが落ちやすく扱いやすい頼もしさもあり、気負わず毎日のように手に取っています。   シーンを問わず使えるうつわ...

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漆で愉しむ、桃の節句。
キセツ チャノマ

漆で愉しむ、桃の節句。

桃の花に、せかされて あっという間に二月も終わろうとしています。仕事帰りにふらりと立ち寄った駅前の花屋には、まだ冷たい風のなか、春の枝ものがずらりと並んでいました。中でも目を引いたのは、鮮やかなピンク色の桃の花。まだ冬の気配が残る景色の中で、季節が静かに動き出していることを教えてくれるようでした。 ちょうど見頃を迎えた華やかな枝に惹かれつつも、手にとったのはまだ蕾の多いもの。家のなかで少しずつほころんでいく様子を眺めたかったからです。 「桃の節句」は、もともと季節の変わり目に邪気を払う行事なのだとか。子どもの成長を祝うイメージが強いですが、大人になった今でも、自分のために季節の節目を整える日として大切にしたいなと思うのです。 節句は来週ですが、当日は仕事の予定。 ゆっくり食卓を整える時間が取れそうになかったので、今年は少し早めに楽しむことにしました。   暮らしに馴染んできた、漆器たち せっかくの節句なので、今日はお気に入りの漆のうつわで食卓を彩りたいと思います。キッチンの奥の棚から取り出したのは、お正月以来となるお重と漆器椀。蓋をそっと開けると、ほのかに漆の香りが立ち上ります。迎えたばかりの頃のツンとした漆の香りはすっかりやわらいでいました。そんな些細な変化に、道具がわが家の暮らしに馴染み始めている実感が湧いて、なんだか嬉しくなります。 少し小さいかなと思っていた15cm角のお重も、ふたり暮らしには本当に使いやすく、特別な日には欠かせない存在になりました。 今回は、春の華やかな色味をどのように受け止めて、そしてどう映えさせてくれるのか。黒漆のなかに広がる景色を想像するだけで、わくわくしてきます。   黒いお重に映える、ちらし寿司 メインは、やっぱりちらし寿司。 マグロ、サーモン、鯛、いくら、きゅうり、玉子。 食材の色のバランスを確認しながら均等なサイズに揃えていきます。 ちらし寿司は、盛り付けのバランスがすべて。仕切りのない自由なお重の空間に、どう彩りを配置していくか。それは、真っさらなキャンバスに絵を描く作業によく似ています。 微調整しながら、四角い枠の中に少しずつ春を埋めていきます。 吸い込まれるような黒漆の地色は、昼の光の下で食材の色彩を驚くほど鮮明に浮かび上がらせてくれ、まるで宝石箱のようです。黒という色は、一見重厚ですが、最高の「引き立て役」なのだと改めて思います。   はまぐりと菜の花のお吸い物 お重の隣には、はまぐりのお吸い物を添えました。 少し早いこともありお店に並んでいるか不安でしたが、いつものスーパーを覗くと、立派なはまぐりを見つけて迷わずかごに入れたものです。   味付けはシンプルに。昆布とはまぐりから出る出汁に、お酒とお塩をひとつまみだけ。火にかけてしばらくすると「パカッ」と元気な音を立てて殻が開き、ふわりと磯の香りが立ち上ります。 ここに菜の花も加え、やさしいながらも深みのある味わいは、調味料では表現できない、まさに春の一杯です。   少し残った菜の花はお浸しにしていただきます。今回の菜の花はとても新鮮だったようで、苦みが驚くほど少なく、瑞々しさが際立っていました。   季節の移ろいを愉しむ、お茶の時間 食後は、お気に入りの急須でお茶を淹れ、お重のもう一段に忍ばせておいた春の和菓子を堪能しました。あたたかいお茶とたわいもない話でゆったりと過ごす、心ほどけるような午後の時間。...

