ヒビノコト

「アメノイエの住人」雨野紡が日々の暮らしを綴る日記です。
家の中での過ごし方や産地での出会いをこちらでご紹介します。

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日ノ出ガラスポットが生まれる場所
ツナガリ 旅日記

日ノ出ガラスポットが生まれる場所

九十九里の風が届く工房へ   わが家の食卓で、いつもお茶の時間をあたたかく灯してくれる、日ノ出ガラスポット。暮らしにそっと寄り添い、慌ただしい日も、少し気持ちが揺らぐ日も、このまあるい透明な佇まいを眺めているだけで、不思議と心が凪いでいきます。 このポットは、一体どんな場所で、どのように生まれているのだろう。そんな好奇心に背中を押されて、私は千葉県東金市にある日ノ出化学製作所の工房を訪ねました。 少し前まで東京に工房を構えられていた瀧澤さん。千葉へ移転されてから、伺うのは今回が初めてです。約二年ぶりとなる再会でしたが、以前と変わらず温かく迎えてくださり、緊張していた気持ちがすっとほどけていきました。   一歩足を踏み入れた工房には、たくさんの道具が立ち並んでいます。 「あの美しいガラスポットは、ここから生まれているんだ」 そう思うと、胸の奥が温かくなります。   年季の入った道具と、炎の記憶  今ではほぼガラスポットのみを制作されている瀧澤さんですが、かつては本当にさまざまなものを手がけていたそうです。 理化学用の試験管。美容エステで使われるガラス管。キャラクターもの。さらには、結婚式の演出用ガラスまで。 実際に当時の作品を見せていただきながらお話を伺うと、その細かな手仕事はまるで飴細工のように繊細で、その美しさに思わず見入ってしまいました。 「昔はいろいろ作ってたんだよ」 そう話す横顔には、どこか懐かしさと、長年ものづくりに向き合ってきた誇りが滲んでいます。    熱く語るその背後にどっしりと佇んでいるのは、50年近く使い続けているという大きな電気炉。 もともとはガス炉だったものを、時代に合わせて電気炉へと変えながら、大切に使い続けてきたのだそうです。   瀧澤さんと長い年月を共にしてきたものは、それだけではありません。 作業台に無造作に並ぶ、焦げ跡のついたコテや煤(すす)で黒ずんだハサミやピンセット。 まるで職人の手の延長のような、それらの佇まいを眺めていると、効率や新しさだけでは測れない、ものづくりの時間がゆっくりと流れているようでした。   火とガラスが形になる瞬間 ひとしきりお話をしたあと、瀧澤さんがすっとガラス管を手に取り、バーナーに火を灯しました。 「ゴーッ」という力強い音が工房いっぱいに響き、先ほどまでの穏やかな空気が一変します。 真剣な眼差しでガラスと向き合う瀧澤さんの横顔に、こちらも自然と背筋が伸びるようでした。    酸素の量を巧みに操りながら、炎は細長く鋭く伸びたり、ふわっと大きく広がったりと、自在に表情を変えていきます。  絶えずガラス管を回し、炎の当て方や息の入れ方を細かく変えながら、硬かったガラスをなめらかに成形していく。その迷いのない手つきに、ただただ惹きつけられます。  はじめは何が生まれるのかわからなかったガラスは、みるみるうちにふっくらと膨らみ、どこか見覚えのある姿に。...

