南窯 アメノイエ

待ち遠しい春を前に、淡い色彩を

待ち遠しい春を前に、淡い色彩を

最近は身体が寒さにも慣れ、外に出ると冬晴れの空に心が躍り清々しい気持ちになりますね。

そんな晴れやかな明るい時間の食卓には、つい色鮮やかな器を選びがちです。
窓から差し込む木漏れ日があたたかく、どこか春を先取りしたくなる私がいるのかもしれません。

この今の気分にぴったりなのが、南窯で作陶されている「工藤工」さんの作品。
可愛らしく綺麗な濃淡は眺めているだけでも楽しく、、まるで生きて動いているような優しい輝きを放っています。
色のコントラストが食材の魅力を引き立てるだけでなく、自然が生み出す鮮やかな色味が心に元気を与えてくれます。

器に触れた瞬間に感じる朗らかさは、工さんの明るいエネルギーや精巧な技術がそのまま作品に宿っているからなのだと思います。

南窯

南窯は創業約60年。岐阜県土岐市東部の、緑豊かな山あいに位置する駄知町にあります。
織部、志野、粉引、赤絵、安南風呉須絵など、伝統的な加飾を施した器を、一つひとつ手作りで制作する工房です。

陶芸家の個人工房というよりも、わかりやすく言えば「手づくり陶器のメーカー」。
石膏型による量産的なろくろ成形ではなく、手挽きならではの形づくりを大切にしながら制作されています。

南窯の前身は、「小松陶苑」という赤絵付けの工房。
洋画家を目指しながら魚屋を営んでいた現在の作り手・工藤工さんの父、工藤陸雄さんが絵を描くかたわら始めたのがその始まりとのことです。
やがて赤絵付けだけにとどまらず、器の制作を始めるタイミングで南窯が生まれました。

その後、平成元年より工さんがこの世界に入り、しばらくして南窯設立当初に行っていた鋳込みや動力を用いた大量生産の形を廃止し、
すべてを手作りで仕上げる現在のスタイルへと移行していったそうです。

花を添えるようなうつわ

私が愛用しているシリーズは、工藤工さん個人の作品です。
南窯さんがこれまで手掛けてこなかった青い釉薬を生み出したことをきっかけに、そこからさらに色を増やし、釉薬の塗り重ね方を工夫することで誕生したといいます。

「一品一品が、それぞれ異なる表情を持つ作品でありたい」という想いのもと作られており、どの器も唯一無二の個性を持っています。
淡く優しいグラデーションの中にも力強く凛とした美しさがあり、選ぶ瞬間にはときめきを感じます。
その前向きで楽しい気持ちにさせてくれる作品は、まるで食卓に花を添えてくれるよう。
束の間の休憩や自分時間、朝食の時間に登場することが多い器たちです。

束の間に

この時期は、心にも身体にも染み渡る温かい飲み物が恋しくなります。
お気に入りの湯呑は形がとても美しく、たっぷり入るサイズ感。
持ち手が少し反っているため、手に持ったときの安定感も抜群です。
陶器ならではのしっとりとした質感が手に馴染み、取っ手のないデザインだからこそ包み込むように持つことができ、飲み物の温もりがダイレクトに伝わってきます。

また、5寸プレートは小さな焼き菓子やちょっとした副菜、取り皿としてもぴったり。
一人分のおかずを盛るのにも使いやすく、さまざまな用途で活躍してくれます。

バタバタと忙しい朝に

7寸プレートには、クロワッサンのサンドイッチを。
朝の時間に丁寧に作る和食もいいけれど、忙しい日にはさっと食べられて心まで満たしてくれるクロワッサンサンドが頼れる存在です。

その他の食材も、豪快に盛りつけたり少し余白を残してみたり、お皿にのせるだけで爽やかな色味とさらりとした柔らかな質感が、どんな朝にも寄り添い活力を与えてくれます。

目に映る景色を心地よく

工さんの作品は色味だけでなく形のバリエーションも豊富で、ついつい手が伸びてしまいます。
寒い日が続くからこそ、土の持つあたたかさに惹かれるのかもしれません。

器はその日の気分で選びたいもの。
たくさんの種類の中から選ぶからこそ、愛着もいっそう深まっていきます。

ぜひ、みなさんも工さんの器を通して心惹かれる出会いを楽しみながら、彩度を上げるように春の柔らかさを食卓から取り入れてみてはいかがでしょうか。