空間の印象をつくるもの
部屋の空気を少し変えたくなったとき、新しい花器を置いてみたり、お気に入りの作家さんのうつわを並べてみたり。つい「目に見えるもの」に手を伸ばしたくなります。
けれど、香りもまた、空間の印象を静かにかたちづくっているように思います。
例えば、朝一番に窓を開けて空気を入れ替えたあと、仕上げにシュッとひと吹きするフレグランス。
あるいは、仕事から戻ってきて、オンからオフへと気持ちを切り替えたいときに選ぶ香り。
それは、お気に入りの服を着るのと同じように、その時の自分の心に寄り添う「空気」を纏うような感覚です。家具や雑貨のように形があるわけではないけれど、香りは一番身近で、一番軽やかな「暮らしの道具」なのかもしれません。
暮らしの中で、自然と手に取る香り
そんな私の暮らしに、いつの間にか馴染んでいるのが「kibn」のフレグランススプレー。 気づけばもう2年ほど、ずっと使い続けています。
なくなるたびに別の香りも気になりながら、結局またお迎えしてしまう。
いつの間にか、私にとってあって当たり前な存在になっていました。
朝、空気を入れ替えたあとに手に取るのは、決まって「Dsus4」。
ヒノキやパロサントの静かな樹木の香りに、ライムやペパーミントの清涼感が重なります。 どこか凛とした、背筋が真っ直ぐに伸びるような心地よい香りで、 仕事の合間や静かに自分と向き合いたいときにも寄り添ってくれます。
少し気分を上向きに、華やかにしたいときは、「G♭maj9」を。
ベルガモットの爽やかな入り口から、ヒバやパチョリ、ベニバナなど、次第に複雑で奥行きのある香りが広がります。 落ち着きの中に、やわらかな高揚感を感じさせてくれるから、少しだけ背中を押してほしいときに。
その日の気分に問いかけながら、どちらにするか選ぶひとときも、ささやかな楽しみになっています。
物語を運んでくる香り
昨年の秋、Lunefの調香師の安藤さんにアメノイエのオリジナルの香りを作っていただき、それをきっかけに、Lunefの香りもいくつか手元に迎え、選ぶ楽しみが増えました。

雨に濡れた森の中、月の光が落とす影をイメージしたという「Lunef」。
ジャスミンやネロリが、ベチバーやセダーの深い樹木の中に静かに溶け込んでいて、夜の静寂によく合います。
「Jardin」は、光をたっぷり浴びた緑と、花々を束ねたブリキのバケツを思わせる、みずみずしい香り。
「wind」をひと吹きすれば、草原を吹き抜ける風のように、ラベンダーやジュニパーベリーが軽やかに駆け抜けていきます。
そして「amenoie」は、すべてを包み込んでくれるような静かな森の香り。
ベルガモットの爽やかな甘さから、大地や木肌の温もりを感じる深い香りへ。幾層にも重なるエッセンスはとても複雑なのに、不思議なほど一つの風景として調和していて、心がすうっと凪いでいくのを感じます。
こうしたLunefの物語性のある香りも、これからのわが家の定番になりそうです。
暮らしの中にある、ささやかな余白
香りは、目に見えるものではないけれど、空間の印象をそっと変えてくれる存在のように思います。
朝の光が入る時間や、ゆっくり過ごす夜。
いつもの景色の中に、ほんのりと好きな香りがあるだけで、からだの力が抜けて穏やかな気持ちになれるのだから不思議です。
新しい生活が始まる4月。
みなさんにとっても、心穏やかになれるお気に入りの香りが見つかりますように。