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時を越えて届くもの。牛丸さんのアトリエを訪ねて
旅日記

時を越えて届くもの。牛丸さんのアトリエを訪ねて

定期的に訪ねたくなる場所 引っ越しを機に、新しい家具を探していた頃。ご縁があって出会ったのが「Wormhole Furniture」の牛丸さんでした。 新生活を始めるにあたり、部屋の雰囲気を決める大切な家具選びで、本当にお世話になった存在です。以前コラムでもご紹介しましたが、引っ越しが一段落した今でも、定期的に牛丸さんのアトリエへ足を運んでいます。 扉を開けるたびに広がる、木の香りと静かな空気。 そこには、長い年月を旅してきた家具たちが、誇らしげでありながらも、どこか慎ましく佇んでいます。木の質感や鉄の重み、使い込まれた表情。それぞれが確かな時間をまといながら、静かに並んでいるのです。 同じ場所なのに、訪れるたびに景色が違う。「今日はどんな出会いがあるだろう」と、自然と足取りが軽くなる。アトリエへ向かう時間は、私にとって小さな宝探しのようなひとときでもあります。   日常を彩る、小さなヴィンテージたち 最初は、ダイニングテーブルや椅子、棚など、大きな家具を揃えることから始まりました。牛丸さんに教えていただきながら、少しずつ家の土台が整い、今では愛着のわく家具に囲まれて暮らしています。 暮らしが落ち着いてくると、次に目が向くのはその“余白”でした。最近の楽しみは、棚にそっと飾る小さなオブジェや、食卓に静かな深みを添えてくれるヴィンテージのうつわを探すこと。 新しいものにはない、長い年月だけが醸し出せる独特の佇まい。そんな「時間を纏ったもの」がそこにあるだけで、見慣れたはずの部屋の景色まで、どこか奥行きを増して魅力的に見えてくるのです。ふとした場所に置くだけで空間に奥行きを与えてくれる、その静かな力に心惹かれています。 牛丸さんの審美眼で選ばれたアイテムは、どれも個性的でありながら、今の暮らしにすっと馴染むものばかり。決して主張しすぎないのに、空間の温度をほんの少しだけ変えてくれる。眺めていると、それらが歩んできた背景を、つい想像してしまいます。   選ぶ人のまなざし 牛丸さんのアトリエには、さまざまな国から集められたヴィンテージ品が並んでいます。日本の和家具、フランスやデンマークの椅子や照明。あたたかな木製家具から、無骨なインダストリアルのアイアンアイテムまで、その幅は想像以上に広いものです。 不思議なことに、どれもが同じ空間の中で自然に呼吸している。時代も国も異なるはずなのに、どこか静かな調和があります。 わが家の家具も、日本、フランス、デンマークと、いくつもの国のヴィンテージを組み合わせています。特別なルールを決めたわけではなく、ただ「好き」という気持ちに素直に選んでいくと、自然と今の景色になりました。 とはいえ、選ぶときにはいつも少し不安になります。「これとこれは、組み合わせてもおかしくないですか?」そう尋ねる私に、牛丸さんは丁寧に理由を添えて答えてくれます。木の色味、脚のライン、空間の抜け方。感覚だけでなく、そこには長年ヴィンテージを扱ってきたからこその、揺るぎない視点があるのです。 何より、お話ししていると伝わってくるのは、牛丸さん自身の、家具に対する深い愛情。「好き」という根底にある情熱が、国や時代の壁を軽々と飛び越え、調和という一つの形を作り上げているのかもしれません。   フランスの風と、暮らしの背筋 先日、友人とランチに訪れたご飯屋さんで、ふと目に留まったうつわがありました。 少し厚みのある白磁。縁のやわらかな曲線。使い込まれたことで生まれた、控えめな艶。 派手ではないのに、どこか凛とした佇まいがあります。聞けば、それはフランスのヴィンテージ食器とのことでした。 料理そのものはいつもと変わらないはずなのに、そのうつわに盛られているだけで、食事の時間が少しだけ特別に感じられたのです。 日本各地で制作されている作家さんのうつわも、もちろん大好きです。土の温もりや、作り手の息遣いを感じるうつわは、日々の食卓にやさしい温度を添えてくれます。 けれど、生活の中にヴィンテージのアイテムを取り入れると、不思議と背筋がすっと伸びるような感覚があります。時を重ねてきたものが、いまの暮らしに加わることで、いつもの景色がほんの少しだけ深くなる。 それは決して背伸びではなく、時間とともにある豊かさを、そっと手元に迎えるということなのかもしれません。  ...

