家具とともに、時間を育てる
初夏の風と窓辺の青葉 窓を開けると、少し湿り気を含んだやわらかな風が、部屋の奥までゆっくりと流れていきます。 わが家の窓の外も、ここ数日で春の色から一変しました。ついこの間まで淡いピンクを纏っていた枝垂桜は、いつの間にか鮮やかな青葉へ。隣で揺れるもみじが光を透かす様子を眺めていると、今年の連休は、どこか遠くへ出かけるよりも、この家で流れる時間をゆっくり味わいたい。そんな気持ちになりました。 あえて予定を詰め込まず、移ろいゆく景色を楽しみながら、お気に入りの椅子に座ってコーヒーを淹れる。そんな穏やかな数日間をともに過ごしながら、あらためてその魅力を感じた家具たちのことを、少しだけ綴ってみようと思います。 私の暮らしにちょうどいい一脚 リビングの窓際で静かに私を待っていてくれるのは、スウェーデンのDUX(デュクス)社で作られた、ブルーノ・マットソンのイージーチェア。 この椅子のいちばんの魅力は、腰を下ろした瞬間にふっと身体が軽くなるような、独特の「しなり」です。身体のラインに沿うやわらかなカーブが、日中の緊張感を優しく解きほぐしてくれます。 わが家へ迎えるにあたって、今の部屋の空気に馴染むよう、布地を落ち着いたグレーへ張り替えてもらいました。ふっくらとしたボタン留めのクッション、そして指先でなぞると吸い付くような、なめらかな曲線を描く木のアーム。 どこをとっても美しく、この椅子を迎えて本当によかったと、座るたびに実感しています。 朝、コーヒーを飲みながらぼんやり外を眺めたり。夕方、西日が差し込むなかで本を読んだり。夜、間接照明だけをつけてゆっくり過ごしたり。 気づけば、一日のなかで何度もこの椅子へと戻ってきています。 座り心地にはしっかりとした安心感があるのに、見た目ほど重たくなくて、私でも気軽に動かせるところも気に入っています。 少し肌寒い日は日向へ向けたり、パートナーとゆったり話す時には内側へ角度を変えてみたり。その時々の気ままな過ごし方に、この椅子はいつも、やわらかく寄り添ってくれています。 暮らしに添える小さなスツール ソファの傍らには、スツールを。 特に気に入っているふたつをその時の気分に合わせて置き分けています。 ひとつは、フランスで作られた三本脚のスツール。 厚みのある天板は、どこか有機的な四角さをしています。 他ではあまり見かけない、少し不思議なバランスのかたち。初めて見た瞬間、その佇まいに惹かれて、一目惚れした小家具のひとつです。天板を覗き込むと見える、脚を固定する「クサビ」の跡は、なんだか可愛らしい。その無骨さと、丸みのあるフォルムのバランスが心地よく、眺めているだけで心が和みます。淹れたてのコーヒーと読みかけの本を預けておくのに、ちょうどいいスペースです。 もうひとつは、おそらくトーネット社製と思われるシンプルな一脚。 ブランドタグは欠損していますが、独特な曲木の脚が見せる凛とした表情は、きっとそうに違いないと思わせる魅力があります。曲木を用いた脚が描く、しなやかさと緊張感を秘めたカーブ。そこへそっと指を滑らせるたび、木という素材が持つ力強さとやわらかさが伝わってくるようです。 サイドテーブルとしてだけでなく、玄関で靴を履く際の腰掛けや荷物置きとして使ったり、来客時にはダイニングテーブルに運んで椅子として使ったり、植物を置いたり。蜜蝋ワックスを施してもらったことでしっとりとした重厚感が増し、どこに置いても自然と空間に馴染んでくれます。 黒がつくる静かな景色 リビングの空気を静かに引き締めてくれているのが、黒い水屋箪笥。もともとは木本来の色だったものを、この家に迎えるときに黒く塗り替えていただきました。 ゆらゆらと揺れる古いガラスが美しく、光が差し込むたび、中に並ぶお気に入りのうつわや本たちが、水面越しに見ているようにやわらかく揺らめくのです。 ソファの正面がこの子の定位置。くつろぎの時間にふと目を向けると、そこには私だけの「宝箱」が静かに佇んでいます。...


「冨本大輔×ヤマセ製陶所」すり鉢





