春の気配とともに
先日、友人に誘われハーブガーデンを訪れました。
少しずつ春をまといはじめた空気のなか、やわらかな陽射しが降り注ぐ園内へ足を踏み入れて大きく深呼吸すると、都内では味わえない澄んだ香りが胸いっぱいに広がります。
天井の高いハウスの中には、緑の道がゆるやかに続いていました。
葉の揺れる音や土の匂い、ところどころに差し込む光を感じながら歩いていくと、奥に明るく開けたグロッサリーコーナーがあらわれます。
棚いっぱいに並ぶハーブやスパイス。
どこから見ようか迷ってしまうほどの充実ぶりです。
茶葉をひとつずつ確かめるたび、香りの向こうに過ごす時間が思い浮かびます。
ジャスミンの豊かな香り、レモングラスの清々しさ、和柑橘のほろ苦い余韻。
これからの日々に寄り添う場面を想像しながら、いくつかをお土産に選びました。
愛用のガラスポットの中で、色や香りがほどけていく様子を思い浮かべると、 思わず頬がゆるみます。
茶葉の色と対流が美しく見える、ガラスの魅力
ガラスのポットを使ういちばんの愉しみは、茶葉の表情をそのまま眺められること。
湯を注いだ瞬間、眠っていた葉がふわりと目を覚まし、ゆっくりとひらきながらやわらかな流れをつくっていきます。
透明なうつわのなかで光を受けながら巡るその動きは、小さな水の景色を見ているよう。
お茶の色はゆっくりと深まり、グラデーションを描いていきます。
ゆらりと揺れる茶葉を眺めていると、不思議と呼吸まで整っていくのです。
そして、ガラスという素材の潔さ。
香りが移らず、前の一杯の記憶を残さないからこそ、その日の茶葉の個性をまっすぐに受け止めてくれます。
飲む前の支度だったはずの時間が、淹れることから愉しませてくれる。
日ノ出ガラスポットは、そんな小さな豊かさを教えてくれる存在です。
今日のお茶はどれにしよう? 選ぶ楽しみ
朝、ポットを食卓に置くと、その日の気分に合う香りを探すように棚を眺めます。
茶葉を手に取るたび、湯気の向こうに過ごす時間が思い浮かび、まだ淹れていないのに気持ちが軽くなっていきます。
ジャスミンの花が入った茶葉を選んだ日は、ほんのり甘いエクレアを添えて、ゆっくりとした午後のティータイムを。
花の香りが湯気とともに立ちのぼり、なめらかなクリームの余韻と重なります。
窓からの光もやわらかくて、時間まで甘く感じられるようでした。
またある日は、きりっと爽やかなレモングラスを。
アップルパイを温めて、すっきりとした香りと合わせます。
りんごのやさしい酸味とハーブの清涼感が心地よく、気持ちまで整っていくような組み合わせ。
そして在宅の日の午後には、黒文字と和柑橘のノンカフェインティー。
静かにデスクへ向かいながら、ふと立ちのぼる香りに肩の力を抜いてもらいます。
お茶を選ぶことは、その日の自分を選ぶことなのかもしれません。
日常に寄り添う、日ノ出ガラスポットという存在
日ノ出ガラスポットは、ただお茶を淹れるための道具、というだけではない気がしています。
透明な佇まいは主張しすぎず、それでいて確かにそこに在り、朝の光も午後の影もそのまま受け止めながら暮らしの景色にすっと溶け込みます。
湯を注ぎ、茶葉がひらき、ゆっくりと巡る。
その動きを眺めていると、一杯のお茶の中に、その日の気分や空気がそのまま映り込んでいるように思えるのです。
忙しい日も、少し気持ちが揺れる日も、そのゆらぎを見つめているうちに、急いでいた心がほどけていく。気がつくと、いつもの自分の調子に戻っているように感じます。
香り、色、動き。
五感で味わう時間は、決して特別な日のためだけのものではなく、むしろ、何でもない一日をやさしく照らしてくれるもの。
今日もまた、棚の前で立ち止まりながら、「さて、どれにしよう」と小さく考える。
そんな時間ごと、このポットは受け止めてくれているのだと思います。