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光を淹れる、日ノ出ガラスポット
ダイドコロ チャノマ

光を淹れる、日ノ出ガラスポット

春の気配とともに 先日、友人に誘われハーブガーデンを訪れました。少しずつ春をまといはじめた空気のなか、やわらかな陽射しが降り注ぐ園内へ足を踏み入れて大きく深呼吸すると、都内では味わえない澄んだ香りが胸いっぱいに広がります。 天井の高いハウスの中には、緑の道がゆるやかに続いていました。葉の揺れる音や土の匂い、ところどころに差し込む光を感じながら歩いていくと、奥に明るく開けたグロッサリーコーナーがあらわれます。 棚いっぱいに並ぶハーブやスパイス。どこから見ようか迷ってしまうほどの充実ぶりです。 茶葉をひとつずつ確かめるたび、香りの向こうに過ごす時間が思い浮かびます。ジャスミンの豊かな香り、レモングラスの清々しさ、和柑橘のほろ苦い余韻。これからの日々に寄り添う場面を想像しながら、いくつかをお土産に選びました。 愛用のガラスポットの中で、色や香りがほどけていく様子を思い浮かべると、 思わず頬がゆるみます。   茶葉の色と対流が美しく見える、ガラスの魅力 ガラスのポットを使ういちばんの愉しみは、茶葉の表情をそのまま眺められること。湯を注いだ瞬間、眠っていた葉がふわりと目を覚まし、ゆっくりとひらきながらやわらかな流れをつくっていきます。 透明なうつわのなかで光を受けながら巡るその動きは、小さな水の景色を見ているよう。お茶の色はゆっくりと深まり、グラデーションを描いていきます。ゆらりと揺れる茶葉を眺めていると、不思議と呼吸まで整っていくのです。 そして、ガラスという素材の潔さ。香りが移らず、前の一杯の記憶を残さないからこそ、その日の茶葉の個性をまっすぐに受け止めてくれます。 飲む前の支度だったはずの時間が、淹れることから愉しませてくれる。日ノ出ガラスポットは、そんな小さな豊かさを教えてくれる存在です。   今日のお茶はどれにしよう? 選ぶ楽しみ 朝、ポットを食卓に置くと、その日の気分に合う香りを探すように棚を眺めます。茶葉を手に取るたび、湯気の向こうに過ごす時間が思い浮かび、まだ淹れていないのに気持ちが軽くなっていきます。 ジャスミンの花が入った茶葉を選んだ日は、ほんのり甘いエクレアを添えて、ゆっくりとした午後のティータイムを。花の香りが湯気とともに立ちのぼり、なめらかなクリームの余韻と重なります。窓からの光もやわらかくて、時間まで甘く感じられるようでした。 またある日は、きりっと爽やかなレモングラスを。アップルパイを温めて、すっきりとした香りと合わせます。りんごのやさしい酸味とハーブの清涼感が心地よく、気持ちまで整っていくような組み合わせ。 そして在宅の日の午後には、黒文字と和柑橘のノンカフェインティー。静かにデスクへ向かいながら、ふと立ちのぼる香りに肩の力を抜いてもらいます。 お茶を選ぶことは、その日の自分を選ぶことなのかもしれません。   日常に寄り添う、日ノ出ガラスポットという存在 日ノ出ガラスポットは、ただお茶を淹れるための道具、というだけではない気がしています。 透明な佇まいは主張しすぎず、それでいて確かにそこに在り、朝の光も午後の影もそのまま受け止めながら暮らしの景色にすっと溶け込みます。 湯を注ぎ、茶葉がひらき、ゆっくりと巡る。その動きを眺めていると、一杯のお茶の中に、その日の気分や空気がそのまま映り込んでいるように思えるのです。 忙しい日も、少し気持ちが揺れる日も、そのゆらぎを見つめているうちに、急いでいた心がほどけていく。気がつくと、いつもの自分の調子に戻っているように感じます。 香り、色、動き。五感で味わう時間は、決して特別な日のためだけのものではなく、むしろ、何でもない一日をやさしく照らしてくれるもの。 今日もまた、棚の前で立ち止まりながら、「さて、どれにしよう」と小さく考える。そんな時間ごと、このポットは受け止めてくれているのだと思います。  