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土直漆器×アメノイエ「漆のお椀と重箱」
ナカマイリ 旅日記

土直漆器×アメノイエ「漆のお椀と重箱」

はじまりはひとつの光景から 福井県・鯖江の山あいに工房を構える土直漆器さん。ショールームには、お椀やお重をはじめ、数えきれないほどの漆器が所狭しと並んでいます。   ひとつとして同じ柄のない蒔絵のお椀がが連なり、漆の艶がほのかにきらめくその眺めは、今も鮮明に心に残っています。ただ美しいだけではなく、積み重ねられてきた歳月までも映し出すような深さがありました。 その圧巻の光景に触れたとき、土直さんの工芸の力に改めて心を打たれ、「この豊かさをたくさんの人に伝えたい」と強く思ったのです。 そうして、土直さんとともに漆器をつくらせていただくこととなりました。   ”変わらない形”がもつ強さと美しさ お椀には、布袋(ほてい)や羽反(はそり)など、昔から受け継がれてきた伝統の形があります。何百年ものあいだ姿を変えずに残ってきたその形には、先人たちが積み重ねてきた知恵が息づいているのだと思います。   そのなかで、特に惹かれたのが「羽反椀」でした。ふっくらとした丸みに、外側へわずかに広がる口元。持ったときの軽さ、手に沿うやわらかな曲線、そして口に運んだときの飲みやすさまでも想像できる佇まいです。   ふと視線を上げると、そのすぐそばに重箱が並んでいました。羽反椀のやわらかな曲線とは対照的に、まっすぐな線と面が端正な印象を醸し出し、無駄をそぎ落とすことで漆そのものの美しさを際立たせています。 こうした“普遍の美しさ”には、世代を問わず心を動かす力があると感じます。だからこそ、この伝統の形で、永く暮らしに寄り添えるうつわをつくりたいと思いました。   アメノイエの4つの漆器 今回、土直漆器さんに特別に制作いただいたのは4種類。  汁椀、雑煮椀、蓋付き椀、重箱。  お椀は、昔から親しまれてきた羽反りを、重箱は、漆の美しさが引き立つシンプルな形を選んでいます。塗りの表情には特にこだわり、新年の食卓にも日々の暮らしにもなじむよう、土直さんに何度も相談しながら仕立ててもらいました。   汁椀 毎朝の味噌汁に使いたい、汁椀。漆の軽やかな手触りと熱のやさしい伝わり方は、慌ただしい日の朝でも気持ちがやわらぐようです。日常の一杯こそ、いちばん丁寧に味わいたい。そんな思いにそっと寄り添ってくれるお椀です。 ナカマイリ / New 土直漆器×アメノイエ 汁椀 黒 くわしくはこちら →...

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菊地大護 「クリスマスからお正月へ、年末を彩るうつわ」
キセツ ナカマイリ 旅日記

