愛用のミルと、中華ランチ

愛用のミルと、中華ランチ


ある休日の昼支度

休日の午前中は、時間の進み方がいつもより少しだけ緩やかです。
洗濯を回して、読みかけの本をめくっていたら、いつの間にかお昼どき。
お腹の時計は正直なもので、そろそろ何か美味しいものを求めて主張し始めます。

そのとき頭をよぎったのは、先日訪れたお店で出会った、あの麻婆豆腐のこと。
テーブルの横に置かれた山椒と花椒をひと振りした瞬間、鼻を抜ける鮮烈な香りと痺れるような美味しさに、すっかり心を奪われてしまいました。

「あの味を、おうちでも再現してみたい」

そんな思いで手に入れた花椒の粒。
キッチンに立ち、その袋を開けたとき、ふと視界に入ったのが、コンロ脇の定位置にいる「木工ヤマニ」さんのペッパーミルでした。

以前ご紹介した、私の頼もしい相棒です。

胡椒好きの手が生んだ、香りの道具
ヒビノコト Vol.63
胡椒好きの手が生んだ、香りの道具

これまでは「ブラックペッパー専用」として活躍してくれていましたが、迎えた時に作り手の内山さんが仰っていた言葉を思い出しました。

 「ブラックペッパー以外にも、山椒やコリアンダーシードも挽けるんですよ。」

それなら、この花椒も挽けるのでは…。
今日はこのミルに活躍してもらい、中華ランチで決まりです

 

花椒を挽いてみる

まずは、花椒の挽き心地を確認してみます。
ちょうどブラックペッパーをすべて使いきっていたので、ミルの中は空っぽ。いいタイミングでした。 詰まりがないか確認してから、花椒を入れます。

「大きさは5mm以下、よく乾燥したもの」
注意書きを見返しながら、パラパラと流し込みます。 スパイスの形状や硬さによっては、引っかかったり、空回りしてしまうこともあるそうですが、 私が愛用しているこの花椒はどうでしょうか。 少し緊張しながら、まずはつまみねじを締め細挽きしてみます。

手応えはいつもの通り、拍子抜けするほど滑らかです。
愛用の花椒とは相性が良かったようで、引っかかることもなく、スルスルと挽けました。 つまみねじを反対側に回し、今度は粗挽きに。こちらも全く問題なさそうです。

 

あっという間に、中華な食卓

挽き心地もしっかり確認できたので、さっそく調理開始です。

今日はパートナーも手伝ってくれたので、準備はあっという間でした。
私が麻婆豆腐を作っている横で、彼がサラダを仕上げてくれます。

 

「春菊とブリのサラダ」は、彼が最近ハマっているレシピだそう。
長ネギを焼き目がつくまで炒めて、生の春菊とブリ、ポン酢とごま油で和えるだけなのだとか。

最後に 水餃子のスープを用意して完成です。
すべてのお皿がテーブルに並んだところで、いよいよ本日の主役、「木工ヤマニ」さんのミルの登場です。

 

仕上げは食卓で

まずは、熱々の麻婆豆腐へ。 ミルをかざし、頭部を回します。
挽きたての花椒がハラハラと雪のように舞い降ります。 ついつい楽しくて少し多めにかけてしまいましたが、これが大正解。
立ち上る香りに食欲をそそられ一口食べれば、豆板醤のコクの後に、鮮烈なシビレが追いかけてくる。 ただ辛いだけじゃない。お店で食べるような、立体的で奥深い味わいです。

ふと、横にあるサラダを見て閃きました。
「これにも合うかも」 

その予感は見事に的中です。
焼きネギの甘みと春菊のほろ苦さ、そしてポン酢とごま油のコク。それらが絡んだ脂ののったブリを、花椒の清涼感がキュッと引き締めてくれます。 シンプルなレシピとは思えないほど複雑な味わいにお箸がぐんぐん進みます。

一度ハマると止まらないのが、私の性分なのです。
視線は自然と、水餃子のスープへ。  優しい鶏ガラのスープにももちろん合いますよね。
結局、食卓のすべてが花椒の香りに包まれましたが、そんな自由な楽しみ方もおうちごはんならではです。

 

ずっと使い続けたい、私の愛用品

食事が終わり、満足感に包まれながらテーブルを片付けます。
今回初めて花椒を挽いてみましたが、変わらないスムーズな使い心地に、改めてこのミルの凄さを実感しました。
これはまさに、精巧な日本製の刃と内山さんご夫婦の丁寧な手仕事があってこそ。 使うたびに「いい道具だなあ」としみじみ思わせてくれます。

まだ「飴色」と呼ぶには早いけれど、これから使い込むほどに色が深まり、艶を増していく姿も楽しみのひとつ。 デザインも、機能も、育てる楽しみも。すべてを兼ね備えた私のお気に入りです。