視線が留まる場所
部屋を見渡すと、机の上や棚の一角など、ふと目が留まる場所があります。
そこに置いているのは、石や木、土、ガラスなど、素材もかたちもさまざまな小物たち。
一目惚れして迎えたものもあれば、どんな土地で生まれ、どんな人の手でつくられてきたのか、その背景を知るうちに惹かれていったものもあります。
暮らしの道具として役立つのはもちろん、ただそこにあるだけで、目にするたびに楽しませてくれる。それも、インテリア小物の魅力です。
異なる素材や年代のものを組み合わせると、それぞれの個性が引き立ち、部屋の雰囲気も少しずつ変わっていきます。
今回は、そんなわが家のお気に入りについて綴りたいと思います。
庵治石の傘立て
玄関に置いているのは、香川県の庵治町・牟礼町で採れる庵治石を使った、AJI PROJECTの傘立てです。
上面に丸い穴が4つ彫られた、無駄のないシンプルな形。
滑らかに磨き上げられた表面には、細かな斑点や結晶が浮かび、天然石ならではの深みのある表情を見せてくれます。
出がけに傘を抜き取るときも、帰ってきて差し込むときも、一切揺らがないどっしりとした重量感。
傘がすっと立っている姿も凛としていて、出入りのたびにこの石の塊が視界に入るだけで、玄関の空気が心地よく引き締まります。
庵治石のブックエンド
同じ庵治石の道具が、リビングの本棚にもうひとつ。
よく手に取る文庫本を支えてくれているブックエンドです。
磨かれた傘立ての表面とは対照的に、こちらは山から切り出した岩肌をそのまま割ったような、ゴツゴツとした表情。同じ素材でも、仕上げによってまったく異なる風合いを見せてくれるのが面白いところです。
きれいに揃った背表紙の横に、石がごろんと鎮座している姿はどこかユーモラス。
こちらも重量感があるため、何冊も挟んでもぐらつくことなく、頼もしく支えてくれます。
直線的な本が並ぶ空間に、鉱物の荒々しい質感が加わることで、棚の景色に心地よい重力が生まれます。
トラバーチンのスタンドライト
同じ石でも、こちらは遠くフランスからやってきた古いもの。作業机の横にあるチェストの上に置いているスタンドライトです。
1960年代のフランスで作られたヴィンテージで、ベースには古代ローマの建築にも使われてきたトラバーチンという石材が使われています。
石特有のひんやりとした硬さがありながら、淡いベージュの色味や、表面にぽつぽつと空いた小さな穴、不規則な縞模様が、どこか柔らかな気配を漂わせています。
明かりを点けていない昼間も、部屋の隅で静かに佇んでいる姿がいい。
角張った家具や本が並ぶなかで、このやさしい石の丸みが空間に抜け感を生み出してくれます。
ガラスのお香立て
隣の棚に目を移すと、その片隅に置いているのが、LANさんのガラスのお香立てです。
石の重みから一転して、ふっと視線が抜けるような透明感。平らな丸いガラス皿の真ん中に、小さなガラス玉がちょこんと乗っています。
水たまりをそのまま掬い取ったような、柔らかなゆらぎのある形。
昼間の光をたっぷり受けると、内側に閉じ込められた細かな気泡が光を屈折させ、まるでガラスそのものが光を抱え込んでいるかのように、みずみずしく輝きます。
お香に焚く時間だけでなく、ただそこに置いてある姿もまた素敵で、張り詰めた空気を自然と緩めてくれる存在です。
あけびのカゴ
ソファの横にそっと置いているのは、青森県弘前市の宮本工芸がつくる、あけびのカゴです。
肌寒くなってきたこの時期は、わが家ではブランケットの定位置。使いたいときにさっと取り出せて、無造作に収めておくだけで、リビングの景色にすっと馴染んでくれます。
津軽の山野で採れるあけび蔓を手作業で編み上げたカゴは、蔓の太さや色合いにひとつとして同じものがなく、編み目が生み出す陰影がとても豊か。
自然の素材だからこそ、使い込むうちに手の油分や光を吸って、色艶が深まっていくのも楽しみのひとつです。
木彫りのラクダ
わが家の机の上には、一頭のラクダがいます。
年月を経て深い色合いを帯びた、木彫りのヴィンテージ。少しとぼけたような、けれどどこか誇らしげな立ち姿をしていて、来客があると必ずと言っていいほど目に留まるわが家の人気者です。
普段は、日本の産地や作り手の顔が見える道具に惹かれることが多いのですが、古いものとの出会いはまた別。どこで誰の手によって彫られ、どんな旅をしてここへ辿り着いたのか。長い時間を経てきた木肌にしか宿らない、静かな陰影に心が動かされます。
暮らしに必要な道具ばかりではなく、ただ「好き」だから迎えたものがあってもいい。そこにあるだけで、部屋の景色に心地よい余白をつくってくれています。
好きなものと暮らす
一見するとまとまりのある部屋も、よく見ればどれも個性的で、素材も形もばらばらです。それでもすんなりと馴染んでいるのは、自分の直感と軸を信じて選んだものばかりだから。
「好き」という素直な気持ちで迎えたものは、無理に揃えようとしなくても、自然と同じ空気感に調和してくれる。
これからもそんな出会いを大切にしながら、自分にとって心地よい部屋の景色をゆっくりと育てていきたいです。

