ひらく光と抱く光

ひらく光と抱く光

新しい灯り「time」

ここ最近、部屋の明かりが少し物足りなく感じることがありました。
日が暮れて灯りをつけても、どこか“明るいだけ”な気がして、夜の静けさの中に、もう少しだけやわらかい温度がほしくなったのです。
そんなときに出会ったのが、3RD CERAMICSさんのペンダントランプ「time」。
白磁のランプシェードを透かして届く光は、まさにその名の通り、時の流れをゆるやかに照らしてくれます。

届いた箱を開けると、愛用しているフラワーベースに少し似た、さらりとした白磁の質感が目に入ります。薄くかけられた透明釉がほのかな艶をまとい、光をやわらかく返してくれます。つるんとしているのに、どこか温かい。
その“白すぎない白”が、まさに求めていたものでした。

我が家には、ラッパのように光をひらく形と、しずくのように光を包む形、ふたつの「time」を迎えました。同じ素材でありながら、表情はまるで違います。
この灯りたちとともにどんな時間を過ごせるのか。
そんなことを思いながら、ひとつずつ吊るしていきます。

 

ラッパ - 光をやわらかくひらく

ラッパの形をした「time」は、届く前からダイニングに吊るそうと決めていました。食卓の上に灯りを迎えるなら、この形がいちばんしっくりくる気がしたのです。

早速つけてみると、新入りとは思えないほどの馴染み具合。
モルタルに木のテーブル。その上に、やわらかな白のランプがすっと馴染みます。
ラッパの曲線は、下に向かってゆるやかにひらいていくラインが美しい。そのカーブに沿って光が伸びていく様子を思うと、日が沈むのが楽しみになります。

 


まだ外は明るいけれど、試しにスイッチを入れてみました。

その瞬間、白磁の中を光がすっと通り抜け、シェード全体にじんわりと橙がにじみます。ここまで光を透かすとは思っておらず、思わず息をのみました。
やわらかく、あたたかい。
そんなシンプルな言葉が、この光にはいちばん似合う気がします。

このシェードには、数ある磁器土の中でも特に透光性の高い「new born」という磁土が使われているそうです。土を通して生まれる光は、どこか人の手のぬくもりを帯びていて、空間をやさしく包み込んでくれます。

光に浮かび上がる幾重もの線は、ロクロの指のあとだそうです。
そう聞いてから改めて見つめると、そのひと筋ひと筋に土と向き合った時間が刻まれているように感じます。人の手のわずかな動きや息づかいが、“光の模様”として静かにそこに残っているのですね。

 


夕方が過ぎ、夜が近づくころ。

橙の色が少しずつ深まり、ダイニングテーブルの上にしっかりと光が下りてきます。白磁を透けて浮かび上がる線も、じんわりと濃度を増してきました。

食事をするときも、読書をするときも、必要な明るさを保ちながら決してまぶしくない。この“ちょうどよさ”が心地よく、張りつめていた一日の緊張が少しずつほどけていきます。

そういえば、取り付けるときに少し汚れがついてしまったのですが、布で軽く拭くと、すぐに元の白に戻りました。あとで、「ずっと白いまま使ってほしい」という思いで、表面にごく薄く透明釉がかけられていると知り、なるほどと思いました。毎日使う場所だからこそ、手入れのしやすさはありがたいもの。

食卓でも安心して使える灯りです。

 

 

しずく - 光をそっと閉じ込める

しずくの形をした「time」は、リビングに。
まるで一滴の水がこぼれ落ちる瞬間をとらえたような、やわらかな曲線に一目惚れしました。
どこか自然のリズムを感じさせるそのフォルムは、灯していないときもまるでオブジェのような佇まいです。
少し余裕がない時も、ふと目をやるだけで呼吸がゆるむ。
そんなふうに、暮らしの中に小さな余白をつくってくれる存在になってくれそうです。

 


曇り気味の昼下がり、スイッチを入れるとランプの内側に光が満ちて、橙のグラデーションがしっかりと浮かび上がってきます。

その姿は、まるで線香花火の最後の一滴のようで、燃え尽きる直前の静けさと、そこに宿るぬくもりを思い出させてくれます。

ラッパが光をひらき、空間全体を包み込む灯りだとすれば、しずくは光を抱き、その深さを見せてくれる灯り。
光を閉じ込める分だけ、ロクロの線がいっそうくっきりと浮かび上がり、その陰影が灯りそのものの表情をつくり出しています。

しずくの橙を眺めていると、時間がゆるやかにほどけていき、心までもまあるく整っていくのを感じます。

 

 

時とともに変わる灯り

朝から夜まで、時間の移ろいとともにさまざまな表情を見せてくれる「time」。
白から橙へ、そしてまた白へ。
そのあいだに見える橙の濃淡が、時計の針とは違う“時間”を感じさせてくれます。

ラッパの灯りが日々の動きを照らし、しずくの灯りがその余韻を包み込む。
ふたつの「time」は、それぞれの光で暮らしの中に静かなリズムをつくり出しています。

忙しい日々の中でも、ふと目を上げるたびに、光の表情がほんの少し違って見える。それだけで、心がすっと整っていくのだから不思議です。

みなさんの毎日にも、「time」のようなやわらかな光がともりますように。