気心知れた友と囲む、冬のごちそう

気心知れた友と囲む、冬のごちそう

 旧友と会う約束をした日のこと

ある日の午後、電話が鳴りました。
画面に映った名前を見た瞬間、胸が高鳴ります。学生時代の友人からでした。
出張で東京に来るとのことで、久しぶりに会う約束をすることに。

彼女と会うのは、いったい何年ぶりでしょう。
せっかくなら、わが家でゆっくり話したい。そう思い、家に招いておもてなしをすることにしました。
気づけば、もうすぐクリスマス。
ちょうどいい機会なので、テーブルもほんの少し季節感を出して、ちょっと早いクリスマスパーティーにしようと思います。

そうと決まったら、まずはテーブルコーディネートを考えるところから。
つい最近新調した白いリネンのテーブルクロスを広げると、部屋の空気がふわっと明るくなりました。棚からうつわを取り出し、テーブルの上で並べてみると、fogmaraisのうつわたちもいつもとは違う表情に見えて新鮮です。

「この組み合わせはどうだろう」「いや、こっちのほうが合うかも」
あれこれ相手の顔を思い浮かべながら考えている時間は、心がぽかぽかとして幸せな気持ちになれますね。
あとは、何を作ろうか。そこがいちばん悩ましいところです。

 

フライパンで作る魚介のパエリア

メインは魚介にしようと決めていました。
彼女は昔から、お肉よりも断然シーフード派。お魚はもちろん、エビや貝類が好きだったことをよく覚えています。

そこで、ずっと試してみたかったパエリアに挑戦することにしました。きっとたくさん食べるだろうと、思い切ってお米は2合。普段から愛用しているやまごの鉄フライパンで早速調理に取り掛かります。
専用の蓋は持っていなかったのですが、KING無水鍋20cmの蓋がまさかのシンデレラフィットで、その収まりの良さについひとりで笑ってしまいました。
火を入れていくと、魚介の香りがゆっくりと部屋に広がっていきます。

2人で2合はさすがに多かったものの、22cmの鉄フライパンでも問題なくきれいに炊き上がりました。次は1.5合くらいがちょうどよさそうです。

 

冬を感じるスズキのカルパッチョ

もう一皿は、お魚で軽やかにまとめたい。そうなると、やはりカルパッチョでしょうか。

そのとき、ふと鎌倉で見かけた金柑の木の記憶がよみがえりました。
冬の光を受けてつややかに輝いている実を眺めながら、「金柑のスライスをのせたカルパッチョを作ってみたい」と思いつつも、まだ試せずにいたのでした。

八百屋さんをのぞいてみると、ちょうど金柑が並びはじめたところで、まだ小ぶりながら張りのある実が並んでいます。迷わず手に取って、家に連れて帰りました。
家で切ってみると、やはり出始めだからかワタは少し多め。ですが、ひと切れ味見すると苦みはほとんどなく、甘みと香りがふわっと立ちます。ワタのやわらかな食感もよく、カルパッチョの良いアクセントになってくれそうで、嬉しくなりました。

合わせる魚は旬のスズキ。
身がきゅっと締まり、透き通るような白さが冬らしくて美しいです。

薄くスライスした金柑を重ね、オリーブオイルをたっぷりまわしかけ、粗挽きソルトをひとふり。仕上げに紫スプラウトを添えると、「冬を感じるカルパッチョ」の完成です。

盛りつけには、fogのホワイトプレートを選びました。
淡い白のうつわの上で、金柑のオレンジとスズキの透明感がより一層引き立ち、冬のテーブルに馴染む一皿になりました。

 

絶対に外せないマッシュルームとパクチーのサラダ 

これは、私がずっと好きで作り続けているマッシュルームとパクチーのサラダ。

スライスしたマッシュルームに、ざくざくと刻んだパクチーを合わせるだけのとてもシンプルな一品ですが、パクチー好きの私には最高の組み合わせで、ひたすら食べ続けられるほど。ドレッシングは、バルサミコ・醤油・オリーブオイル・にんにく・塩を混ぜたものを用意しました。仕上げに削ったチーズをかければ完成です。

 

少し多めに作ったドレッシングで、冷蔵庫に残っていた食べごろのアボカドも和えてみました。とろりと絡んだアボカドは、同じドレッシングとは思えない仕上がりに。

 

紫キャベツのマリネ

箸休めには、紫キャベツのマリネを選びました。
先日のランチで、ワンプレートの端にそっと添えられていたもので、その鮮やかな紫色と、あと口のさっぱりした味わいが心に残っていて、いつか家でも作ってみたいと思っていたのです。

味の記憶を頼りに、ホワイトビネガーに塩・こしょうを合わせてマリネ。少し時間を置いてなじませると、紫キャベツの色がいっそう明るく変わっていきました。
ひと口味見してみると、思わず「これだ」と声が漏れます。

 


オレンジやグリーン、イエローが集まるテーブルに、紫が加わると、ぐっと大人っぽい冬の食卓に近づきました。

 

久しぶりの時間をゆっくり味わう

ちょうど料理を並べ終えたころ、玄関のチャイムが鳴りました。
顔を合わせるのはずいぶん久しぶりですが、扉を開けた瞬間の彼女の笑顔は相変わらず学生時代の面影が残っています。

話したいことは山のようにありますが、まずはワイングラスを手に取って、軽く乾杯。
そこからは、お互いの近況から昔の思い出まで、会話がとぎれることはありません。
料理もとても喜んでもらえました。
パエリアを取り分けていると、「やっぱり私、魚介が一番好きなんだよね」と彼女が笑って話します。
「昔からそうだよね。だから今日はこれにしたんだよ」と返すと、一瞬目を丸くして驚き、それからふっと嬉しそうに笑ってくれ、私たちのあいだにやさしい空気が流れたように感じました。

話して、食べて、また話して。
そんな時間が心地よく続き、気づけば外はすっかり暗くなっていました。
言葉を選ばずなんでも話せる気心の知れた友人との時間は、やっぱりいいものですね。
大人になると、こんなふうに飾らず笑い合える時間が、じんわり心にしみます。

次に会えるのは、いつになるだろう。
またその日まで、お互いの場所で日々を積み重ねていけたらと思います。