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愛用のミルと、中華ランチ
チャノマ

愛用のミルと、中華ランチ

ある休日の昼支度 休日の午前中は、時間の進み方がいつもより少しだけ緩やかです。 洗濯を回して、読みかけの本をめくっていたら、いつの間にかお昼どき。お腹の時計は正直なもので、そろそろ何か美味しいものを求めて主張し始めます。 そのとき頭をよぎったのは、先日訪れたお店で出会った、あの麻婆豆腐のこと。 テーブルの横に置かれた山椒と花椒をひと振りした瞬間、鼻を抜ける鮮烈な香りと痺れるような美味しさに、すっかり心を奪われてしまいました。 「あの味を、おうちでも再現してみたい」 そんな思いで手に入れた花椒の粒。キッチンに立ち、その袋を開けたとき、ふと視界に入ったのが、コンロ脇の定位置にいる「木工ヤマニ」さんのペッパーミルでした。 以前ご紹介した、私の頼もしい相棒です。 ヒビノコト Vol.63 胡椒好きの手が生んだ、香りの道具 これまでは「ブラックペッパー専用」として活躍してくれていましたが、迎えた時に作り手の内山さんが仰っていた言葉を思い出しました。  「ブラックペッパー以外にも、山椒やコリアンダーシードも挽けるんですよ。」 それなら、この花椒も挽けるのでは…。 今日はこのミルに活躍してもらい、中華ランチで決まりです。   花椒を挽いてみる まずは、花椒の挽き心地を確認してみます。 ちょうどブラックペッパーをすべて使いきっていたので、ミルの中は空っぽ。いいタイミングでした。 詰まりがないか確認してから、花椒を入れます。 「大きさは5mm以下、よく乾燥したもの」注意書きを見返しながら、パラパラと流し込みます。 スパイスの形状や硬さによっては、引っかかったり、空回りしてしまうこともあるそうですが、 私が愛用しているこの花椒はどうでしょうか。 少し緊張しながら、まずはつまみねじを締め細挽きしてみます。 手応えはいつもの通り、拍子抜けするほど滑らかです。愛用の花椒とは相性が良かったようで、引っかかることもなく、スルスルと挽けました。 つまみねじを反対側に回し、今度は粗挽きに。こちらも全く問題なさそうです。   あっという間に、中華な食卓 挽き心地もしっかり確認できたので、さっそく調理開始です。 今日はパートナーも手伝ってくれたので、準備はあっという間でした。私が麻婆豆腐を作っている横で、彼がサラダを仕上げてくれます。...

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健やかな一年を願う七草粥
キセツ ダイドコロ チャノマ

健やかな一年を願う七草粥

日常へ戻る合図 お正月の賑わいがひと段落し、 家の中にも「いつもの時間」が戻ってくる頃。一月七日の朝は、七草粥を炊くことから始まります。 無病息災を願う、年はじめの習わし。ご馳走続きで少し重たくなっていた身体を休め、これから始まる一年を健やかに過ごすための、大切な区切りです。 どこか浮き足立っていた気持ちが、七草粥と向き合ううちに、少しずつ地に戻っていく。 背筋をしゃんと伸ばし、あらためて年の始まりに立つような朝です。   知ることで深まる冬の滋味 せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。 名前はようやく覚えましたが、意外と見分けが難しくて。「これは……なずな、かな?」そんなやり取りを、毎年パートナーと交わしている気がします。 どれがどの葉もので、どんな効能があるのか。 シンプルな料理だからこそ、ひとつひとつの意味をきちんと理解してからいただきたい。パッケージのイラストと照らし合わせたり、ネットで検索してみたり。 ちゃんと「知る」というひと手間を経てから口にすることで、七草粥はただの習慣ではなく、自分の中にしっくりと残る一膳になる気がするのです。   お粥を炊く お粥を炊く日は、自然とカネダイの行平鍋に手が伸びます。二人分がちょうどよく収まるサイズ感で、熱をじんわり通すその性質も、お粥を炊くのにぴったり。 昆布で出汁をとり、お米を入れて火にかけます。 強く沸かさず、鍋の中の音に耳を澄ませながら、その間に七草の下ごしらえをします。   ほどなくしてお粥が炊き上がったら、火を止め、下茹でして刻んだ七草と、ひとつまみの塩を加え、やさしく混ぜ合わせたら完成です。   今年も健やかに過ごせますように あたたかいうちにいただきます。一口食べるたびに、温かさが身体中にじんわりと広がり、自然と気持ちもほぐれていきます。賑やかな食卓が続いていた今の身体には、この素朴でやさしい味わいが、一番の贅沢に感じられますね。  みなさんは、もう七草粥を召し上がりましたか。 旬の食材の力を借りながら、心と身体の調子をゆっくり整えていきたいですね。