菊地大護 「クリスマスからお正月へ、年末を彩るうつわ」

冬の気配とともに始まる、特別な時間 冬の澄んだ空気が少しずつ街を包みはじめ、好きな季節がやってきたことを感じる12月。街にはイルミネーションが輝き、クリスマスや年末のイベントの準備で、どこかそわそわと賑やかな気配が広がります。この季節ならではのワクワクとした空気に触れると、心が自然と弾みますね。 こうした冬の始まりに、アメノイエではガラス作家・菊地大護さんの作品をお迎えし、季節の移ろいを感じるひとときをご用意しました。クリスマスやお正月の準備で、うつわの出番がいつもにも増して多くなるこの季節。晴れの日の食卓に、美しい菊地さんのガラスをしつらえていただきたい。そんな思いを込めて今回制作をお願いしました。 きらめくガラスのうつわや酒器が、冬の光と静けさを映し込み、日々の食卓にそっと華やぎを添えてくれる時間を感じていただければ嬉しく思います。 稲刈りの季節に訪れた、新しいアトリエ 10月中旬に、完成したばかりの菊地さんのアトリエを訪れました。秋が深まりきる前、稲刈りが進む田園の中に佇むその空間は、澄み渡る空気に包まれ、どこか未来への静かな期待を感じさせる場所でした。 もともとお米の農家さんが使っていた蔵を、菊地さんがアトリエとして整えたという建物。広々とした空間に高い天井、秋のやわらかな風が抜け、室内に差し込む陽の光が作品の輪郭をやさしく照らしていました。 この日は嬉しいことに、制作風景も見せていただけることに。ガラスづくりは、吹く人と形を整える人のふたりで行うイメージがありましたが、菊地さんはおひとりで、驚くほど軽やかにこなしていきます。窯から出したばかりのガラスに向き合い、道具を使って形を定めていく姿は美しく、とても印象的でした。 ガラスがまだ熱を帯びているうちに光を透かして輝く瞬間や、金属の道具が触れたときの“カツッ”という澄んだ音、息づかいに合わせてゆらめく色のグラデーション。その光と音、そして手元の細かな動きに引き込まれ、気づけば呼吸まで自然と菊地さんのリズムに合わせるように見入っていました。 菊地さんのガラスといえば、上品でやわらかなピンク色が特徴です。この色は、ガラスを琥珀色に仕上げる“アンバー”という原料を使い、薄く吹き上げることでふわりとピンクに見えるのだとか。まさかアンバーからピンクが生まれるとは思いもよらず、ガラスの奥深さに驚かされました。 気さくでお話し上手な菊地さんは、私のリクエストにも快く応じてくださり、見たい作品を次々とその場で形にしてくださいます。 手仕事の丁寧さ 日々愛用している片口。その切れのよさは、注ぐときのストレスがなく、料理やお酒を楽しむ時間をより心地よいものにしてくれます。 仕上げの要となる口の部分は、道具を使って一気に形づくられ、その一瞬の研ぎ澄まされた集中に思わず見入ってしまいました。 口元を仕上げたあと、底につけられたガラスを外し、作品は窯の中でゆっくりと時間をかけて冷まされていきます。成形後のガラスを丁寧に冷やすことで、急激な温度変化による割れを防ぐのだそうです。 流れるように続く菊地さんの動きと、ひとつひとつの工程を確かめるように進める丁寧な手仕事。その調和の美しさに見入っていると、いつの間にか時間が経つのを忘れてしまいます。躍動感のある制作の光景に触れながら、終始心が弾むようなひとときを過ごしました。 どの作品をお迎えするか、アトリエのテーブルをお借りしてゆっくり見比べてみることにしました。どれも素敵で迷っていると、菊地さんが庭に咲く白い百合をさっと摘み、細いガラス瓶に生けてくださいました。白百合が添えられたことで、テーブルの上のガラスが陽の光を受けていっそう澄んだ輪郭を見せ、静かな輝きがふわりと広がります。 その透明な重なりを眺めながら、じっくりと作品を選ぶ時間を楽しみました。 そんな居心地のよいアトリエは、差し込む光ややわらかな秋風に包まれ、つい長居してしまうほどでした。菊地さん、素敵なアトリエを見学させていただき、ありがとうございました。 ガラスが映す、冬の光と季節のしつらえ クリスマスの温かい団欒から、年末のご馳走、新年の凛とした食卓まで、冬のさまざまな場面を彩るガラスの作品たち。 普段は涼やかな季節に使うことが多いガラスですが、抜け感のあるうつわは冬の光を受けることで表情を変え、軽やかで美しく、どこか洗練された雰囲気を運んでくれます。 年越しには酒器をしつらえて。お酒をいただく時間が、いつもより少し特別に感じられそうです。どの作品にも、菊地さんのガラスが持つやわらかな存在感と、手仕事のやさしさが宿っています。 アメノイエで、その透明な世界をぜひお楽しみください。皆さまのお越しを心よりお待ちしております。 オープンデイのご予約はこちら

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Lunef × アメノイエ -オリジナルフレグランス-
ナカマイリ 旅日記

