時を越えて届くもの。牛丸さんのアトリエを訪ねて
定期的に訪ねたくなる場所 引っ越しを機に、新しい家具を探していた頃。ご縁があって出会ったのが「Wormhole Furniture」の牛丸さんでした。 新生活を始めるにあたり、部屋の雰囲気を決める大切な家具選びで、本当にお世話になった存在です。以前コラムでもご紹介しましたが、引っ越しが一段落した今でも、定期的に牛丸さんのアトリエへ足を運んでいます。 扉を開けるたびに広がる、木の香りと静かな空気。 そこには、長い年月を旅してきた家具たちが、誇らしげでありながらも、どこか慎ましく佇んでいます。木の質感や鉄の重み、使い込まれた表情。それぞれが確かな時間をまといながら、静かに並んでいるのです。 同じ場所なのに、訪れるたびに景色が違う。「今日はどんな出会いがあるだろう」と、自然と足取りが軽くなる。アトリエへ向かう時間は、私にとって小さな宝探しのようなひとときでもあります。 日常を彩る、小さなヴィンテージたち 最初は、ダイニングテーブルや椅子、棚など、大きな家具を揃えることから始まりました。牛丸さんに教えていただきながら、少しずつ家の土台が整い、今では愛着のわく家具に囲まれて暮らしています。 暮らしが落ち着いてくると、次に目が向くのはその“余白”でした。最近の楽しみは、棚にそっと飾る小さなオブジェや、食卓に静かな深みを添えてくれるヴィンテージのうつわを探すこと。 新しいものにはない、長い年月だけが醸し出せる独特の佇まい。そんな「時間を纏ったもの」がそこにあるだけで、見慣れたはずの部屋の景色まで、どこか奥行きを増して魅力的に見えてくるのです。ふとした場所に置くだけで空間に奥行きを与えてくれる、その静かな力に心惹かれています。 牛丸さんの審美眼で選ばれたアイテムは、どれも個性的でありながら、今の暮らしにすっと馴染むものばかり。決して主張しすぎないのに、空間の温度をほんの少しだけ変えてくれる。眺めていると、それらが歩んできた背景を、つい想像してしまいます。 選ぶ人のまなざし 牛丸さんのアトリエには、さまざまな国から集められたヴィンテージ品が並んでいます。日本の和家具、フランスやデンマークの椅子や照明。あたたかな木製家具から、無骨なインダストリアルのアイアンアイテムまで、その幅は想像以上に広いものです。 不思議なことに、どれもが同じ空間の中で自然に呼吸している。時代も国も異なるはずなのに、どこか静かな調和があります。 わが家の家具も、日本、フランス、デンマークと、いくつもの国のヴィンテージを組み合わせています。特別なルールを決めたわけではなく、ただ「好き」という気持ちに素直に選んでいくと、自然と今の景色になりました。 とはいえ、選ぶときにはいつも少し不安になります。「これとこれは、組み合わせてもおかしくないですか?」そう尋ねる私に、牛丸さんは丁寧に理由を添えて答えてくれます。木の色味、脚のライン、空間の抜け方。感覚だけでなく、そこには長年ヴィンテージを扱ってきたからこその、揺るぎない視点があるのです。 何より、お話ししていると伝わってくるのは、牛丸さん自身の、家具に対する深い愛情。「好き」という根底にある情熱が、国や時代の壁を軽々と飛び越え、調和という一つの形を作り上げているのかもしれません。 フランスの風と、暮らしの背筋 先日、友人とランチに訪れたご飯屋さんで、ふと目に留まったうつわがありました。 少し厚みのある白磁。縁のやわらかな曲線。使い込まれたことで生まれた、控えめな艶。 派手ではないのに、どこか凛とした佇まいがあります。聞けば、それはフランスのヴィンテージ食器とのことでした。 料理そのものはいつもと変わらないはずなのに、そのうつわに盛られているだけで、食事の時間が少しだけ特別に感じられたのです。 日本各地で制作されている作家さんのうつわも、もちろん大好きです。土の温もりや、作り手の息遣いを感じるうつわは、日々の食卓にやさしい温度を添えてくれます。 けれど、生活の中にヴィンテージのアイテムを取り入れると、不思議と背筋がすっと伸びるような感覚があります。時を重ねてきたものが、いまの暮らしに加わることで、いつもの景色がほんの少しだけ深くなる。 それは決して背伸びではなく、時間とともにある豊かさを、そっと手元に迎えるということなのかもしれません。 ...


ひらく光と抱く光
しずく ― 光をそっと閉じ込める
ラッパ ― 光をやわらかくひらく
まだ外が明るい時間にスイッチを入れてみると、
夕方が過ぎると、橙の色が深まり、光の濃淡がより際立ちます。
時とともに変わる灯り