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あけましておめでとうございます
チャノマ

あけましておめでとうございます

旧年中は、たくさんの出会いに恵まれ、心より感謝しています。人と人が顔を合わせることで、見えてくるものがある。そんなことを、あらためて感じた一年でした。本年も、ひとつひとつの出会いを大切に重ねていけたらと思っています。 元日の朝は空気がすっと澄んでいて、台所に立つ時間もいつもより特別に感じられます。 街がまだ目を覚ましきらないうちに、お湯を沸かし、うつわを並べ、ゆっくりと年のはじまりを迎えました。   初めての手作りおせち これまでは仕事柄、毎年いろいろなおせちをお取り寄せしてきました。けれど今年は、土直漆器さんに仕立てていただいた重箱を使い、人生ではじめて、おせちを手作りしてみることに。 年末におせちと向き合う時間は、 一年の締めくくりのようで、自然と背筋が整います。 おせちは、年神様をお迎えして 新しい年の健康や幸福を願うための料理ですが、  三が日をゆっくり過ごせるよう、  日持ちのするものをあらかじめ用意しておく、  そんな暮らしの知恵でもあったそうです。日持ちさせるために、  抗菌の力があると言われる漆のお重が使われてきたのだと、  自分の中で、腑に落ちた気がしました。 子どもの頃は、「お正月におせちは当たり前に出てくる食べ物」くらいに思っていましたが、大人になってその背景を知り、実際に自分の手でつくってみたことで、以前よりも丁寧におせちに向き合えるようになった気がしています。   わが家のお雑煮 お正月に、もうひとつ欠かせないのが、お雑煮です。 お雑煮は、地域や家ごとに、味も具材も本当にさまざま。澄ましだったり、味噌だったり。丸餅だったり、角餅だったり。 お正月に、土地の違う人と話す機会があると、つい「どんなお雑煮を食べますか?」と聞きたくなってしまいます。これまで出会ってきた人の中には、地域の特徴を組み合わせながら、その家庭ならではのお雑煮をつくっている方もいました。そんな何気ない会話の中から、その人が育ってきた場所や、家の台所の風景が垣間見えるのも、なんだかおもしろいのです。   今年も、暮らしの中から こうして年のはじまりを迎え、 さまざまな作り手の方たちと一緒につくったうつわでしつらえた食卓を囲む時間は、より一層特別に感じられます。年々、こうしたものが少しずつ増えていき、暮らしが充実していることを実感できるのも、またうれしいことです。 今年も、一つずつ、心から素敵だと思えるものに出会いながら、日々を豊かに過ごしていきたい。そして、オンラインだけでなく、たくさんの出会いを思い描きながら、直接お会いできる場も用意していけたらと思っています。 みなさんにとっても、穏やかで、実りある一年になりますように。 本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

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気心知れた友と囲む、冬のごちそう
キセツ ダイドコロ チャノマ