Lunef × アメノイエ -オリジナルフレグランス-

香りづくりのはじまり 今日は、待ちに待った “自分だけのフレグランス” をつくる日。香りのブランド Lunef(リュネ)の調香師、安藤明日生(あすみ)さんが、わが家に来てくれました。友人の紹介でLunefと出逢い、その静かな世界観に惹かれて、はや半年。「いつか一緒に香りをつくりたい」という思いを明日生さんに伝えてみると、迷いなく応えてくださり、こうして今日を迎えることに。 白がよく似合う方で、この日も白いワンピースが柔らかな存在感を放っています。その凛とした佇まいに見惚れているやいなや、明日生さんは手際よく準備をはじめます。何種類もの白い布をつなぎ合わせた素敵なパッチワークのクロスをふわりと広げ、その上に小さな精油瓶をひとつ、またひとつと並べていく。さらに、細長い試香紙に精油を一滴ずつ落としていき、黒いプレートの上に円を描くように配置していく。その一連の流れは、SNSで見てきたあの光景そのままで、なんだか胸が高鳴りました。 やがて準備が整い、紙とペンが手渡されます。テーブルに並ぶのは、番号だけが記された白い紙。 「まずは、好きな香りと出会ってくださいね」と明日生さんが言います。 普段なら、精油の名前や効能に意識が向いてしまいがちですが、あえて情報を伏せることで、先入観ではなく純粋な好みと向き合ってほしいという明日生さんの意図が伝わり、私の意識も香りそのものへと向いていきました。   香りと向き合うひととき さて、21枚の芳香紙を順番に香っていきます。8番目あたりまで試していくと、気になるものがいくつも出てきて、少し迷ってしまいます。すると明日生さんが、「いくつ選んでも大丈夫ですよ」と声をかけてくれました。そのやわらかな笑顔に安心して、また次の香りへと手を伸ばします。 ただ香りだけに集中する時間が、黙々と過ぎていきます。鼻先に届く瞬間の印象、奥に残る静かな余韻。そのひとつひとつを確かめていると、全神経が嗅覚へ集まっていくようで、普段では味わえない感覚に包まれました。 すべて試し終えると、明日生さんがひと言。「紡さんは、ウッディなものがお好きなのですね。」 私が選んだ多くが、森を思わせる精油だったようです。自然が好きだからなのか、都会の暮らしの中で、知らないうちに森のような静けさを求めているからなのか。 ふっと内側を見透かされたようで、少し照れくさくなりました。   ついにかたちになるとき 選んだ精油を一滴ずつ重ね合わせていくと、単体では見えなかった陰影が浮かび上がってきます。 すっと通るような森の空気。土の渋み。奥に潜む甘さ。精油を重ねるごとに変化していく様子は、まるで目の前でひとつの物語がひらいていくようでとてもおもしろい。 けれど、「好き」を重ねただけでは、どこか惜しいのです。そんな私の中の小さな違和感を、明日生さんは言葉にしなくても察し、数滴の調整でさっと整えてしまいます。すると、すっかりその違和感は消え、複雑でありながらひとつにまとまった香りになりました。 こうして、ベースが完成です。ここからは鎌倉のアトリエで仕上げてもらうことになり、この日の作業はいったん終了。 あとは、完成の知らせを待つばかりです。   鎌倉を訪ねる 仕上がったと連絡をいただいたのは、それから数日後のことでした。 郵送で受け取ることもできましたが、明日生さんがどんな環境でアロマと向き合っているのかを自分の目で見てみたくなり、鎌倉へ向かうことにしました。 待ち合わせは、明日生さんのお気に入りのお散歩コースでもある、自然に包まれた場所。この日はよく晴れていて、まさに絶好のお散歩日和です。鎌倉駅周辺は観光客で賑わっていましたが、待ち合わせ場所へ向かう小道へ入ると景色がふっと変わります。ひと気のないその一角には、ひんやりと澄んだ空気が満ちていて、鳥たちがさえずりながら迎えてくれました。風が通ると、落ち葉がさらさらと降ってきます。見上げると、その量に思わず息をのみました。きっと、紅葉の時期ならではの光景なのでしょう。まるで“葉っぱの雨”のように降りそそぐその瞬間は、なんとも幻想的。そして、木漏れ日が差し込むたびに、景色はそっと表情を変えていきます。 その移ろいがあまりにも美しくて、気づけば夢中でシャッターを切っていました。  ...

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宮島のしゃもじを訪ねて
ナカマイリ 旅日記

宮島のしゃもじを訪ねて

木のしゃもじとの出会い 先日友人の家で見た木のしゃもじが、ずっと心に残っていました。使い込まれた木肌はほんのりと艶を帯び、手に取ると驚くほどすっと馴染む。軽くて扱いやすいプラスチックのものも増えてきたけれど、やっぱり私は木のぬくもりに触れていたいと思うのです。 どこのものか尋ねると、「宮島工芸製作所のしゃもじ」だと教えてくれました。広島出身の彼女は 「杓文字といえば広島でしょ」と得意げに話します。 広島では、しゃもじが昔から縁起物として親しまれています。「福をすくう」といわれる宮島杓子をつくり続ける宮島工芸製作所は、地元では誰もがよく知る工房で、丁寧な手仕事で長く使える道具をつくり続けています。 彼女のおばあちゃんもお母さんも、ずっと宮島工芸製作所のしゃもじを使ってきたのだとか。だから彼女にとって、この工房のしゃもじを選ぶのはごく自然なことなのです。そんな話を聞くと、使い心地のよさもきっと確かなものなのだろうと思いました。   宮島工芸製作所 ちょうど広島を訪れる予定があったので、「宮島工芸製作所」の工房を訪ねてみることにしました。島に渡る船が着くと、穏やかな海と心地よい潮風が迎えてくれます。 世界遺産・厳島神社の鳥居を望むその地に、工房はひっそりと佇んでいました。入り口には大きなしゃもじが飾られ、その姿からも長い歴史の深さを感じます。扉を開けると、木のやさしい香りがふわりと漂い、古い機械の音とともに、職人の手仕事が生み出すリズムが奥の作業場で途切れることなく続いていました。   工房に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、壁一面に並んだしゃもじやヘラたち。形も大きさも用途もさまざまで、ひとつとして同じものがありません。「闘志」「必勝」と記されたものや、記念品としてつくられたものも並び、この工房が歩んできた年月と、人々がそこに込めてきた思いが伝わってきました。 しゃもじは「メシを取る」ことから「召し取る」に通じ、戦の場では勝利祈願の道具としても扱われたといいます。その背景を知ると、壁に掛けられた一つひとつが、願いや祈りをすくってきた証のようにも見えてきました。   棚には数えきれないほどの木型が整然と並んでいます。「すしベラ」「お玉」「バターナイフ」。手書きされた文字は、油性ペンのインクが少しかすれていて、そこにもまた歴史を感じます。用途に合わせて工夫を重ねてきた職人たちの思考と経験が、ひとつひとつの型に息づいているのが伝わってきました。   使っている木は、広島県北部の山々に自生するヤマザクラ。 宮島の近くで育つ木だからこそ、良質な素材を安定して手に入れられるのだといいます。堅くて弾力があり、長く使っても歪みにくいのがこの木のよさで、使い込むほどに赤みと深みが増していきます。その変化はまるで、自分だけの道具へと育っていくようで、ますます魅力的に感じられました。   一本の木から生まれるかたち 静かな空間には、木地を切る音や削る音が心地よく響き、淡い木の粉がふわりと舞っています。 工房の片隅では、職人さんが一枚の板を机に置き、鉛筆でしゃもじやヘラを型取りはじめていました。木目を読みながら、どの部分が持ち手になり、どの部分がすくう面になるのか、迷いのない動きで描いていく姿は、まるで木と対話しているよう。一枚の板にパズルのようにびっしりと型が描かれていく様子は、“木を余すことなく使いきる”という、この工房の流儀そのものだと感じました。   描いた線に沿って板を切り進めると、木の中からしゃもじやヘラのかたちが現れてきます。切り抜かれた木地は、まだ角ばったまま。   そこから職人さんが型を当てて厚みを調整し、丸みを削り出していくと、だんだん私たちの見慣れた道具の姿へと近づいてきました。木地と向き合うその背中には、積み重ねてきた年月と、ものづくりへの情熱がにじんでいます。 削りの工程が終わると、木地は研磨の職人さんのもとへ渡ります。ここからは、道具としての表情を整えるために、ひたすら木地と向き合う時間のはじまりです。   研磨前の木地に触れると、木そのものの息づかいがまだ残っているような、少し荒々しい手触りがあります。まず、粗い番手の紙やすりで形を整え、次第に細かな番手へと移りながら、ざらりとした面を丁寧に落としていく。「ここまでやるのか」と思うほど、何度も、何度も。そうしてようやく、手のひらにすっと吸い付く、あのなめらかさが生まれてくるのです。  ...