気心知れた友と囲む、冬のごちそう

 旧友と会う約束をした日のこと ある日の午後、電話が鳴りました。画面に映った名前を見た瞬間、胸が高鳴ります。学生時代の友人からでした。出張で東京に来るとのことで、久しぶりに会う約束をすることに。 彼女と会うのは、いったい何年ぶりでしょう。せっかくなら、わが家でゆっくり話したい。そう思い、家に招いておもてなしをすることにしました。気づけば、もうすぐクリスマス。ちょうどいい機会なので、テーブルもほんの少し季節感を出して、ちょっと早いクリスマスパーティーにしようと思います。 そうと決まったら、まずはテーブルコーディネートを考えるところから。つい最近新調した白いリネンのテーブルクロスを広げると、部屋の空気がふわっと明るくなりました。棚からうつわを取り出し、テーブルの上で並べてみると、fogやmaraisのうつわたちもいつもとは違う表情に見えて新鮮です。 「この組み合わせはどうだろう」「いや、こっちのほうが合うかも」あれこれ相手の顔を思い浮かべながら考えている時間は、心がぽかぽかとして幸せな気持ちになれますね。あとは、何を作ろうか。そこがいちばん悩ましいところです。   フライパンで作る魚介のパエリア メインは魚介にしようと決めていました。彼女は昔から、お肉よりも断然シーフード派。お魚はもちろん、エビや貝類が好きだったことをよく覚えています。 そこで、ずっと試してみたかったパエリアに挑戦することにしました。きっとたくさん食べるだろうと、思い切ってお米は2合。普段から愛用しているやまごの鉄フライパンで早速調理に取り掛かります。専用の蓋は持っていなかったのですが、KING無水鍋20cmの蓋がまさかのシンデレラフィットで、その収まりの良さについひとりで笑ってしまいました。火を入れていくと、魚介の香りがゆっくりと部屋に広がっていきます。 2人で2合はさすがに多かったものの、22cmの鉄フライパンでも問題なくきれいに炊き上がりました。次は1.5合くらいがちょうどよさそうです。   冬を感じるスズキのカルパッチョ もう一皿は、お魚で軽やかにまとめたい。そうなると、やはりカルパッチョでしょうか。 そのとき、ふと鎌倉で見かけた金柑の木の記憶がよみがえりました。冬の光を受けてつややかに輝いている実を眺めながら、「金柑のスライスをのせたカルパッチョを作ってみたい」と思いつつも、まだ試せずにいたのでした。 八百屋さんをのぞいてみると、ちょうど金柑が並びはじめたところで、まだ小ぶりながら張りのある実が並んでいます。迷わず手に取って、家に連れて帰りました。家で切ってみると、やはり出始めだからかワタは少し多め。ですが、ひと切れ味見すると苦みはほとんどなく、甘みと香りがふわっと立ちます。ワタのやわらかな食感もよく、カルパッチョの良いアクセントになってくれそうで、嬉しくなりました。 合わせる魚は旬のスズキ。身がきゅっと締まり、透き通るような白さが冬らしくて美しいです。 薄くスライスした金柑を重ね、オリーブオイルをたっぷりまわしかけ、粗挽きソルトをひとふり。仕上げに紫スプラウトを添えると、「冬を感じるカルパッチョ」の完成です。 盛りつけには、fogのホワイトプレートを選びました。淡い白のうつわの上で、金柑のオレンジとスズキの透明感がより一層引き立ち、冬のテーブルに馴染む一皿になりました。   絶対に外せないマッシュルームとパクチーのサラダ  これは、私がずっと好きで作り続けているマッシュルームとパクチーのサラダ。 スライスしたマッシュルームに、ざくざくと刻んだパクチーを合わせるだけのとてもシンプルな一品ですが、パクチー好きの私には最高の組み合わせで、ひたすら食べ続けられるほど。ドレッシングは、バルサミコ・醤油・オリーブオイル・にんにく・塩を混ぜたものを用意しました。仕上げに削ったチーズをかければ完成です。   少し多めに作ったドレッシングで、冷蔵庫に残っていた食べごろのアボカドも和えてみました。とろりと絡んだアボカドは、同じドレッシングとは思えない仕上がりに。   紫キャベツのマリネ 箸休めには、紫キャベツのマリネを選びました。先日のランチで、ワンプレートの端にそっと添えられていたもので、その鮮やかな紫色と、あと口のさっぱりした味わいが心に残っていて、いつか家でも作ってみたいと思っていたのです。 味の記憶を頼りに、ホワイトビネガーに塩・こしょうを合わせてマリネ。少し時間を置いてなじませると、紫キャベツの色がいっそう明るく変わっていきました。ひと口味見してみると、思わず「これだ」と声が漏れます。   オレンジやグリーン、イエローが集まるテーブルに、紫が加わると、ぐっと大人っぽい冬の食卓に近づきました。...

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ひらく光と抱く光
イマ チャノマ

ひらく光と抱く光

ここ最近、部屋の明かりが少し物足りなく感じることがありました。 日が暮れて灯りをつけても、どこか“明るいだけ”な気がして、夜の静けさの中に、もう少しだけやわらかい温度がほしくなったのです。 そんなときに出会ったのが、3RD CERAMICSさんのペンダントランプ「time」。ラッパの灯りが日々の動きを照らし、しずくの灯りがその余韻を包み込む。ふたつの「time」は、それぞれの光で暮らしの中に静かなリズムをつくり出しています。

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土鍋でつくる、秋のごはん
キセツ ダイドコロ チャノマ

土鍋でつくる、秋のごはん

お鍋が美味しい季節になりました。今日はお休みなので、夜はあたたかい鍋を囲もうと決めていました。頭の中に浮かんでいたのは、大根の鬼おろしをたっぷり入れたみぞれ鍋。体の芯までほっと温まるような、あのやさしい味が恋しくなったのです。 食材を買いに出かけると、季節の終わりとは思えないほど立派な栗に出会い、せっかくなので、お昼は栗ご飯を土鍋で炊くことにしました。 一日中、土鍋と過ごす。そんな日も、いいものです。

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