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「使い方いろいろ」そば猪口で広がる食卓の彩り
チャノマ ナカマイリ 旅日記

「使い方いろいろ」そば猪口で広がる食卓の彩り

夏めき始めた五月後半。まだ本格的な夏というほどではないものの、少しずつ暑さを感じるようになると、さっぱりとしたものが無性に恋しくなってきます。 そんな折、冷たいざる蕎麦が無性に食べたくなりました。薬味をたっぷりのせて、冷たいつゆにくぐらせていただく一口は、体にも心にもじんわりと染み渡るようで、自然とその味わいが思い浮かびます。お蕎麦を想像をしていると、家に「これぞ」というそば猪口がないことに気づき、探してみることにしました。

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Sharpening four 癶(HATSU)戸谷 祐次
ナカマイリ 旅日記

はじまりを魅せる包丁

最近は日が少しずつ長くなり、柔らかな夕陽に心がほぐれますね。本日は、かねてよりお願いしておりました福井県越前市の伝統工芸士・戸谷祐次さんの三徳包丁とペティナイフ(巴刃)が届きました。 早速うっすらと夕方の光が残る台所に立ち、少し早めに夕食の準備を始めると、時間がゆっくりと流れているようで、ふと童心に戻るような気持ちになります。戸谷さんが大切にされているという、「現代の生活に馴染むミニマルで静かなたたずまい」「越前打刃物ならではの軽やかさ」「どんな料理にも寄り添う使いやすさ」。江口海里さんが担当されたデザインは素朴なつくりで手にしっくりと馴染み、どんな食材もスッと切れる心地よさには、基本の包丁として長く寄り添ってほしいという想いが感じられます。

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カネダイ陶器×アメノイエ
チャノマ ナカマイリ 旅日記

伊賀の魅力と家族の絆が投影された土鍋

バタバタとしているうちに、今年も残りわずか。今年一年を振り返り来年の目標を立てたり、部屋の大掃除やお正月の準備をしたりと、駆け抜けてきた日々の中で一度立ち止まり、自分自身や身の回りの環境にじっくり向き合う時期です。特に年末年始の食卓は、家族や友達、パートナーと今年の出来事を分かち合い、心おきなく素直になれる尊い空間。そんなこの季節に、大活躍してくれるのがお鍋です。

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山源陶苑×アメノイエ「marais」
ナカマイリ 旅日記

山源陶苑×アメノイエ「marais/マレ」

気が付けばもう12月。外は先月よりもさらに冷え込んできました。街中は眩いイルミネーションの光が灯り、世の中はどこもクリスマスムード一色。自然と心が弾みます。私も負けてはいられません。お部屋の中でもクリスマスらしく、有意義にしていきましょう。

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SAKUZAN×アメノイエ 「fog」
ナカマイリ 旅日記

SAKUZAN×アメノイエ 「fog」

アメノイエに引っ越す少し前のこと、私は岐阜県を訪れていました。岐阜県といえば、合掌造りで有名な白川郷は言わずと知れた世界遺産。最近登山にハマっている私には、奥穂高岳や槍ヶ岳といった日本の名峰が連なる北アルプスも魅力……

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